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無双


「どうしたんですか?」


 思わずレオナルドはそう尋ねる。

 黒翼の被り物のせいで表情は見えずとも、戸惑いを隠し切れてない『彼』。

 レオナルドが困惑しつつ、話した。


「俺、キャロル以外を育てる気はないんです。将来的にも余裕がないっていうか。むしろ、貴方に引き取って貰える方が、コイツの為だと思うし」


 改めて、レオナルドが雛を差し出すが、不自然なくらいに『彼』は引き下がった。

 レオナルドの経験上、あまりに異色な反応だったので、心情がまるで掴めない。

 半ばヤケクソ気味にレオナルドが問う。


「鳥、好きじゃないとか……違うか」


 烏を彷彿させる衣装を纏っているのだから、それはないだろう。

 突然、眼前の彼を理解出来なくなり混乱するレオナルドに救いを差し伸べたのは、飄々とした立ち振る舞いの青年・アルセーヌだった。

 彼はいつに間にか木の上におり、レオナルド達を見下ろしていた。


「駄目だって相棒。不死鳥なんて滅多にゲットできないんだし、そこから身元特定されちまうんだぜ」


 アルセーヌの登場に驚きつつ、レオナルドは納得する。


「すみません、そこんとこ配慮するの忘れてました」


 黒翼の手芸師は逃げるように立ち去った。

 レオナルドが気まずい雰囲気を隠しきれないのに、アルセーヌは悠長にレオナルドの傍らへ移動し「恥ずかしがり屋なんじゃねーの?」と言う。

 我に返ってレオナルドが不死鳥の雛をアルセーヌに託し、逆刃鎌に乗った。


「ムサシ達のところ、急がねえと! アルセーヌは雛を頼む!!」


「ホントよろしく、相棒。俺じゃ相手にされなくてさあ」


 アルセーヌに見送られ、レオナルドが真っ先に向かったのはラザールのもとだ。

 レースコースをなぞりながら、長蛇の列を作るプレイヤー達に追跡されるラザール。

 そこでは魔法による攻防が繰り広げられている。


 レオナルドがキャロルに呼びかけると、キャロルは武器に変化し、自ら彼の手元に収まった。

 リアルタイムでの成長を遂げたレオナルドにとって、最早、魔法は過剰に警戒する技ではない。

 各々の隙をついて掻い潜ったレオナルドが、背後よりラザールを襲う賢者たちを斬り伏せていった。


 彼に気づかない訳ないが、互いに魔法を発動し合うせいで身動き取れない賢者たちは、レオナルドの攻撃を回避出来ず仕舞い。


 ふとすれば、レオナルドはラザールに追いついて大声で呼びかける。


「ラザール! 全員倒したから、ムサシ達と合流しようぜ!!」


「んなっつ?! おま、いつの間にいたんだよ!」


 気を取られ、木と衝突しそうになったのを上手く切り返すラザール。

 二人が一旦、コースから離れていくと。木が数本、上空へ吹き飛んでいく光景があった。


 木を投げたのはムサシ。

 暴力的な身体能力を生かし、僅かの間だけ空中に留まる木へ跳躍、そこを足場にして上空に留まる賢者達を一掃していた。


 しかも、直ぐにそれらを片づけたムサシは、地上へ降りる途中でも突撃する神槌や木々に身を潜んでいた怪盗を倒してゆく。

 地上に立ってからは手を休めず、錬金術師たちを斬った。


 そんな調子でノンストップに戦い続けているムサシだ。

 一度、ステータスを回復させようとレオナルドが薬品を使用する。


 レオナルドはここで気づいた。

 ムサシの体力が減っていることにーー

 あのムサシでも、太古の揺り籠の猛攻を避けきれなかったのだろうか。レオナルドはあまりスキルレベルのない回復技を使おうとした。


 しかし、ムサシが攻撃を受けてもいないのに体力が減ったのを目にしたレオナルドが、まさかと手を止める。

 ムサシの体力が減った代わりに、レオナルドとラザールのMPが回復したのだ。


「ムサシ……」


 レオナルドも武士系のスキルを把握してないが、きっとムサシ自らスキルを使っている。

 彼が積極的にパーティ結成を求めたのはこれを狙っていたからだ。


 レオナルドはラザールに尋ねた。


「ラザール、MPとか魔石はどうだ?」


「あぁ、どっちもヤベーな。第七魔法は温存してっけどよ。重量で邪魔だから魔力水少ししか持って来てねー」


 ラザールも自身のMPが回復してるのに驚いた。

 このままでは不味い。

 レオナルドが非情に判断する。


 不死鳥の雛は本当に惜しいが、この状況では持ち帰りそのものが無謀な挑戦だ。

 まずはムサシよりも先に、光樹の方だ。


 彼もまた敵に囲まれているが、ムサシとは異なる接近型の戦いーー剣聖の能力で太古の揺り籠相手に渡り合う。

 光樹の手元には七色に輝く剣が握られているものの、魔法に対して、剣で防いでしまい、耐久の限界で破壊……かと思いきや。

 再び手元に剣が復活したのだ。


 盾代わりにしているらしい剣には、広範囲のシールドが付与。同じ剣をもう一本手元に出現させた光樹は、二刀流で魔法を薙ぎ払う。


 相手にしている太古の揺り籠たちの中でも、不満が吐かれた。


「馬鹿みてーな性能過ぎんだよ! クソが!!」


「確かにそうだが、下方修正くらうまでの間だけだ。それより足止めしろ」


 魔法を捌き切った光樹は、七色の剣から漆黒の、以前と同じ黒曜石で作られた剣に切り替えた。

 怪盗や錬金術師の中距離攻撃ーー薬品や鉱石の投擲、道具を使ったトラップ、弱体補正なども容易く薙ぎ払われている。


 光樹が素人の動きをしてコレだ。

 明らかに剣聖の性能補正が利いて無双している状態。

 原理はともかく、簡単に強さを得られる仕様なら不満があって当然か。


 とにかく、レオナルドは光樹を止める。

 迂闊に近寄れないので、太古の揺り籠たちを一掃して次に向かわんとする光樹に叫ぶレオナルド。


「光樹さん! そっちは、ムサシがいるので大丈夫です!!」


 そうしたら意外そうな表情で光樹が振り返り「アラ、そうなん?」と踵返した。


寝落ちして投稿遅れてしまい、申し訳ありませんでした……


次回:10/20

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