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未解決


 その後。

 レオナルド達は、順序良く素材を回収。『菜の花高原』最深部のボス『土蜘蛛』に挑む。

 最深部のボスに関しては、一種のレイドバトル形式になっており。

 他プレイヤーと協力し倒す事で、帰還用のスポーンクリスタルを出現させられる。


 人も少ないこの時間帯。

 レオナルド達以外の他プレイヤーはいなかったが、弱体化したボスなので、戦闘に不慣れなサクラ達でも相手出来る程度。


 無事『土蜘蛛』を討伐し「お疲れ様です」とレオナルドに声かける、おかっぱの少女。

 彼女は、サクラが話題にしていた魂食いのプレイヤー・凪だった。

 眼鏡の鍛冶師の女性・ミカンは、VITを高めていないのか、戦闘終了後、直に息切れを起こす。


「はぁ、ひ、久しぶりに動いた~……」


 サクラが「ずっと引き籠っているからよー!」と余裕綽々な様子。

 彼女はレオナルドがあげた『サクラのフロート』の効力もあって十分に戦えたのだろう。

 クエスト終了まで肉体が疲労を感じなかったのは凄いと、レオナルドも驚く。


 新薬開発の情報を広めれば、悪目立ちを警戒するルイスも気楽になるのではないか。

 レオナルドは彼女達に尋ねる。


「ギルドとか知り合いに薬剤師っているか?」


 凪は申し訳なく「いえ」と首を横に振った。


「さっき教えて下さった『新薬』の事ですよね」


「ああ……出来れば広めて欲しいんだけど。無理そうか?」


 レオナルドのお願いに、ミカンが疑問を抱く。


「広めちゃっていいの? こういうのって先取りしたもん勝ちだよ??」


「俺のフレンドは神経質で目立つのが嫌いだからさ。皆に広まれば、余計な心配する必要なくなるだろ?」


「中々謎いね、アンタのフレンド」


 唸るミカンの傍らで、サクラも便乗してねだってくる。


「ねーねー! 薬剤師、ギルドに入れよーよ!! 毎日お菓子食べたーい!」


 以前は『役に立たないジョブ』と馬鹿にしていたのを掌返すサクラ。

 お菓子狙いが丸出しの彼女に呆れるミカン。

 凪の方は真剣に考え、自分なりの意見を述べた。


「バトルロイヤルの影響で薬剤師の人が増えた今が、確保するタイミングではないでしょうか」


「う~~~ん……ホノちんに連絡してみるけど、返事くるかねぇ」


 返事、と聞いてレオナルドは気づく。

 ログインしているなら、ミカンは「後で聞こう」と答える場面なのだ。

 不安に感じ、念の為にレオナルドが問いかける。


「ホノカの奴、ログインしてないのか?」


 サクラが真っ先に彼の疑問に反応して、噛みつくように教えてきた。


「ホノカちゃんは修行中(しゅぎょーちゅー)なの! カサブランカを倒す為に強くなってる最中!!」


「修行? だったら逆にログインするんじゃねえのか??」


現実(リアル)で修行中! そんくらい分かりなさいよ!!」


 フン!と怒りを表情に出すサクラ。

 強くなろうと修行するのは悪い事じゃない。

 素直に、努力したくなる事があるのかとレオナルドはホノカを羨ましく思っていた。

 だが、ミカンと凪の表情は重い。


「ギルドマスターが一か月ログインしなければギルド解散になってしまうんですが……」


「流石にそれまでにはログインするっしょ」


 スポーンクリスタルが消滅するカウントダウンが表示され、慌ててレオナルドは彼女らに別れを告げた。


「今日はありがとうな! またどっかで」


 凪が「こちらこそ」と頭を下げ、サクラは「じゃーね!」と手を振って、ミカンも無言ながらレオナルドを見送ってくれた。

 スポーンクリスタルで転移しながら、レオナルドは思う。


(やっぱり、俺の立場だと追求しにくいっていうか……なんだかなぁ)


 レオナルドが思う『新薬』問題は解決しそうだが、肝心のサクラに加え、ホノカの不穏要素は残ったまま。

 しかし、無関係な自分がしてやれる事は、あるだろうかとレオナルドは悩み続けた。





 無事、帰還を果たしたレオナルドは木の逆刃鎌を作って貰う為、緊急で茜に依頼をした。

 珍しい時間帯に彼がログインしていたので、彼女も意外な反応をする。

 それでも、前回と同じ素材とスキルで逆刃鎌を作製し、色はレオナルドの衣装に合わせ、少し明るめの青で塗装してくれた。


「ふーん、マルチで素材集めねえ」


「ルイスがこの時間なら人が少ないだろうって」


 茜は青く塗装した逆刃鎌に、白で模様描きながら唸る。


「確かに、今の時間は人少ないけど……PKに会わなかったかい?」


「え、あ……まあ、それもあって壊れちまったんです」


 面目ない気持ちで返事するレオナルド。

 しかし、茜は特別驚いた様子なく「ああ、そう」と当たり前のような態度だった。

 料金を払いながら、不思議に思ったレオナルドは尋ねる。


「PKってこの時間帯が多いんですか?」


「まぁね。不登校のガキンチョとか引き籠りが、憂さ晴らしにPKしてくんの」


「あー……」


 サクラもそうだが、レオナルドにPKを仕掛けた騎射の少年も、茜が挙げる一例のどちらかに当てはまりそうな気がした。

 茜は複雑な顔つきで助言をくれる。


「あたしは午前三時・四時くらいに行くけど。年取ると早起きになっちまうんだよねぇ」


「はやっ!?」


「あたしの感覚だと一番人少ない時間帯」


「うーん、成程……」


 一つ気になった点も、茜に質問してみるレオナルド。


「ちなみに仮面ってつけた方がいいですか?」


「身バレが嫌ならした方がいいけど……PK上等って構えだから、気を付けな」


 PKは嫌だが、逆刃鎌の事を考えるとやはりしておいた方が良さそうだと、レオナルドは判断した。


皆様、感想・誤字報告・評価・ブクマありがとうございます。

明日も投稿するので、よろしくお願いします。

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