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プレゼント


一方、ワンダークロースの方ではポンッと軽快な効果音と共に、鮮やかな包装紙に包まれ、リボンが結ばれた『プレゼント』が精製された。


ランクが上昇した『ワンダークロース』は更なる発展を遂げる。

敷地を拡大するか、ギルドの本館を改築するか、あるいは別の要素を引き伸ばすか。

ギルドによって方針は様々だろうが、レオナルドが指揮する『ワンダークロース』はギルドの敷地拡大を選ぶ。


ただ、敷地といっても春エリアの敷地を拡大するのではない。

他エリアの敷地を取得するのである。

敷地内の季節はギルドマスターの季節基準になる為、季節要素は左右されないが、やはり敷地のある季節のエリアによってNPCや受注可能なクエストなどに変化があるらしい。


次にレオナルド達が取得したのは()()()()の敷地だった。


その秋エリアの敷地を開拓中のレオナルドは、クリスマスカラーに染まった大鎌を振るっている。

植えられている木々を切り倒して、小川の水をすくうような形で鎌の刃を接触させ、植わっている青薔薇も大鎌を『ソウルオペレーション』による操作で回転攻撃し採取を行っていた。

すると、大鎌で斬られた事で発生・採取された素材がポンポンと『プレゼント』に()()()()()いくのだ。


ペットと同様に妖怪もスキルツリーがあり、それで解禁したスキル。

名称は『プレゼント』という()()()なものだが、こうして素材回収を行う場合だと、効率は段違いになる。


プレゼントの形状に変化することで、素材量による重量負荷がかからない状態になる。

つまり、持ち運びには最適だ。

レオナルドは量産したプレゼントをアルセーヌが設置したレーンのギミックで流したり、冬エリアでテイムした『トナカイ』たちが引くソリで運搬して貰ったり。

このスキル――『プレゼント』には、もう一つの効力があるが、それは別の機会で触れるとして。


レオナルドはキャロルとリデルが乗っているソリに、プレゼントをなるべく多く載せていった。

ソリからプレゼントが溢れるのではないかと思う程の量になり、レオナルドは「よし」とソリに乗り込む。

トナカイのスキルを使い、空へ駆けあがった。


「こうして()()()()()()のは初仕事だな。キャロルもリデルも、向こうに行くのは初めてだろうけど、全然大丈夫だぞ」


「ぶ、ぶ!」


「ふるぅ」


サンタクロースの如く、空を駆けるレオナルドたちの姿は秋の層においては季節外れの風景だった。

彼らが秋の住宅エリアを通り過ぎ、紅葉生い茂る山中まで接近し、到着するのは『銀杏並木高速道路街』を通った先にある商店街――正式名称『竜胆(りんどう)横丁商店街』。

レオナルドが発見した頃は妖怪しかいなかったが、レオナルドからの情報を頼りに、他プレイヤーも訪れるようになっている。


ソリが無事に商店街に到着すれば妖怪達が寄って集った。


『おお! レオナルド様!!』


『本当に来て下さった!』


『他の季節の品を恵んで下さると聞きました!!』


普通のプレイヤーは聞き取れない妖怪達の言語だが、妖怪をテイムしたレオナルドには聞き取れるようになった。

最も、彼らが好意的なのは別の理由がある。

レオナルドは、それぞれの妖怪達に望んだ代物を配っていく。主に、秋の層では珍しいものを。


「秋の層にある俺のギルドで作ったもんだから、皆貰って大丈夫だぞ。お前はコレでいいか? 椿油の油差しだ」


レオナルドから油差しを貰った『首なしライダー』は言語は喋れずとも、上機嫌な様子を体で表現している。


『おお、レオちゃん。お茶でもどうだい』


店を切り盛りしている老婆の妖怪が猫撫で声で呼び掛けるのに「全部配り終わってから寄るよ」とレオナルドは返事をした。


『以津真天様のご子息だ!』


『本当によく似てらっしゃる!!』


中には人間のように興味本位で近づく野次馬めいた妖怪もいる。

レオナルドは、客観的にそこまで似ているものなのかと複雑な心情になっていたりした。

一種のお祭り騒ぎを起こしつつ、ようやくレオナルドはマングルの店に足を運ぶ。


「おぉ~! やっと来たじゃん!! 噂の()()()()!」


レースのついた煌びやかドレスを着熟す女性的な外見とは裏腹に、ガッツリ好青年の声色で話しかけて来たのは『ホワイト・レディ』。

正式に対面したのは、神隠しイベント以来のレオナルドは「ど、どうも」と押され気味に挨拶する。

もう一人、全身赤コーデのマングルの姿もあるが。

ホワイト・レディが興味津々でレオナルドに話しかけて来た。


「ねーねー、どうやって以津真天に取り入ったのさぁ~? マザーグース(お爺ちゃん)の時もそうだったけど、対妖怪のコミュ力マックスって事ぉ~??」


「い、いや……コレばっかりは俺にもよく分からないんだよ。自分と似てるから、他人事に見えないってさ。俺、そんなに似てるのか??」


「………あー! 確かに似てるかも!! 見た目じゃないよ? 雰囲気!!」


指摘されて気づいたホワイト・レディが店の奥で黄昏るマングルに聞いた。


「何か似てない!? マングル、こいつ奇跡的に以津真天と似てるよ!」


「フン、当然だろう。以津真天もソイツも『全季』だからな」


「あ、そっかー」


マングルはどこか気に入らない様子で、レオナルドに告げる。


「それで例の()についてだ」

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