探索
「俺達どこに向かってんだ?」
レオナルドの質問に、僕は周囲を見回しながら答えた。
「『春エリア』の探索だよ。店の場所とか覚えた方がいいだろう? ジョブポイントでスキルを買うのもいいね」
「あぁ、変な妖精が言ってた」
クエストを受注する集会所の他に、NPCが運営する武器と防具になる衣服を扱う販売店、砥石など基本的な消耗アイテムを購入できる雑貨店、例外で魔法使い専用の装備・箒を扱う店もあった。
それらを通り過ぎて、NPCが受付に出るスキル販売店に到着した。
ドロップアイテムに関係するスキルを中心にピックアップする。序盤で取り扱うスキルだけあって、経験値関係のスキルが多めだ。
[捨て物は拾い物]
ドロップアイテムを拾うと経験値獲得
[我が物と思えば軽し笠の雪]
アイテム回収範囲が広がる
[天、二物を与えず]
ドロップアイテムが拾えなくなる代わりに経験値獲得量3倍
[積羽舟を沈む]
攻撃がヒットする度に経験値獲得
「レオナルド。君は物が多いと、もどかしいんだったかな」
「んなもんでもねぇけど……」
「君は敵や周囲の物を攻撃して経験値を得る。僕がアイテムを回収して経験値を得る……どうだろう?」
「おお」
レオナルドも理解し、賛成してくれた。
スキルを購入し、販売店を後にした僕たちが次に惹かれたのは、人々が群れ成して集中しているある場所。集会所並に相応の作りをする建物。
近づいた僕たちに営業スマイルを貼り付けたNPCの一人が話しかけてくる。
「住民票の登録はただいま二十分前後の待ち時間となっております。整理券の発行はあちらです」
「住民票?」
僕が聞き返すと、流石はAI搭載のNPC、質問に対応してくれた。
「各層内では個人店や一軒家などを作製する事が可能です。一軒家を含めた自宅はマイルームのようなものと考えて下さい。自宅はアイテムを保管する『倉庫』機能があります。ゲームログイン場所を自宅に設定できる他、自宅からクエスト受注もできますよ!」
これなら、人と会う事なくログインからクエストまで行える。
業界もコミュニケーションを苦手とするユーザーのニーズに答えた取り組みに励んでいるようだ。
NPCは空気を読んでか、こんな事もつけ加える。
「フレンドの方とシェアハウスも可能ですよ!」
レオナルドは戸惑いながら僕に尋ねた。
「お前……どうする?」
「僕は買うつもりだよ。アイテム整理の倉庫は欲しいからね。――すみません。他のプレイヤーが勝手にあがりこんだりは出来ませんよね」
「はい。外から家の中は見えない仕様になっていますし、会話に関しても防音仕様となっております。他プレイヤーとの交流に関しては、自宅設定でお好みに。……あ! ちなみに立地の方は早い者勝ちです。お早めに購入した方がよろしいかと」
それから、整理券を受け取り、詳細内容がメニュー画面を通して[土地購入]の情報に入り、ゲーム情報の欄にNEWの点滅がついた。
<土地購入について>
〇各層内にある『市役所』の受付から土地購入を行えます。
〇土地代+自宅・個人経営店建造を含め5000マニーで購入します。
立地は先行順となっております。
〇土地代 毎月2000マニーのお支払いをお願いします。
支払われなかった場合、土地は自動的に剥奪され、建造物・庭等も消滅します。
倉庫内のアイテム、家具・インテリアに使用したアイテム全て消滅します。
<個人経営店について>
〇鍛冶師・刺繡師・薬剤師のプレイヤーは個人経営店を持つ事が可能です。
個人経営店内でも自宅/マイルーム同様、倉庫機能があります。
〇個人経営店内では『工房』が設置されます。
一部の作製物は『工房』で放置製造が可能になります。
『工房』で作製を行うと一時的にDEXが上昇し、作製の成功効率が良くなります。
〇四半期別に売上・評価による獲得報酬があります。
※生産職の売上評価は第2四半期(7月)より開始されます。報酬内容に関しては後日追ってお知らせします。