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クックロビン隊(隊長不在)

みなさん、評価ありがとうございます。

今回は少々長めとなっています。


 

「待ってくれ!」


 唐突に僕たちへ声がかかった。

 どうやら、話を耳に入れていたらしいリーダーの剣士が慌てて僕を制する。


「防御貫通か分からないのに、無茶な事をするな!」


「しかし、誰かがヘイト役になれば攻撃に集中することができます。遠距離型の彼女たちがそうです」


「ゲームオーバーで離脱したら報酬も減るし、持ってるアイテムがランダムで消えちまうぞ!?」


 百も承知だ。

 そうこうしているうちに、弓兵の女性は攻撃を受けてしまう。

 急所の頭部を射貫かれていないだけ幸運だ。だが、彼女に死なれては困る。僕は強い口調で言う。


「僕は離脱した彼らで得た情報を元に、勝ちを目指しています。このまま負けては、彼らの死が本当の無駄死になってしまいますよ」


 レオナルドも溜息ついてフォローしてくれた。


「他に策でもあんのかよ。俺は取り合えずルイスの作戦に乗る」


 戸惑いつつ、リーダーの剣士は「わかった」と返事する。

 それから持っていたアイテムを、一旦僕に預かって欲しいと頼んできた。恐らく、最初はそのつもりで僕に近づいてきたのだろう。


 遠距離でドロップしたアイテムに近づいてなかった弓兵と銃使いの女性は、僕に頼む素振りはない。

 格闘家の少女も、アイテム関係は無視して敵を倒す事だけに専念しているようだ。


 レオナルドが大鎌で周囲の木々を切っていく。

 切り倒された木々は現実とは違い、粒子化し、素材アイテムをドロップする。僕は『挑発香水』を使用し、素材アイテムを回収した。


 回収しなければ、そこを通るプレイヤーが自動的に拾ってしまい、重量に加算されてしまう。籠で頭部を庇いながら、弓兵の女性に回復薬を使用した。

 彼女も持ち直して、レオナルドのお陰で視野が広まった位置に見える裂け目に矢を放つ。


 ちょうど裂け目から鳥の妖怪が顔を覗かせ、全貌が露わとなる。

 鳥が弓矢を武器に取っているかと思えば、巨大な鳥が大口を開き、その中から人の手が伸び出していた。人の手がボウガンを持ち、矢を射出している。

 弓兵の女性の攻撃は命中。妖怪は消滅には至らずも、一旦裂け目に退避した。


「やった! これなら行ける!!」


 弓兵の女性が歓喜する傍らで、銃使いの女性は遠距離向けの狙撃銃で的確に命中させた。

 僕は自分の状態確認をした。

 『挑発香水』の効果が切れる数秒前だった為、再度使用。効果を延長する。

 大凡の効果時間は一分。時間稼ぎできるのは二分。


 瞬間。

 一筋の青白い閃光が森林を走った。淡い色合いは人魂を連想させる。

 恐らく、レオナルドの『ソウルターゲット』だ。

 『ソウルターゲット』の移動は地味に速い。


 仕様は不明だが、DEXやAGIに依存しないものだ。これは格闘家の少女とリーダーの剣士、レオナルドのステータスと比較すれば分かる。

 レオナルドは木々を走り抜ける為『ソウルターゲット』で分裂した魂を先行させ、彼の体は魂の道筋をなぞる様に引き寄せられていった。


 僕らから見れば、レオナルドの体は地面から浮かび、宙を飛んでいるよう。

 さながら()()だ。

 ――なるほど。墓守、魂、鎌……そういう趣旨で統一されているなら、逆に納得できる技だ。


 唐突に変なレオナルドの声が上がる。

 浮遊移動しながら、鎌を振るい続けていたレオナルドが、方向転換しようと試みると『ソウルターゲット』で分裂した魂が体に入ってしまい、転倒する結果を招いたようだ。

 彼の間抜けな声に格闘家の少女が顔をしかめる。


「んあぁ? なにやってんだ、よっ――!」


 彼女は戦闘に集中していたようで、レオナルドの『ソウルターゲット』を目撃していない。木々のなくなった空間を駆け抜け、穴から顔出す鳥頭に拳を入れた。

 リーダーの剣士が自身の速度では間に合わないと判断したのか、レオナルドが狩り損ねた木々を剣で切り倒してくれる。


 僕は矢でダメージ受けた体力を回復薬で満タン状態に戻す。

 挑発効果を得た状態なので、レオナルドから距離を取りつつ声をかけた。


「大丈夫かい」


「あーくそ! 空飛べてたんだよ! 浮いてた方が合ってるか?」


「飛んでたように見えたよ。練習すれば空も飛べるさ」


 体を起こしながらレオナルドは「だよな」と興奮気味に聞き返す。

 他の技を把握しなければ全貌は分からないが、大鎌で攻撃力が控えな以上、他で賄えるジョブだと僕は推測する。

 しかし、慣れるまではサポートは必須だ。それを突けば、僕はレオナルドに上手く取り入れると確信を得た。


「先ほどの切り返し―――空中攻撃で留まれば、上手くいくのではないでしょうか?」


 カサブランカが割り込んで来なければ、僕の気分は心地よく終わったのに。

 彼女はボスをそっちのけて、レオナルドの技に興味を惹いたらしい。カサブランカのアドバイスを耳に入れ、レオナルドも思わず彼女の方に注目した。



 不穏要素を残したまま、銃使いの女性の一撃を以て『ステージクリア』のメッセージが表示された。


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