パーティ解散
ステージクリア後、とんだお祭り騒ぎになった。
まだ誰も鳥の妖怪――クックロビン隊を突破できなかった為、先に脱落し、集会所に戻っていたパーティメンバーが喜んだせいで、僕たちは良い意味で目立ってしまった。
周囲の雰囲気もあって、カサブランカとのいざこざを無かった事に、盗賊たち女性三人組は話しかけて来た他プレイヤーと話を盛り上げ。
盾兵の老人からはリーダーの剣士をほめちぎる。
手も足も出ずに脱落した武士と鍛冶師の初心者二人は、申し訳なく頭を下げていた。
銃使いの女性はパーティのチャットに[お疲れ様でした]とメッセージを残して、パーティから離脱する。
察していたが、寡黙で他人と関わり避けている人見知りだ。コミュニケーションが不得意でVRMMOをやる度胸は中々。
ひょっとしなくとも、ソロプレイヤーかな?
序盤は不安だから僕たちのパーティに入って、安全にレベル上げをした感じだろう。
「なぁなぁ! あのクソ鳥どうやって倒した!?」
そして、誰もが聞いてくる事はコレだ。
本当に考え無しだ。
何も考えないでゲームをやっている。
自分の力で攻略しなくても、他の誰かが攻略を発見すると思って、他人任せ。
……違うか。
今時のゲームだから、ゲーム情報の内訳を深く考察しなくても、単純な構造だと思い込んでいる。
僕がどう答えようかと悩んでいると、割り込んできたのはカサブランカだった。
「銃使いと弓使いのプレイヤーを保護しつつ、周囲の木々を切って視野を広くすればいいですよ」
それを聞いたプレイヤー達は盲点だったようで、揃って関心を呻きをする。
「全部伐採すればいい奴?」
「いやでも、攻撃はどうすんだ? 挑発しても盾兵がすぐ落ちるんだよ」
僕は回復薬や『挑発香水』の件に触れられたくはない。
まだサービス開始早々で、僕というプレイヤー個人が注目されるなんて御免だ。
カサブランカが余計な事を言う前に――すると、レオナルドが答えてくれた。
「回復しまくればいいんだよ。コイツがずっとアイテム使いまくって全員無事だった」
薬剤師の連続でアイテムを使用し続ける特性。彼はあくまでソコを強調してくれて『挑発香水』の明言は避けてくれる。マジか~と野次馬たちは物量作戦に圧倒され、情報が伝達される。
今頃、掲示板やSNSでも出回っているだろう。
とにかく、僕たち自体が目立った結果にはならなかった……筈。
野次馬たちが離れて行った後、カサブランカが僕に話しかけて来た。
「全く、うんざりしますよね。ああいう方々は」
僕はなるべく、にこやかに返事する。
「……ありがとうございます。僕もこんな事になるなんて思わなくて」
「でしょうね。貴方――私達が全員死んでしまっても構わなかったんでしょう?」
…………
サラッと涼しい顔して彼女は言う。
僕に苛立ちを見せている態度ではなかったが、僕が行動を取った事は理解している。
何故なら、レオナルドの『ソウルターゲット』を観察していた。
僕やレオナルドの動向を最初から怪しんでいたとしか思えない。
清々しい笑みを貼り付けたままカサブランカが尋ねた。
「失礼ですがイベントに参加する予定は? どうやらプレイヤー同士のバトルロイヤルなど開催されるようでして……あぁ、そこの貴方も」
ついでに声をかけた相手は、よりにもよってレオナルドだ。突然の話に彼も困惑している。
不快感を抑えて「ありません」と僕は答え。
レオナルドは視線を泳がせ「わかんね」と曖昧な返事をする。
そこは否定して欲しかったのだけど……僕の不安を他所に、カサブランカは不敵に笑う。
「その時は、よろしくお願いします。私はこれで失礼します。午後の会議がありますので」
「か、会議ぃ?」
レオナルドが素っ頓狂な声を漏らす。僕も正気を疑った。
会社内でゲームをやって……仮にやっていたとしたら、彼女の立場はそれなりの地位があるとしか。
彼女は淡々と手元に表示したメニュー画面をタッチ。ログアウトを選択し、瞬く間に彼女の姿は消えって言った。