表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/315

終曲


 残されたレオナルドとラザール(あと白兎)、戦闘中のオーエンやカサブランカとムサシにも、ルイスが発動させた『火炎瓶』の大爆発、その爆風が襲い掛かっていた。

 地面に捨てた『火炎瓶』が全て連鎖的に爆発した結果。風圧だけで、レオナルドとラザールは吹き飛ばされそうになる。


 ラザールが「ヤベェ!」と大声あげるのは仕方なかった。

 レオナルドは『ソウルターゲット』を用いて、強引に留まろうと抵抗。ラザールは今、必死にレオナルドの体を掴む他ない。


 一方、オーエンは体が吹き飛んだ矢先、カサブランカの糸が絡まる。

 オーエンの体がカサブランカを引きずるような形となった。

 オーエンが行動に移る寸前、爆風の吹き飛びを利用して急接近したムサシ。


「死を届けに来たぞ。印鑑を押せ(首を出せ)


 ムサシがオーエンの首に振り下ろしたカタナの刃。

 刹那。

 カサブランカも体勢を整え、オーエンの()()()()()()。単に解いたのではない。糸とオーエンの体がすれあうような形で、引っ張り、解いたのだ。


 双方、ほぼ同時に首を裂いたよう。

 ゆったりと消滅していくオーエンの体。一体、どちらがトドメを刺したのか。

 風圧が収まったところで。

 レオナルドは『ソウルサーチ』で周囲を確認してみる。


 レオナルドとラザール、ムサシに、カサブランカ。ついでに白兎。

 これらの魂だけが残されている。

 幾度、待ってもオーエンらしい攻撃や魂も現れなければ。

 空間の向こう側に、一筋の光が差し込む。もしかしなくても脱出口……ゴールだ。


 釈然としない様子でラザールが尋ねた。


「……終わったぁ? ゲームクリア??」


 あまりの呆気なさに拍子抜けているのだろう。レオナルドも「うん」と頷く。

 臨戦態勢から気力を抜けたようで、白兎は浮遊状態から地面に降り立つ。それから顔を洗うような仕草をした。

 カサブランカは、ドレスから元のシンプルな姿恰好に戻る。満足気に彼女は語った。


「無事、殺せたので良しとしましょうか。今の、貴方は寸前のところで間に合っていませんでしたよね」


 カサブランカに尋ねられたムサシは「知らん」と素っ気ない返事。

 ただ、一人。

 レオナルドを除いては。


 真っ直ぐな視線を向けながら、レオナルドは『ソウルターゲット』で急接近。

 ()()()()()()()()()()()()()

 これには、ムサシも目を見開いた。ラザールも、白兎ごしに見ていたトムも。


 『カサブランカ』は本気でレオナルドが攻撃をしてくるとは思わなかったのだろう。

 振り返った表情が驚きを隠せないもので。

 だけど、満更でもない、不気味に笑みを浮かべ。

 姿が一変したら、()()()()()()()がニタニタ笑って本性を現す。


「ふっくっくっくっくっ! おやおや、どこで吾輩だと気づいたのかね。我ながら即興にしては上出来な演技だと自信あったのだがね?」


()()()()()()()()()()()


「んん?」


「あー……じゃあ、別の視点から説明するよ。カサブランカは弱い奴には興味ないんだ。殺さない。ジャバウォックの時にも、言ってたんだ」



――ああ、やっぱり()()()()はそういう傾向ですか。特殊系統と言いますか、純粋な真っ向勝負をしないだろうとは『オーエン』で薄々感じていましたが



 カサブランカは戦闘狂だが、単純に殺したいだけの殺人者ではない。

 散々、オーエンに挑発したカサブランカが、オーエンを弱いと判断しながらも積極的に殺そうとしてたのに、レオナルドは違和感を覚えた。

 無論、挑発に乗ったオーエンにも疑念を抱いていたが。一番の決め手は()()()()()()をカサブランカが()()()とした事。


 オーエンが粒子化して消失する中、レオナルドが語り続ける。


「確証は最後までなかった。ほら『本物のお前』と偽物のカサブランカに魂があったり、ルイスの『火炎瓶』の爆風でカサブランカが吹き飛んだ事とか。でも落ち着いて考えたら、答えは分かった」


 冷静を取り戻し、仏頂面でムサシが言う。


()()()()()()()()()()()()()。最初、私達と会った時がそうだ。あれは再現でも何でもない。本体だ。レオナルドの言葉に反応した」


 ラザールも思い出し「あ!」を大声上げる。

 思わず、レオナルドが口にした『()()()()』の名に反応したアレは、紛れもなく本物のオーエンだったと。

 オーエンに関しては、魂の有り無しの判別は無意味だったのだ。

 レオナルドは最後の謎も解き明かす。


「最初、偽物のカサブランカは『本物のお前』じゃなかった。だから、ルイスの『火炎瓶』食らっても、ゲームクリアにならなかった。入れ替わったのは、さっき大爆発のどさくさ。ムサシの目も誤魔化すには、そこしかない」


 真剣に語り終えたレオナルドを、ゲラゲラと嘲笑うオーエン。

 体が消失し、ふと見渡せば周囲の空間も崩落していく。

 頭部だけ残ったオーエンは、かつてないほど大爆笑しながらレオナルドに言い放った。


「それで()()()()()()()()()()()()! 本気か? ふっははははは!!!」


 目と口だけ残しつつ、オーエンは言い残す。


「まるで、吾輩の父上のようだ。似た者同士で気が合った訳か! あっははははっは!!」


 神隠しの妖怪が消え去った。

 レオナルド達の周囲は、暖色系に染まった葉をつける森となっている。

 彼らがいる気候は、肌寒さを感じる『秋』。

 そう、神隠しから解放されて移動した場所は、レオナルドやルイスがまだ知らない『秋の層』だった。


ブクマ数258突破しました!

評価をしてくださった方もありがとうございます!!

タイトル通り、イベントは終わり。エピローグ的な話をし、春エリアは終了となります。

次章の夏エリアが読みたいと思って頂けましたら、ブクマ・評価の方を是非よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ