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【番外編】折角、姫プできたのにコレジャナイ感ハンパない(後)


「はぁ~……一時はどうなるかと思ったよ~」


思わず私はそんな言葉を漏らしてしまった。


あの後。

一先ず、残された私達は最深部に移動していた。


マルチエリアで玄武さん以外にも、服部さんと椿さんまでPKされてたのをログで確認して緊張しちゃったもん。

ヤバイプレイヤーが来たのかなー。でもこれ逃げた方がよくない?とか思って。

仕様上、マルチエリアはボスを討伐して最深部が開通されて、そこにある帰還用クリスタルに触れればクリア判定なのよ。

パーティを組んでたら、誰かが帰還用クリスタルに触れるだけでOK。


つまり、カサブランカさんを置いてクリアできる事も出来たんだけどね……

楓ちゃんが気まずく「実は」と教えてくれる。


「カサブランカさんが持っていた魔石。どうやら服部さんが他プレイヤーから盗んだものなんです。さっきフレンドチャットで服部さんとやり取りして知りました」


「え!? じゃあ、向こうでPKしてきたのって」


「はい。賢者のプレイヤーの方らしいです。一緒に同行されてる錬金術師の方もいたそうなんですけど」


そりゃキレて当然の案件だわな!

てか、服部さん何やってんの! 下手な事しないで、トラブルは勘弁だって!!

楓ちゃんから話を聞いて、土方さんも困惑気味だったけど納得した様子で言う。


「カサブランカさんは魔石を返しに向かったのか。穏便に事が済めばいいのだけど……」


紫電くんの方は、この手のゲームに慣れきっているせいか「盗まれる方が悪いから放っとっきゃあいいのに」とブツクサ文句を垂れてた。

いや……カサブランカさんの場合、律儀に返しに向かったよりか。


「その賢者のプレイヤーの人に興味持ったんじゃないの? カサブランカさん」


私がポロっと喋ったら。

皆、納得したかのように沈黙してしまう。

少し間があってから、カサブランカさんからパーティチャットで帰還クリスタルに触れて良いってメッセージが飛んだから、私達は帰還クリスタルに触れた。


楓ちゃんの店に戻ってお疲れ様会ってより、反省会みたいなものが開かれた。

割と、ではなく相当に服部さんは、相方の椿さんにめっちゃ怒られてる。

だけどそれ以上に「あの魔石、ホントに凄かったんだよ!画像だけでも見てくれって!!」と熱弁している服部さん。


玄武さんは賢者の人じゃなくて、錬金術師の人にやられたみたいでカサブランカさんに「妖の貴様のような動きをして来たぞ、あの男」と妙な感じで語ってた。

負けてイライラしてるより、変なものを見た感じで……私も何言ってるか分かんないけど。


そんな騒がしい中、カサブランカさんは皆の話を聞き流しながらメニュー画面を開いて、何かを眺めて、しばらくしたら打ち込んで……誰かとチャットしてるのかな?

……さっきから、カサブランカさんの様子が少し、なんだろ……


「あ! ちょこミントさんのスキル、どうなったか見せて貰えますか??」


楓ちゃんに声をかけられて、私も我に返った。

昇格できた喜びでステータスとか全然確認してなかったよ!

え~と……


ステータスとか、新しく覚えたスキルの試し打ちとかやったりして、カサブランカさんの事は()()()、すっかり頭から離れてしまって。

後々、問題が起きるまで私も、私以外の皆も忘れてしまったんだと思う。


思い返せば、妙に嬉しそうなカサブランカさんなんて、滅多に見れなかったのに……





時は少し遡り……


ちょこミントが必死になってマルチエリアボスとの戦闘を続ける一方、サポート側の方は結構、いいや相当退屈だった。

無論、ちょこミントのMPやHPを気にして、時折回復してやったりするが。

クロスヴィルが[しりとりでもしよっか]と呼び掛ける程、余裕があったのだ。


流石に()()()()はしなかったが、ちょっとした小話で場を繋いでいた。

そこそこ盛り上がった中、カサブランカさんは退屈そうに手元で爪を弄る動作をする。

ネグロが、誰かはしそうでいて、誰もあげなかった話題を出す。


「ところでさぁ、お前ら現実(リアル)で付き合ってる奴いる?」


ちょっと恥ずかしさを感じる話題に開口一番で名乗り上げたのは、土方だった。


「付き合うというか、今、同棲している相手はいるぞ」


「おい、いきなりかよ……」


ネグロが若干ドン引きしている中、クロスヴィルが自棄に自信満々で[幼稚園の頃に付き合ってた子がいるよ]とメッセージを出してくるものだから、周囲も彼の相変わらずの様子に苦笑いを溢す。

楓は戸惑いつつ言う。


「わ、私はまだそういう人と会えてない気がして……うーん。気になる人に心当たりもないです」


ネグロが便乗するように「俺もそうだわ」と言う。

紫電の方は――アイドル活動も相まって恋愛は禁止事項だった。

しかし、それを抜きに恋愛経験のような体験が皆無なので、複雑な表情で「俺は恋愛とかよくわかんね」と答えた。

ネグロが思わず突っ込む。


「は? わからねぇとかあるか普通!? どういう生活送ってるんだよ」


「い、いや、わからねぇ奴もいるだろ! ほら!! とくに……」


コイツと紫電が指差したのは、カサブランカ。

ある意味、気になるが。紫電の想像する通りに、きっと分からないか興味がない部類ではないかと思われる程だ。

ネグロが手元を弄るカサブランカに「おーい姫様姫様」と呼び掛けてやる。

少し遅れてカサブランカが答えた。


「今の所、そのような予定はありませんね」


「予定って」


紫電が呆れた風に言葉を漏らせば、逆に楓は目を見開いてカサブランカに問いかけた。


「えっ。ひょっとしてカサブランカさん、好みとか理想の方、みたいなものがあるんですか?」


要は、限定的な相手を探しているのではないかと、楓は受け取った。

カサブランカは、別に、正直そんな意図はなかったのだが、彼女の問いに対し、少しだけ考える。

()()()()()


その時、フッと()()()()が浮かび上がった。


何故?と疑念はあったが。

しかし、妙にしっくり来たので、彼女はゆっくりと答える。


「……そうですね………この世で……()()()()()()()()()()()()、でしょうか」


カサブランカからそんな言葉を聞かされて、そんな人間果たしているだろうかと思われても仕方なかった。

しかし、彼女は何か思い当たり、手元でメニュー画面を開いた。

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