表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
302/315

青薔薇


僕はウシュムガル戦に向かう前に『賢者の石』の試運転を行う。

久しぶりに動かす事もあるが、エスプレッソが行った事が可能なのか、実際にウシュムガル戦でどう生かすか、そして――『賢者の石』をセットした武器もとい鞄には、アーサーが潜んでいる。

奴は『賢者の石』を活用できるのか。


専用訓練クエストに向かい、色々試してみる。

やはり……エスプレッソと同様の事ができなかった。

錬金術師の最終試験をクリアして取得する技だったと分かり、僕は次の試みを行う。


武器を背負ったまま『賢者の石』による技の精製……やはり問題ない。

適当に作った『季節石』の薔薇が僕の掌に出現し、しばらくすれば消滅するのを確認した。


僕は『練り切り』を精製してみる。

それも小さな掌サイズのものを。

専用訓練クエストで用意されているダミーに対し、掌サイズに精製した主に『季節石』で構成した兎の練り切りを――投げる。

兎の練り切りはダミーへ衝突すると同時に、ダメージを与え、青薔薇のエフェクトを舞散らし消滅。


「……()()()


ポツリと僕は呟く。

更に『賢者の石』の青薔薇と季節石の煌びやかなエフェクトによるエネルギーを出し、連続で『練り切り』を精製していき、ダミーを狙っていく。

即席した青薔薇の練り切りや、兎の練り切りが続々とダミーへ向かっていった。


変な話だが『賢者の石』はセンスよりも発想力が重要のようだ。

何となく僕自身がエスプレッソの攻撃方法ができなかった理由が分かる。


彼が攻撃のイメージとして活用していたのは、コーヒーやチョコレートという、一見『賢者の石』の素材をベースにしものと思われがちだが。

どちらかと言えば、自分が得意で想像しやすい調理や精製がベースになっているのだろう。


これはバーチャルゲームだ。

故に、脳波で精製されやすいものが、連想するものがより反映され、能力に引き出されやすい。

レオナルドが「ルイスは練り切りだよな」と冗談交じりで言った話が本当だった訳だ。

変なところで助けられるなんて、全く……


第一に、僕は動きが単調になりやすい。

攻撃の主体も変にコンボを狙わずに、単調で攻める。これが基本だ。忘れそうになるが、これが主体になる。

連続で精製できる『練り切り』の数の確認。

それから防御の『練り切り』の確認。

自身のバフ補正を与える『練り切り』の概要など把握する。


バフ補正は身体強化にSGの一定時間回復、それとドロップ率上昇か……青薔薇の効力だが、戦闘で上手く活かせないのがな。

あとは……精製速度はどうだろう?

エスプレッソは恐らくDEX極振り。精製速度の高さを生かした接近と遠距離攻撃が主だった。

でも、僕はDEXにポイントは割り振っていない方だ。

このままだと、精製速度に不安がありそうな……いや。


僕は首を否と振る。

『練り切り』の精製速度には自信がある。問題はない。

真の問題は、やはりアーサーの存在と、難易度が段違いになったウシュムガルの強さ。


ワンダーラビットに戻り、持ち込む薬品を精査しようとした時。


「ウサギミサイル! 着弾!!」


どしゅ~~と効果音を口ずさみながらジャバウォックが、僕に向けて兎の小物を手で持ち、ぶつけてくる。

ああ……色々考えていて、ジャバウォックのお菓子を用意していなかった。

僕はウサギミサイルをかますジャバウォックから、小物を回収しようとしたが、謎の軌道で僕の手から逃れ続ける。


「――待てよ」


僕は思いついた。

ジャバウォックは不思議そうに、無垢な瞳で小物によるロケットの動きを続けた。





場面はウシュムガルの再戦へ移る。

序盤だけは、最初と同じ薬品でのハメ戦法から入り、途中から挙動に変化が入ったウシュムガルの動向を確認してから僕は、攻撃手段を切り替えた。


機敏になったウシュムガルの鎖つきの刃は、幾度も回避の練習を熟して、軌道を読んだ。

攻撃して破壊する必要はない。

鎖つきの刃の攻撃を回避し、鎖が伸びきったところで僕は『賢者の石』による練り切りの連続精製を行う。


『季節石』で精製された青薔薇と兎の練り切りたちは、薬品の水流で加速し、複雑な軌道でウシュムガル本体へ飛んでいく。

即ち、ミサイルの如くだ。

僕はウシュムガルの攻撃を回避したり、防御を行ったりで猛攻を絶え。

練り切りの攻撃――命名するなら『練り切りミサイル』――を間に挟んでダメージを与える。


鎖の攻撃は徹底して回避を行い。

一帯に酒を撒いて、炎の海に包み込む攻撃は薬品の液体で凌ぎ。

アーサーが攻撃をしかけて行っていた暴風の攻撃も向こうから行って来たが、練り切りの防御壁で絶えた。


いよいよ、体力が第二形態移行へする頃合いになったタイミングで、僕は背負い続けていたバッグを手に持つ。

ウシュムガルが袖から無尽蔵に鎖を伸ばすモーションを確認。

僕はバッグを兎の練り切りに変化させて、そこから薬品の水流で上空へ上昇していく。僕はその練り切りにしがみつき、同時に鎖の攻撃も、鎖が変化し発生する攻撃も『巨大ウサギミサイル』にしがみつきながら回避。


面白半分でウサギミサイルを試した訳じゃない。

当然、このウサギミサイルはウシュムガルへぶつける為に精製したのだ。

ある程度、上空まで上昇した僕は、そこからウサギミサイルと共にウシュムガルへ向かって急降下。


これは薬剤師系の通常攻撃で出せる、重量を利用した実質最大火力の攻撃。

急降下中も、僕が操縦することで地上からのウシュムガルの攻撃を回避して、正確に奴へ叩き込める!

なるべくギリギリまでミサイルの狙いを定め、練り切りの防御壁も活用する事で、ミサイルを守る。


僕は、最大限までひきつけた所で、ミサイルから手放し。

ウシュムガルへ攻撃を叩き込む。

すると、けたたましい獣の咆哮が響き渡った。


僕の体は風圧でウシュムガルから吹き飛ばされていく、そこから人間ではなく巨大な大蛇――『オロチ』がうねりながら姿を顕現させた。

ここから、第二形態へ移行する――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ