表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/315

危機

 

 カサブランカの反射神経の良さは、ステータスの補正ではなく、生粋の類のようだった。

 VRで現実の経験を活かせる事は有名な話。

 VRMMOでは特に、界隈を賑わせるプレイヤーの多くがそうだったりする。

 脳が刺激されることで、プレイヤー自身の中で眠っていた才能が開花した……なんて夢物語をウワサに聞くほどに。


「おや、困りましたね」


 光悦や歓喜の感情もなく。穏やかな表情のまま、淡々とカサブランカは呟いた。


「顔を出す時間が徐々に縮まっているようです。さて、どうしましょうか」


 彼女は本気で困っていない。

 むしろ、状況を楽しみ。どうやって敵を倒そうかと模索していた。


「くっそー! 間に合わない!!」


 格闘家の少女は裂け目を発見し、突撃していくが、拳が届く寸前で鳥の妖怪は裂け目に引っ込み、裂け目も閉じてしまう。


 弓兵と銃使いの女性二人が主軸になる筈が、木々のせいで上手く狙えないようだ。

 動きの遅い鍛冶師と武士の初心者二人は、敵を探し、右往左往している内に頭部を射貫かれて消滅する。

 リーダーの剣士は機動が速い方で、積極的に敵へ向かうが、やはり間に合わない。

 盗賊の女性だが……格闘家の少女と同じく素早い部類なのに、挙動がおかしい。彼女も裂け目に到達する前に、敵が引っ込んでしまうパターンだった。加えて敵からの攻撃も受けてしまう。


「最悪! コイツら動き早すぎるでしょ!! 一面でこんなの出るワケ!?」


「おや? 動きが遅いのは貴方の方では」


 意外にも指摘したのはカサブランカだった。

 余裕気取る彼女を、同じ女性である盗賊は「はあ!?」と苛立った声を出す。構わずカサブランカは言う。


「ゲームによっては所持アイテムを重量に含めるらしいですね。アイテムを沢山抱えているから、動きが鈍いのでは?」


「え―――? う、嘘、ちょっとそれ早く言いなさいよ!?」


「私、アイテムをさほど持ってませんから、気づけませんでした。すみません」


 白々しい謝罪をするカサブランカを無視して、盗賊の女性は僕の方へ近づこうとしていた。

 恐らく、アイテムを代わりに持って欲しいと頼むつもりだろう。

 だが、彼女と僕との距離は大分ある。それに到達する前に、彼女は攻撃を受ける。


 僕の思惑通り。盗賊の女性は死角から矢に射貫かれ、消滅した。

 盗賊は体力が少ない方だ。さっき一撃受けて死ななかっただけ十分と言える。

 いや……レオナルドから貰った装備で、ステータスに補正を受けていたのかもしれない。


 しかし、このままでは全滅は免れない。

 異常なカサブランカを差し引いて、腕の立つ剣士たちでも決定打に踏み込めないとなると……


「レオナルド。まず、周りの木を切って欲しい。そうすれば弓と銃は当てやすくなるはずだ」


「……攻撃はどうする。俺、体力ねえんだよ」


「僕が盾になるよ。体力は多いし、回復アイテムもある。それに――言うほど敵の攻撃力はないみたいだ」


「は? 防御高いおっさんがすぐ死んだじゃねえか」


()()()()()()()だよ。他のプレイヤーが攻撃されてゲームオーバーになったのは、急所の頭部を狙われたから」


 僕は立ち上がると、籠を頭にかぶって周囲を観察する。

 すると、やはり死角から矢が飛び、頭部を狙う。僕が被っていた籠に矢が刺さり防御する形になった。

 レオナルドの驚く声が聞こえる。


「盾兵の彼が倒されたのは()()()()()()()だったからだ。武器でこうして防ぐのは武器の耐久力でダメージを差し引いている。ステータスの防御は僕たちの肉体の数値。背後から沢山攻撃を受けたなら、防御力分ダメージは軽減されていたはずだ」


「そういうことかよ……」


 本来の討伐方法はパーティーの誰かがヘイト役をひきうけ、素早いジョブか銃・弓の遠距離から攻撃する。簡単な連携を求める敵だと分かった。厄介だが、一面のボス攻略の形としては簡単だろう。

 レオナルドも立ち上がり、僕は作製していた『挑発香水』を取りだした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ