裏方
運営視点の話になります。今までに比べ短めです。
『マギア・シーズン・オンライン』の実質二回目となるイベント。
裏方では絶賛、運営がイベント内でバグ等の不測の事態に対処できるよう人員が配属されている。
基本的に、運営側もバーチャル空間にてアバターを越しでシステム管理を行っていた。
そして、運営内にも担当部署があり、今回一悶着が発生しているのは『イベント班』。
バトルロイヤル然り。
イベント限定のダンジョン、ギミック、パワーバランスを考慮したイベント限定装備、シナリオなどなど。
プレイヤーを盛り上げる為に尽くしている部署だ。
……なのだが。
今回に関しては問題が多すぎる。
現在、イベントの真っ最中にも関わらず、関係者を緊急招集されていた。
プレイヤーのMPKやアイドルファンの民度。
このまま、予定通りイベント終了したところで運営側にもMPKの件で不満があるだろうと予想され。
不満を対処しようものなら、アイドルファンの処遇はないのかと新たな不満が爆発する。
「も~! どうしたらいいんですか!! これ!」
バーチャル空間で各々自由なアバターを着た『イベント班』の面々。
その一人、猫のアバターが嘆く。
無論、他の『イベント班』からも色々とアイディアが出されるが、どれも一長一短。
建前上。
やはりMPKなど非協力的な事をしたプレイヤーには処罰を与えるべきだとか。
PKありきのゲームなのに、イベント内のMPKで処罰なんて。それだとPKも禁止しろと声があがる。
という、議論内容はどっちつかず。
残酷にも時間は過ぎ、プレイヤーも着々と最深部に到着していく。
「やはり、MPKを行ったプレイヤーには処罰を与えましょうよ! アク禁はやり過ぎなので、イベントで獲得したアイテムとクリア報酬没収で……」
「もういい加減、アイドルファン層をどうにかしましょう! 今度からはIPアドレスでアク禁するしかないですよ!!」
「簡単に言うなよ……」
「このまま、お咎めなしは不味いですよ!」
「イベント概要にはMPK等の妨害行為でのペナルティは記載されていません! 確実に不満爆発……最悪ユーザー離れて、サービス終了……」
「流石に、それは言い過ぎ」
「いや、ありえなくねぇから、こうして意見出し合ってんだろ」
「班長! もう時間がありません!!」
最終的な判断は『イベント班』の班長として配属された人物。
班長は個性的なアバター達とは違い、赤のホログラム状で無機質なアバターだった。
動作でホログラムが形を変化させるだけで、表情は読み取れない。
班長から女性の声で作業中のメンバーに尋ねる。
慌ただしく討論続けるメンバーと違い、彼女は冷静だった。
「ジャバウォックに搭載された例のシステム……起動しているか。プレイヤーの様子はどうだ」
作業中のメンバーは皆、揃って首を横に振る。
「駄目です。起動しているにはしてますが……」
「この人数を処理できないか、あるいは威力が足りないかですね。次回のアップデートには改善したいと思いますが……」
班長は彼らの答えを聞き、致し方ない決断を下した。
「……作業班。最終ステージで、春エリアの妖怪を全て投入にしろ。まだデータを書き換えられるな」
「え!? マジっすか」
「全てって……要は『バンダースナッチ』と『マザーグース』もですよね!? てか、メインクエスト用じゃない本体ですと、クリアしにくく……」
困惑するメンバーに対し、班長も承知の上だった。
「ああ、そうだ。メインクエストよりも強化されたAIに能力。初心者ではまず勝てない。経験あるプレイヤーは確実に苦戦する。ムサシやカサブランカ辺りは互角に渡り合える」
「いや……現状、渡り合えるのはムサシ辺りしかいないですよ」
「それでいい。全員脱落させろ」
「全員って……あ、そういう」
メンバーも納得してしまう。
不祥事ばかりのイベント。様々な問題ばかりを公平に解消するには、全員を脱落させるということ。
協力し合わなければ、クリアできなかったと誤認させる。
強引かつ理不尽だが。イベントを盛り上げるには、悪くはない。
むしろ、それで解決されるなら、構わない勢いでメンバーも班長の指示に従い。システムを組み替えた。
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いよいよクライマックスなので気合いれていきます!!