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開戦


 仕方ないと言えば仕方ないが、威勢よく開戦するなり映像自体が無意味と化すほどの、広範囲攻撃の嵐が巻き起こった。

 魔法使い系は広範囲攻撃の種類が豊富だ。

 魔法使いから昇格するジョブ2『魔導士』は既存の魔法を複数組み合わせた新魔法の構築まで可能とする上位の存在。

 最大五種類まで、魔法の配合が許される。

 映像に映るそれも恐らく、五種類の魔法を組み合わせた必殺の応酬で、華々しく繰り広げられている。


 黒煙・白煙が入り乱れる中、煙中より飛び出した馬に騎乗する『騎射』のプレイヤーが上空へ矢を射る。

 広範囲攻撃『五月雨』だ。

 映像からは煙等、視覚の妨げとなる状況により姿を確認できないが『騎射』のスキル、『時雨』『夕立』『天津風』などのエフェクトが上空から確認できる。


 啞然とする観客を代弁するかのようにキャサリンが叫ぶ。


「うわ~~~~!? 開始早々、何がなんだか分かりません! 広範囲攻撃の猛襲です! 近距離型プレイヤーは無事なんでしょうかっ!!?」


 上空には箒で悠々と移動する魔導士たちと、忍具で浮遊する『忍者』(盗賊の昇格後)たち。

 『守護騎士』(盾兵の昇格後)たちは、スキルで防御しきったようだ。

 一人だけの魂食い・紅殻も『ソウルターゲット』で回避したらしく、煙から飛び出す。


 だが、広範囲攻撃はまだ続く。

 今度は魔法や矢以外にも、忍者の『多重手裏剣』が上空より降り注ぎ。

 銃使いの昇格後『狙撃手(スパイナー)』の砲弾らしき攻撃エフェクトも確認できる。


 僕ら観客からは、現場の状況なんてサッパリ。

 どよめきや不安の声、サクラは「ホノカちゃん映しなさいよ!」という苦情。

 周囲の反応は千差万別だった。

 レオナルドも「ムサシとカサブランカは大丈夫か?」と思わず僕に尋ねる。僕はそれに答えた。


「アレではプレイヤー全員の視界が悪い。地上に残る近距離型が回避するのは普通は困難だよ」


「じゃあ……」


 映像を眺め続けると、再び紅殻の姿が。

 彼女は視界を確保するのに『ソウルオペレーション』で鎌を回転させ、風圧で煙を払っていた。

 他プレイヤーから位置がバレるのは承知の上だろう。


 その彼女を襲撃したのは、同じ上空にいた魔導士や忍者ではなかった。

 煙から縫うように現れる黒い影。

 和と対比的な漆黒の洋装を纏ったムサシだ。


 紅殻も即座に反応し、正面から五本の大鎌を彼目掛けて飛ばしたが、ムサシは複数の大鎌の合間を上手い具合にすり抜ける。

 無防備状態になった紅殻は『ソウルターゲット』で切り抜けようと試みるが。

 動作を取ろうとした時には、ムサシに斬られた。

 ムサシは再び煙へ潜り込んでしまったが、それを目撃した観客は歓声が沸いた。


「ムサシ生きてんじゃん!」


「すげー! 空中泳いでんのかよ、アイツ!!」


 彼の生存に安堵したレオナルドだが、不思議そうでもあった。


「ムサシの奴、どうやって回避してんだ?」


 ああ、それは。僕がレオナルドに教える。


「多分、()()()()などを頼りにしてるのさ」


「え!?」


「感覚設定を最大にして、地面に伝わる振動・風圧・音……五感を頼りに敵の位置を捕捉する。プロのVRMMOプレイヤーには常識的な技術らしいね」


「でもそれって攻撃受けたら、めっちゃ痛いんじゃ」


「まあね。最大のデメリットだよ」


 ショック死に直結するのも考慮し、VRMMOでの最大感覚をゲーム側で調整しているらしい。

 一般的には感覚設定は低くするのを推奨される。痛みが嫌いで感じないように0とする事も可能だ。


 それはさておき。

 空中では魔導士と忍者の制空権争いが勃発。

 広範囲攻撃が落ち着いたのは、スキルの連発によりMP切れが起きたから。

 同じギルド所属の守護騎士に守られていたプレイヤーの生存を確認できる。

 漸くキャサリンはまともな解説を始めた。


「さ、さて! 既に多数の脱落者が出ている模様!! こちら、現在の上位十名のランキングを表示いたします!!」


 すると、中継モニターとは別に、観客全員が見られるよう四方にランキング画面が浮かぶ。

 再び、会場全体にどよめきが走った。

 レオナルドも「おっ」と驚きではなく『やっぱり』なリアクションをする。


 僕らが知らぬ内に、煙の中だけで壮絶な戦いが繰り広げられていたようだ。

 上位を占めているプレイヤーに、魔導士や騎射は一切居ない。忍者もだ。

 開幕からの広範囲攻撃など予想の範疇だったのだろう。

 ムサシ同様に五感を頼って回避したか、何等かの方法で切り抜けつつ、煙に乗じて他プレイヤーを狩った。

 そんなランキング内容。


 しかし……問題なのは現在のトップが。

 これには中田も身を起こす。


「おっと? 一位は『裁縫師』のカサブランカ選手ですか」


「ビックリですね、これはっ!!! 一体何が起きているのでしょう! 映像を切り替えられますか!?」


 一位はカサブランカ、その次がムサシ。

 だが、互いに順位が入れ替わり続けて拮抗状態と化している。

 キャサリンの要望に応じて、中継映像はカサブランカの方へに切り替えられた。



皆様、感想・誤字報告・評価・ブクマありがとうございます。

明日も通常通り投稿します。

よろしくお願いします。

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