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薬草刈り


 こうして僕らが『花畑エリア』に移動し、スポーン地点に到着。僕らの背後には大き目な桜色のクリスタルが地面から少し浮かび、存在していた。

 PKの話を聞いてか、レオナルドは周囲を警戒している。


 サービス開始とあって、素材集めに来ているプレイヤーはそこそこ。

 花畑エリアでも、小川が流れ、木々も生え、プレイヤー同士の混雑を招かないように、花畑も間隔を置いて配置されていた。


「ハサミ持ってる奴がいる」


 レオナルドが必死に武器のハサミを用いて、花を刈る刺繡師のプレイヤーを発見する。

 僕はふと思い出す。


「衣服の染料に花を使うんだったかな。早々に素材集めをしているなら、個人店経営を楽しむプレイヤーだよ」


「カサブランカの奴と違うなぁ」


「アレは頭がおかしいだけだ。非常識さも含めてね」


 カサブランカが正しいのではなく、彼女はおかしい。

 あそこの刺繡師が正しい。

 誰もがハサミをどう扱うかと試みた場合、ああいう使い方しか思い浮かばないのだから。

 思った以上に誰も居ない。僕は一つ提案する。


「レオナルド。『ソウルターゲット』の練習をしながらやろうか。折角だから僕が撮影するよ」


「は? 撮影とか意味わかんねー……」


 レオナルドはギョッとしてるが、僕はVR機器本体に搭載されている撮影機能を立ち上げた。


「映像で取るとスローで見直せられるだろう?」


「お、おう。そう、だな」


 見られながらの特訓に緊張してるのか、レオナルドの動きは最初ぎこちなかった。

 段々と調子を得た頃。

 レオナルドと僕で検証した結果、『ソウルターゲット』の詳細な効果が判明していく。



・分裂させた魂を早く飛ばす事を意識すれば、速度が上がる。

・分裂させた魂は、本体と重なってしまうと消滅する。

・分裂させた魂が残す、薄っすら見える魂の軌道に合わせて本体は移動する。

・『ソウルターゲット』の浮遊中はスタミナ消費しない。

・本体の重量も作用する。所持アイテム数が多いと浮遊具合と速度に支障が発生する。



 アイテムを持ちたがらないレオナルドのスタイルに合っている技だった。

 しかし、やはり問題は細かい切り返し。

 魂の軌道でルートが定まっている。

 まるで電車のレールと同じ仕組み。突然の割り込みや機転の良さが困難になる。


 一度『ソウルターゲット』を解除する事で、軌道のリセットは可能なのだが。

 空を浮遊していた場合、真っ逆さまに落下しながら切り返しをするようでは対人戦では遅い。

 いや……対人戦でなくとも、空中戦では重要な部分。


 レオナルドが僕に聞く。


「そういや、カサブランカの奴がなんか言ってたじゃん。なんだっけ」


「………」


 僕としては彼女の話題は懲り懲りだ。レオナルドも悪気はないんだろうが……

 指摘だけは一人前だ。僕は苛立ちを抑えて息を吐く。

 それから、レオナルドに指示する。


「ジャンプして攻撃やってみて」


「ジャンプ攻撃?」


「そう、少しの間だけ体が宙に留まるから」


 僕が撮影機能でレオナルドの行動を収めて、彼に映像を見せてやった。


「攻撃がヒットしてコンボに繋がらなければ、こうやって一時的に留まるんだ。『ソウルターゲット』を解除、それから空中攻撃をしながら再び『ソウルターゲット』を発動」


「理屈は分かるけど難しいな、オイ」


「できるようになったら面白いだろうね。移動に体力を必要としないのも大きい。攻撃時のスタミナ消費だけで済むし、VITに入れる必要はない。攻撃速度を良くする為にAGIとSTRに適度に振り分ければいい」


「……へ~」


 レオナルドが関心して映像を眺めていると、僕は視線を感じた。

 周囲を見渡すと、後からやって来ただろうプレイヤーが僕らに視線を向けている。

 僕が会釈する。

 向こうも慌てて会釈を返した。

 人目を気にしているのだろうか。僕はレオナルドに呼び掛け『花畑エリア』から離れる事にした。


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