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 春エリア内でルイス達が激闘を繰り広げている最中、レオナルドはムサシ達と合流しようとしていた。

 誰がどこにいるか、パーティを結成しているので分かるのだが。

 中でも優先して接触するべきは、ラザールと光樹だ。

 アルセーヌやムサシの二人は上手く立ち回れるが、問題の二人は自棄になって離脱を考えない、かもしれない。


 武器と同化しているキャロルがレオナルドに呼び掛ける。

 前方から、木々の合間を抜けて現れる援軍が、レオナルドに攻撃を繰り出す。

 賢者に錬金術師、神槌……昇格のし易い、攻撃の動作に隙が見られる素人の者ばかりだ。

 まだ、最初にレオナルドを襲撃した彼らの方が洗練されている。


 大振りで突撃する神槌たちを逆刃鎌でターンを描きつつ、切り倒していくレオナルド。

 神槌も素早い突撃は脅威だが、それをコントロールする技術あっての脅威だった。


 錬金術師も、ルイスの戦闘スタイルで分かるが、単体だと薬品も鉱石も投げて当てなければ意味はない。

 賢者と連携し、それらをレオナルドにぶつけようと工夫しなければ。

 空中の相手に成す術なく。


 賢者たちの魔法も、最初は規模が派手で避けようがないと諦め、必殺技の相殺を手段にしていたレオナルド。

 しかし、魔法が放たれる魔法陣は砲口と同じ役割があり。魔法が放たれる模様が決められている。そこから攻撃の当たり判定を定められていた。

 また、当たり判定に含まれそうな場所でも、エフェクトが過剰に広がっているだけでダメージを受けなかったり……見極めるのは骨が折れそうだったが、これを理解すれば。

 第六、第七魔法を回避するのは夢ではない……筈。


 レオナルドは、皮肉にも今回の襲撃で知識と経験を得た。


「……あっ!」


 すると、レオナルドは偶然、()()を発見してしまう。

 こんな状況だ。

 普通は無視してもいいが、無視できない理由があった。


 赤い葉を揺らす紅葉の木の一角に、キラリと光る()

 ()()()()()()

 基本的に、不死鳥は夏エリアに分布しているが、夏と隣接する季節――秋と春にもごく稀に生息している。それもそれで通常の個体とは異なる、珍しい個体だ。

 レオナルドが夏エリアを散々巡っても見つからなかったものを、こんなところで発見するとは皮肉な話である。


 足を運べば必ず手に入る素材とは違う。これが最初で最後のチャンスかもしれない。

 ただ、この状況でレイドボスがいる最深部へ向かい。

 無事に帰還ができるかどうか。

 レオナルドは意を決して近づいてみる。


 巣には以前、イベントでカサブランカが引き取ったのと同じ、大きな卵が一つ置かれていた。

 引き取りたい衝動を抑え、レオナルドは残念そうに言う。


「……親はいないか」


 卵を育てるのではなく、不死鳥そのものと交流し、遊びに来てくれればと思っていた。

 卵だろうが、不死鳥そのものだろうが。

 誰も彼もが手に入れたい希少素材を産み出す存在だ。

 簡単にはいかない。


「いたぞ! 狙え!!」


 留まっていると、レオナルドの存在に気づかれ『太古の揺り籠』一団が襲撃する。

 意を決して、レオナルドは魔石で加速し接近する賢者たちの魔法を掻い潜った。

 最悪、卵が魔法で破壊されても構わない覚悟で。


 レオナルドは、無理にペットを増やさないと決めていた。

 ルイスの為ではなく。自分の都合も考えて。

 将来的に、レオナルドは就職活動を始め、インターンシップに向かう。社会人になったら、今のようにゲームを楽しむ時間も減る。

 そう、今だけなのだ。


 多くペットを抱え込んだら、ゲームにログイン可能な時間に対し、どれだけペットに時間が割かれてしまうか。

 近い将来の生活スタイルを想像したら……きっと、キャロル一匹だけで精一杯だ。

 ひょっとしたら、忙しくてゲームにログインすら出来ないかも。


 だから、ペットを増やさない。増やせない。

 代わりにキャロルを殺さず、精一杯育てるとレオナルドは決めたのだ。

 逆刃鎌の騎乗による機敏な切り返しに対応できない賢者のプレイヤー達は、レオナルドに容易く倒される。

 第六魔法も躱されるのに、賢者たちも躊躇してしまい。

 無理にレオナルドを倒そうとはせず、別の――アルセーヌ達に狙いを定める動きが見られた。


 そんな中―――


「サボってんじゃねーよ! チクんぞ、おい!!」


「ちょ、違う! 見ろ!! こ、これ、不死鳥の卵だ……!」


 賢者の一人が例の卵を発見。

 レオナルドも会話に耳にしたが、残りの賢者たちを片付けていく。

 ソウルターゲットを使い、大鎌から降りて相手に接近。

 蹴りや殴りで箒から叩き落し、そこを鎌で狙う。


 スピードだけはレオナルドを上回っても、変則的なレオナルドの動きに対処できず。次々に倒されていく中、先程の賢者は不死鳥の卵を抱えていた。

 大きな卵を片腕で抱え、面倒そうに言う。


「アイテム扱いにしろよ! 一々、余計な要素つけやがって……」


 不死鳥の卵でプラマイゼロに戻せると考え、あの賢者と数名の賢者は仲間を差し置いて、帰還するらしい。

 あの卵は、レオナルドが先に発見したと言うのに。


 でも、もう仕方ない。レオナルドは無視した。

 アルセーヌ達と合流しなければならない。

 レオナルドがポツリと呟く。


「いつになったら、不死鳥見つけ出せんだろーな」


 武器と同化してるキャロルが『ぷー』と音鳴らして返事をしている。

 カサブランカに頼むしかないだろうか?

 彼女が飼っている成体の不死鳥を思い出すレオナルド。





「お、おおお、俺が見つけたんだ! 俺のだぞ!!」


「………………………ん?」


 一体どうなったのか。

 ふと気づけば、レオナルドの腕に不死鳥の卵があったのだ。

 恨み言を吐きながら、不死鳥の卵を持っていた筈の賢者は消滅する。


 地上を降り立っていたレオナルドの周囲には、他にもPKされた賢者が落としたらしいアイテムが散乱していた。

 不死鳥の卵は大きく。

 このまま逆刃鎌に乗ってバランス取るのは厳しそうだ。


「えっと……」


 レオナルド自身、理解できないまま、卵を見つめると殻にヒビが一つ入った。


次回更新 10/13になります。

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