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囮作戦


 ルイス達が夏エリアのメインクエスト攻略を行う最中。

 『マギア・シーズン・オンライン』の監視係では、今日もバグやチート等の異常がないかチェック作業が行われている。

 膨大なデータを一つ一つチェックする訳じゃあない。

 異常性ある数値が検知されれば、自動的にピックアップされる。


 なので、プレイヤーからの不具合報告の大半は担当者が業務対応で済まされる案件。

 まあ、ぶっちゃけると嫌がらせの通報や、負けた腹いせにチートだなんだと()()()()()をぶつける類ばかり。

 しかし、一人が突如声を上げた。


「た、大変です! 夏エリアの隠しイベント到達者が現れました!!」


 集中線が描かれそうな勢いに、一同が「なんだってー!!!」な反応を露わにする。

 サービス開始から一ヶ月弱。

 夏エリアの隠しイベントに到達したプレイヤーがいなかった。

 だが、運営関係者の一人が冷静に言う。


「一々、騒ぐほどでもないだろ。この前も、ガレスを発見したプレイヤーはいたんだ」


「え? そうなんですか??」


「全然、騒がれてませんけど……」


「そいつが情報を独占してるんだ。ホラ、データも残ってるぜ」


 記憶映像を再生するとイベントに遭遇したプレイヤーを見るなり「あっ」と関係者の一人が反応した。


「うわ……()()じゃないっすか。この手のイベントに興味ないからって、情報で儲けてるんじゃないですか」


「ありもしない話をしないの。私達の監視で、金銭のやり取りは発生していないのは把握しているでしょ」


「そりゃ、ゲーム内でする訳ないじゃないっすか。現実(リアル)の方で何かやってますって! プロプレイヤーが軒並み『太古の揺り籠』に在籍してるって異常ですよ!!」


「……憶測でものを言うな」


 色々と盛り上がっている中。

 気まずそうに、最初に大声上げた一人が割り込んだ。


「すみません……誤解を招く発言をしてしまい、申し訳ございません。正しくは、隠しイベントの()()()()()に到達したプレイヤーが現れたで……」


「えっ? ちょ!?」


 これには再び一同にどよめきが走った。

 何故なら、未だ情報が出回っていない夏エリアの隠しイベント。その正式ルートは即座に到達しないであろうもので……


「おいおい! 道中にいたガレスとトリスタンを無視して、モルドレッドを追い詰めたとか、一体どこのどいつだよ!?」


 映像に映し出されたプレイヤー・ルイス達を目にし、全員が「こいつらか……」と頭抱えてしまう。


「春エリアに続いて、コイツらがシナリオ関連クリアするって……どうなってるんだよ」


「フラグ回収のプロか?」


「どうやら夏エリアの攻略を急いで、ガレス達を無視したみたいですね」


「ええ……」





 鉱石類をまとったギャラハッド。

 僕の『火炎瓶』で鉱石の鎧の耐久を減らし、周囲の炎が収まったところで茜がハンマーで打ち砕く。

 これでギャラハッドは討伐。ステージクリアのメッセージが表示された。


 次は四面の道中ステージになるのだが……

 僕らが選択する画面には、イベントに直結したエクストラクエストという特別なクエストだけが選択可能だった。

 レオナルドは率直に思った事を尋ねる。


「え。これ、普通のステージは選択できねーの?」


 僕も厭きれながら言う。


「どうやら、そうみたいだね……運営に報告しようにも、直ぐに反映されない。困ったものだよ」


 しかし、小雪がクエスト概要の内容を見て声に出す。


「あ、でもこれ。エクストラクエストをクリアすれば、四面道中ステージもクリアされた事になるみたいですよ」


 クエスト一つで事足りるなら聞こえはいいが、甘くないだろう。

 恐らく、道中ステージ全てを凝縮した長丁場のクエスト。

 万全を期して僕らは、エクストラクエストを受注。


 僕らは四面道中ステージ……の一歩手前。草原が一望できる丘に転移された。

 周囲には、装備を整えたNPCのパーティが十数組ほどいる。

 僕らの背後にも、パーティがいるかもしれないが、それらを確認する間もなくイベントが開始。


 身動きや喋る事もできない状態になった僕らの前に、軍服と思しき恰好の女性がツカツカと歩んでくる。

 上官と思しき彼女から、一方的な話が開始された。


「諸君。近頃、夏の層に上級妖怪の目撃情報が多数あった。そして、先日。上級の『ぬらりひょん』が確認された。これは由々しき事態である。『ぬらりひょん』は妖怪のみならず人間にも影響を及ぼす危険因子だ」


 人間もか。

 本来は人の家に勝手にあがりこむ、だとか言われている妖怪だ。

 未だ、アーサーの情報は少ないものの。マザーグースと違って和解は無用、か。

 女性の話は続けられる。


「今日、集ったのは上級妖怪討伐の達人(エキスパート)ばかりだが。油断はするな。相手は『ぬらりひょん』だ」


 号令と共に、精鋭部隊は各自行動を取っていく中。

 取り残される僕らに、女性は告げた。


「お前たちには()()()草原を通過して貰う。ここから先は妖怪の魔窟。人の監視下にない特別区だ。被害を最小限に抑えつつ精鋭部隊と合流を果たせ」


 成程……僕は理解する。


 状況は把握できる。

 『ぬらりひょん』の能力は大雑把に妖怪ないし人間を洗脳する類と想定しよう。

 上級妖怪討伐に精鋭部隊を派遣まではいいが、僕らは足手まといになる筈。


 にも関わらず。

 僕らにわざわざ視界の開けた草原を突っ走れなんて無謀な命令を下すのは、『ぬらりひょん』に洗脳された妖怪達を惹きつけろという意味。

 つまり、ヘイト役だ。


 流石にこれはガレス達は引っ掛からないだろう、と思いたい。

 僕らが相手するのが雑魚妖怪であれば、話が大分違うのだから。


ブクマ数409件突破しました!

夏エリアの隠しイベントがあまり認知されていないのは、最初のガレスの出現確率が低い事が理由になってます。

続きが読みたいと思って頂けましたら、ブクマ・評価の方を是非よろしくお願いします。

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