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ジャバウォック

少々長めの内容です。


「座敷童子!」


 レオナルドは「もしかして」と僕に話す。


「レシピ見つけた時、視線感じたアレか?! いや『ソウルサーチ』で確認したよな……」


 彼は納得いかなく、首を傾げた。

 僕は、更新された『図鑑』――妖怪図鑑から先ほど目撃した『座敷童子』の詳細情報を開く。

 僕も予想外だったのは、道中に出現する無名妖怪ではなく。

 ()()()()()()()()()()()()に概要が載せられていた。


「これは……」


 僕はレオナルドにも情報共有する為、彼を呼び寄せる。

 件の『座敷童子』の名は『ジャバウォック』。『マザーグース』に関係する妖怪。

 詳細情報に目を通し僕は少々納得したが、レオナルドは驚愕よりも恐怖を前面に反応する。


「コイツ、()()()()()()()()()?」


「成程ね。君が『ソウルサーチ』で捕捉できなかったのは、この『体を変化させる』能力で極小まで縮んでいたからじゃないかな」


「いやいやいや、そこじゃねーよ!? コイツ、()()()()()()()()()()()()()()()とか書いてんぞ!?」


「? 他の妖怪も物騒な設定ばかりだよ。気にするほどでもないさ」


「ほんとかぁ?」


「そんな事より、問題は『座敷童子』の効力だ。生産職にとっては深手だよ」


「え? 良いことは起きないのか?? 普通そういう奴じゃん、座敷童子って」


「まあ……良い事も起きるけどね」


 僕は攻略サイトも開いて、現在判明している『座敷童子』の効力を確認。

 レオナルドにも説明した。


「座敷童子が住み着くと作製系の成功率が上がる。僕の場合だと薬品の製造量と庭の薬草収穫量が増えて、店のランクも上昇し易くなる」


「おお」


「だけど、座敷童子はいつ立ち去ってしまうか分からない。しかも、立ち去ってしまったら一週間、デメリットが付与される。作製が失敗し易くなるし、成功しても劣化品になってしまう。製造量も減る」


「一週間!? ……っつっても、すぐ居なくならねーだろ?」


「攻略サイトで収集されたデータによると、最短で一日。最長記録は三日」


「嘘だろ……」


 でも、この『ジャバウォック』という個別の座敷童子に関しては全く情報が無い。

 低確率で出現する、特殊な座敷童子なのか。

 未知な以上、僕らに出来る対処は限られている。


「薬品を作り貯めよう。難しい合成薬品も、今なら大量生産できるからね」


「マジですまねえ、ルイス。新薬も作れなくなっちまうよな」


「こればっかりは仕方ないよ」


 折角、発見した新薬開発に出遅れるのは、運の悪さと受け止めよう。

 地下の整理整頓を手短に終えて、僕たちは店内に戻った。

 落ち着いたところで、テーブルに置かれたキッシュを放置したままだったのを思い出す。

 が、レオナルドは大声で「あっ!?」と叫ぶ。


「ルイス! 食われてんぞ!?」


 キッシュの一部に、如何にもな食べ痕が残されている。

 僕はキッシュのアイテム詳細情報を表示。

 ご丁寧に『誰かに食べられたようだ……』とメッセージが加えられていた。

 ……間違いない。僕は考えをそのまま、レオナルドに伝える。


「アレは特殊な座敷童子だろうね。それなりのAIが搭載されているよ」


「AI? どうして」


「何故、わざわざアレが地下で物音を立てたと思う? レオナルド。僕達を地下に誘導して、その隙にキッシュをつまみ食いする為じゃないかな」


「…………」


 レオナルドも同意の沈黙をする。

 一方で、面倒な悪戯は勘弁して欲しいが、キッシュをつまみ食いするように。

 座敷童子――ジャバウォックを満足させれば、居座らせる事も期待できる。過信してはいけないが。

 そうとなれば準備を始めよう。





「すみません、こんな時間に」


 僕が夜遅くだが、駆け込みで尋ねたのはミナトの店だった。

 ミナトはレオナルドの逆刃鎌を見て無反応だったように、そつなく対応してくれた。

 再び依頼が殺到しているらしく、色染め途中の布が店裏でいくつも乾されている。


 理由は、店内に飾られているポスター。

 今日、次回のイベント予告が発表されたばかりだが、行動が早い。

 趣旨に合わせた衣装で参加したいプレイヤーが多いのだろう。


 イベントタイトルは『不思議の春の神隠し』。

 プレイヤーは春エリアの調査を行っていた最中に、神隠しに遭い。

 そこから脱出する為に、他プレイヤーと共に協力し合う長期ダンジョン。

 イベントダンジョン限定装備や家具が公開されてあり。

 タイトルでも分かるように『不思議の国のアリス』をモチーフにしたものばかりだった。


 時期が時期なので、ミナトも僕にこう尋ねる。


「イベント衣装のご予約でしょうか」


「あ、いいえ。イベントには参加する予定ですけど、今日は仮面とフードが欲しくて。適当なものでいいんです」


「……それでしたら。こちらの、イベント限定での量産品なら用意できます」


 ミナトが紹介してくれたのは、白薔薇をあしらった赤のフードコートと赤薔薇をあしらった白仮面。

 他にも『アリス』をモチーフにした装飾品と衣装が展示されている。

 だが、この中では一番良い。折角だからズボンとシャツから靴もセットで購入した。

 後で武器も色合いに似合う鞄を装備しよう。


 これで早朝のマルチエリアに潜れる。僕はそれに一安心する。

 会計を済ます最中、ミナトが何気ない会話を持ち掛けた。


「今度のイベントは、レオナルド様とご一緒に?」


「はい。あと、この装備でマルチエリアにも行く予定です」


「マルチエリアですか……レオナルド様とご一緒なら大丈夫でしょうが。お気を付けて下さい」


 どういう訳か、ミナトがレオナルドに信頼している点が不自然に感じる。

 僕も自然と聞き返す。


「何故、レオナルドとなら問題ないと?」


 すると、ミナトが平静に断言した。


「彼には『戦闘の才』がありますから。ルイス様がご心配される必要はないかと」


 ……なんだって?


皆様、感想・誤字報告・評価・ブクマありがとうございます。

今日は投稿が遅くなり申し訳ありませんでした。

それと次回の投稿は明後日になります。よろしくお願いします。

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