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ガウェイン


 遂にここまで来た。

 本来なら。

 他プレイヤー達なら、ゆっくり時間をかけて探索をし、楽しむクエストだったが僕達は違う。


 六面道中ステージは砂丘。

 『人魂』や炎の特殊攻撃をする『妖狐』、障害物がない砂丘を駆け回る『火車』など。

 全体的に炎属性の敵ばかりが多く出現。

 水属性の技や攻撃が通りやすいので、メインクエスト内でもレベリングに最適なステージだとオススメされている。


 残念だが、レベリングは後回しだ。

 小雪は水属性の魔石で作製した銃弾で、レオナルド達は水属性を付与した武器で攻撃。

 レオナルドと茜は事前に作製した武器を使い。

 光樹は茜が趣味で作製した水属性を付与した剣を使って、妖怪を倒していく。

 厄介な『火車』は、レオナルドが逆刃鎌の浮遊移動で立ち回り、対処した。


 一番に活躍していたのはキャロルだった。

 僕達の中で水属性の威力が高いのは、キャロルという中々、謎の現象が起きている。

 とは言え、キャロルの体力が低い事もあって、レオナルドのサポートは必須。


 そうして、夏エリアメインクエスト六面ボス『ガウェイン』戦手前の道中ステージまでクリア。


 さて、ガウェイン戦だが……


 通常、大半のプレイヤーは火力でゴリ押す。

 魔法使い系を三、四人ほどパーティに加え、水属性の魔法で集中攻撃。

 接近戦型でも、プレイヤースキルが優れていれば水属性付与の武器で攻撃が通るが、全体攻撃の頻度が高く、接近して来ないガウェインに効果的なダメージは与えられない。


 故に、ソロ討伐は想像つかないレベルだ。

 数少ないガウェインソロ討伐を成し遂げたムサシの動画を見ても、正直、まるで参考にならない。

 簡単に言えば、武士系は接近と遠距離、両方を持ち合わせているから可能だというもの。

 ムサシは基本、スキルを使用しないスタイルだが、ガウェインとバンダースナッチは珍しく使用している。……逆に、使用しないと詰むから致し方無い。


 肝心の僕達は……

 ガウェインで一番厄介なのは、砂丘ステージの為、障害物で攻撃を誤魔化せない事。

 盾兵系がいないうえ、空中戦が可能なのはレオナルドのみ。

 『挑発香水』が効く仕様ならともかく、ガウェインを含めた夏エリアメインクエストボス全員が挑発を無効化するのだ。


 なら、無理矢理レオナルドが生き残って、キャロルと共に倒すのか?

 攻撃の主軸は僕達全員だが、ガウェインの全体攻撃を防ぐ役割を茜が担当する。

 彼女も珍しく、いつにない緊張感を表情で作っている。

 僕は改めて全員に言う。


「今回の『ガウェイン』戦はチームワークが重要です。心してかかりましょう」


 ガウェイン戦の舞台となる砂丘に転移された僕ら。

 すっかり、夕焼けの空模様になっており、青紫の夜と橙の夕空が共存している。

 だが、奇妙な事に、ケイ戦から始まった承認開始形式ではなくなり、通常のイベントが入った。


 妖精『しき』が僕らの前に登場。

 ここまでは通常通り、見慣れた光景だったが、『しき』が半ば苛立った表情で普段とは異なる態度で僕らに言う。


「貴方達、どうしてここに来たヨン。もう貴方達は正式な冒険者じゃなくなったヨン。この近辺は『アーサー』って『ぬらりひょん』が縄張りにしてしまったヨン。つまり、立入禁止エリアだヨン! 一刻も早く立ち去らないと……」


 しかし、彼女が全て喋り切る前に、ムワッとする熱気が僕らに襲い掛かった。

 『しき』も事態を把握するなり「もう知らないヨン!」と消え去る。

 彼方より()()が現れた。

 誤解から誕生したと言われる妖怪『空亡(そらなき)』が、ガウェインに宛がわれた妖怪だ。

 空亡を妖怪と称していいのか、今日に至るまで賛否が絶えないらしいが、今は重要な話ではない。


 上空を移動する巨大な火の玉――の中心にハッキリと人型の影が視認できる。

 手足が炎に包まれ、真っ赤な髪先も炎に燃え、全身は半袖の鎧で包まれた、姿恰好だけは騎士に見える青年。

 彼が『ガウェイン』だ。

 すると、通常通りガウェインは開幕に放つ言葉を口にした。


「アーサー様の脅威を排除する。この先には行かせないぞ」


 姿に似合わず冷酷な宣言をしたガウェイン。

 これが合図だ。

 僕はセットした『薬品一式』を使用。

 レオナルドはキャロルを抱きかかえ逆刃鎌の浮遊移動、小雪はランチャーを構えた。


 ガウェインが上空から急降下。

 全身を包む炎を変化させ、火の鳥のような形態を取ったまま、僕らに突撃する。

 上空で浮遊しているレオナルドは、攻撃を回避しつつ、キャロルに教えた。


「まだ、攻撃するなよ、キャロル。炎の勢いが収まってからだ」


 キャロルが「ぶぶ!」と返事したのが聞こえる一方。

 ガウェインの残した炎の残留が砂丘の上で踊り始めた。踊っているように見えるだけで、意思はないが放置してしまうと、一向に消滅しない。

 ここで、茜が早速スキルを発動。


「『土竜打ち』!」


 単純な土属性の攻撃ではなく、どちらかと言えばエリア内にあるトラップ破壊のスキル。

 面白い事に、ガウェインの残り火はトラップ判定を受けていて。

 『土竜打ち』で相殺する事ができる。

 

 火の鳥形態を終えたガウェイン。

 奴が地上にいる内に、僕はセット済みの『蒸留水一式』を使用しまくり、光樹も『ミネラルレイド』の必殺技『バブルスプラッシュ』で応戦した。

 上空で陣取るレオナルド、に抱えられたキャロルが瓶を開け、凄まじい勢いの水鉄砲をガウェインに向ける。

 小雪が「撃ちます!」の宣言から、ランチャーの弾を的中させた。


 ガウェインが一方的にやられる訳がなく。

 体勢を整えてから、全体攻撃を発動。砂丘全土――正確には僕達が行動できるフィールド全体にガウェインが生み出した火球を降り注ぐ。

 火球の雨が発動する最中で、ガウェインは僕らに接近。炎を纏った手刀、蹴り技を仕掛ける。


 手刀も蹴り技も、命中しただけで痛いが、動作を行った後に炎の斬撃を飛ばす。

 全体攻撃に加え接近戦。

 最悪極まりないコンボだが、僕らは事前に話し合った通りのフォーメーションを形成していた。


 ガウェインの火球の雨が発生した時、全員で集結する。

 優先的に機動が遅い茜の元に、だ。

 全員がバラバラになるより、集まった方がガウェインの接近攻撃の被害を抑えられる。


 こちらに降り注ぐ火球は小雪と僕が撃ち落とす。

 出来る限り、僕が上空に『蒸留水』を投げ、処理していく。

 レオナルドは接近するガウェインと空中戦で渡り合い。キャロルがレオナルドの邪魔にならないように水鉄砲を発動。

 茜がガウェインの振りまく残り火を対処。


 光樹は――?

 また勝手な行動を取っているかと思えば、ちゃっかり時間を教えてくれる。

 

「そろそろ薬品の効果、最初に茜さんが切れますよ。火球の攻撃終わるんは、あと15秒。このペースやと、レオナルドさんのMP尽きるのは30秒後です」


 僕は「分かりました」と礼を告げ、薬品の準備。

 次の攻撃パターンを読み、フォーメーションを組む指示を出す。

 これなら、確実に倒せる。

 光樹という存在や、隠しイベントの横槍が入ったが、功を奏したのは結果論だろう。


 それに……これらは全て『バトルロイヤル』に向けた布石でしかない。

ブクマ登録数422件突破しました!

遂に、次回で夏エリアメインクエスト編は一段落となります。

続きが読みたいと思って頂けましたら、ブクマ・評価の方を是非よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで一気に読んできました。主人公の思考が一般的ではありませんが、作者がそれを認識して描写してるならそれもまたキャラの個性だと思うので楽しく読めてます。 [一言] 最新話まで読んで感想を…
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