スキルツリー
スキルツリー。
レベルアップなどで貯まるスキルポイントを消費する事で、様々なスキルを開放し、強くなるという。
ゲーム界隈では格別珍しいシステムではない。
ただ、マギア・シーズン・オンラインでこのスキルツリーを設けているのは『ペット』のみ。
キャロルは夏エリアのメインクエストを経て、相当のスキルポイントが溜まっている。
それを一気に解放できる訳だ。
だが、普通の『ペット』とキャロルは少々事情が異なる。
キャロルはイベント限定の特殊ペット。
今まで戦闘で披露してくれたトランプ攻撃、瓶を出現させ水鉄砲という、通常の『うさぎ』では入手できない特殊攻撃を取得している代わりに、他のペットよりも、獲得スキルは少なめ。
レオナルドがメニュー画面からキャロルのスキルツリーボードを表示。
僕にも見えるように、ボードの位置を調整する。
簡易的な配分を説明すると、キャロルのスキルツリーは三つに分かれている。
一つは基礎スキル。
残り二つはキャロルの『季節』――春と冬のスキル。
攻略サイトで見た通常のスキルツリーよりも範囲は狭く、スキルも少ない。
これでもレオナルドは「おおう」と動揺を隠せずにいた。
既に習得しているキャロルのトランプを使った技『トランプアタック』と瓶の水鉄砲は、それぞれスキルツリーのスタート地点として固定開放状態になっている。
僕も軽く目を通して、指で示す。
「まずはこのルートだね。水鉄砲攻撃スキル『Drink Me!』のレベルアップ解放だ。ここと、あそこも埋めればレベルMAXになる」
「おお、悪い。ここと、あそこっと……一緒に色々ステータス補正みたいなもん獲得してるけど。残りは、こーいうのに割り振った方がいいんだよな」
「うん。あ、ちょっと待って。基礎スキルツリーにあるコレを開放しよう」
基礎スキルにある『ワンダーフォール』。
滞空時間が長くなり、ゆっくり降下していく効果を得ると説明にある。
レオナルドには丁度いいスキルだ。
無論、他にも一定時間、体の大きさが変化する。ハリネズミ、チェスの駒を召喚、相手の視界を鏡のように反転させる、などなど……
キャロルが入手できるものは多くあれど、中途半端に選んで器用貧乏になっても意味はない。
レオナルドは、キャロルだけを育てると決心した。
故に、レオナルドが活用でき、彼単体で入手できないスキルを獲得する。
一応の方針が定まっている為か、どれが必須、あれはいらないと即断即決できる。
さて。
キャロルのスキルツリーは、最終的に以下の通り。
<キャロル LV:70(MAX)>
~基礎スキルツリー~
・『ワンダーフォール』レベル MAX
・『トランプアタック スペード』レベル MAX
・『黄金のトランペット』レベル MAX
・聴覚感知(大)レベル MAX
・嗅覚感知(中)レベル MAX
・攻撃速度上昇(小)レベル MAX
・HPアップ(小)レベル 1
・MPアップ(小)レベル 1
・防御アップ(小)レベル 1
・攻撃アップ(小)レベル 1
・器用アップ(小)レベル 2
・特殊アップ(中)レベル 3
・俊敏アップ(大)レベル 4
~春スキルツリー~
・『トランプアタック ハート』レベル 1
・『トランプアタック ダイヤ』レベル MAX
・コンボ数増加(大)レベル MAX
・追撃効果(中)レベル MAX
・攻撃アップ(小)レベル 2
・器用アップ(小)レベル 1
・俊敏アップ(中)レベル 3
・特殊アップ(中)レベル 3
・HPアップ(大)レベル 2
・MPアップ(大)レベル 2
~冬スキルツリー~
・『Drink Me!』レベル MAX
・『トランプアタック クラブ』レベル MAX
・状態異常耐性(中)レベル MAX
・攻撃アップ(小)レベル 1
・MPアップ(小)レベル 1
・HPアップ(中)レベル 2
・俊敏アップ(中)レベル 2
・特殊アップ(中)レベル 2
・防御アップ(大)レベル 4
『トランプアタック』シリーズはそれぞれ効果が異なる。
スペードは鎌の形状を一時的に槍状へ変化させ、スペードのエフェクトから始まり、鋭い突きを発動させる。
ハートはHPとSGを回復させるスキル。回復といってもなけなしの回復だ。レベルMAXにしないとまともに使えない。
ダイヤは遠距離斬撃を発動させるスキル。ダイヤに分離されているが、攻撃の際はトランプの象徴たる四つの記号を斬撃として繰り出す。
最後にクラブ。トランプの盾を出現させる防御スキル。必要なく聞こえるものの、魔法使い系による大規模攻撃を防ぐには必須だ。
残りのステータス補正は、ほとんど攻撃スキル習得の過程で入手した。
レオナルドはその次に移行する。
スキルツリーを閉じ、キャロルのステータスから『幸魂』の解放を行う。
ペットとの連携技だ。
攻撃スキルよりも威力が高く、これを必殺技に使うのが祓魔師の主軸になる。
連携技も解禁するのに幾つかのポイントが必要になる。
レオナルドは唸った。
「キャロルの場合は、一種類だけなんだな」
キャロルが覚えられる連携技は『ロイヤルストレートフラッシュ』。
プレイヤーの前方150度ほどの範囲に強力な特殊・物理が組み合わさった攻撃を発動させる。
そして、最後にキャロルのレベル上限解放。
これは祓魔師が行う仕事らしく、祓魔師以外のジョブはペットの上限解放は行えない。
レオナルドが専用の陣を床に出現させ、中央にキャロルをちょこんと配置。
上限解放に必要な素材を用意。
気合を入れて彼は宣言した。
「よーし、やってくぞ。キャロル」
「ぶ!」
第一段階の解放から、レベル100まで解放するのに何度か素材消費を行い。
一歩手前で素材の中に冬エリアで入手可能なSSレア素材『冬石』を要求され、止まってしまった。
しかし、『冬石』ならまだ問題ない。
もどかしいレオナルドに、僕は穏やかに声をかける。
「ムサシかアルセーヌに頼んだらいいさ。冬エリアに行けるプレイヤーは限られている。僕らの知り合いだからって妨害される心配はない」
「まぁな。ついでに、詩織のレベル上限を解放してやらねーと」
一段落済んだところで、レオナルドは僕に尋ねる。
「そうだ……ルイス。お前、ペットはどうするか決めたのか?」
「ああ、君に伝えるのを忘れてたよ。ペットは選ばなかった」
「え!?」
レオナルドのとんだオーバーリアクションに、キャロルがすました顔で何事かとこちらを伺う。
僕は平静に話を続けた。
「鶏にしようかと思ったけど、鶏もうるさいからね。飼いたくもないペットを飼うだけでストレスになりそうだ」
「なんつーか。お前らしいなぁ」
ブクマ&評価をしてくださった皆様、ありがとうございます。
先日は投稿できずに申し訳ございません。
この後、続けて投稿する予定です。よろしくお願いします。
追記:やはり続けての投稿が無理だと判断しました。申し訳ございません。
次回は8/29深夜にかけて投稿になります。