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合流


 僕が知っている――世間一般的な『白崎竜司』のイメージは、少女漫画に登場しそうな俺様系王子様キャラで、アイドルとしての立ち振る舞いもそれに似合ったもの。

 なのだが……

 僕らが白崎竜司に声かけようとしない中、真っ先にレオナルドが話しかけた。


「俺はレオナルド。えっと、こっちからルイスにホノカ、ラザールとムサシな」


 手短に僕たちの紹介までやってくれるレオナルド。

 すると、竜司は間の抜けた雰囲気で言う。


「俺は白崎竜司だ。そこの彼――ムサシは、噂に聞く凄腕のプレイヤーなのか?」


 興味ない様子のムサシの代わりに、レオナルドが頷く。


「ムサシは凄い強いぜ。ああでも、ホノカ達もみんな強いぞ。俺は大したことないけどな」


「ああ、そうなのか! すみません。実は俺の知り合いの睦が、貴方のファンで。彼と握手をして貰えませんか」


 キャラに似合わない対応に僕も驚きを隠せなかったが。

 対するムサシは変わらない仏頂面で「ここに睦とやらはいないのか」と返事をする。

 竜司は申し訳ない様子で「もう脱落してしまったんです」と告げた。

 最初、僕らを油断させようと似合わない態度を取っているのでは。

 そう警戒心はあったが……


 扉の先に広がっていた暖炉の部屋。

 そこに置かれている鏡を通り抜けて、僕らは鏡の世界に入っていく。

 道中、ラザールと竜司は、こんな会話を繰り広げる。


「実は、睦がジョブを変えたいと訴えているから、俺も変えようと思っている。盾で滑るのと箒で飛ぶのとは、どちらが早いんだ?」


「あぁ!? 箒に決まってんだろ、舐めてんのか! こちとら魔法で加速ブーストかけられるんだからよ!!」


「それを聞くと、魔法使いも良さそうだな」


「ハイスピードに浸りたきゃ絶対魔法使いにしとけ!」


 『鏡の国のアリス』に登場する『名無しの森』をモチーフにしたエリアでは、拾うアイテム全てが識別不明の状態になっている。

 ここでは頻繁に妖怪が湧いて出て来る為、戦闘をムサシ達に任せ、レオナルドが白兎を抱え保護する。

 鼻をヒクつかせ、レオナルドの腕の中で大人しくする白兎。

 竜司は、それに関心を抱いた。


「凄いな。俺も触ろうとしたんだが、無理だったんだ。撫でても大丈夫か? レオナルド」


「おう。平気だろ」


「動物に触れあうのは小学生以来だな。俺は飼育委員だったんだ」


「へ~……俺は飼育委員じゃなかったけど。飼育委員の奴が面倒くさくなったの、俺に押し付けて、俺がずっと世話してたぜ」


 平然と変な事を抜かすレオナルドを心配そうに見つめる竜司は、白兎を撫でている。

 なんだか、アホっぽい。

 初対面相手に抱く感想ではないが、本当に王子様キャラが崩壊した穏やかな人格だった。

 ギャップの格差に、妖怪を片付け終えたホノカも突っ込む。


「なんか、アイドルやってる時と違くねえか? お前」


 竜司は「ああ」と顔を上げて答えた。


「マネージャーから、ああいう演技をした方が人気が出ると指示されたからやっているだけだ。今回のような初対面の人と協力し合う状況だと、あの演技で上手く交流できる自信がないんだ」


 微笑んで弁解する竜司。この姿をファンが見たら、なんと反応するだろうか。

 僕らの反応に、竜司が申し訳なく謝罪した。


「俺があのキャラで対応するのを期待していたなら、すまなかった。だが、あれは俺のキャラを理解しているファン相手に許されるだけであって、初対面の相手にするべき態度ではないと思う。いや、これも俺の勝手な解釈に過ぎないが……」


 変にズレているのは、なんだか……レオナルドと似ているな、コイツ。

 要は、根は善人という事か。

 僕がフォローするように、竜司に告げた。


「いえ、こちらこそ気を遣って下さってありがとうございます。僕達も有名人相手に緊張してしまっていたんです」


「そうか……今は一緒のパーティを組んでいる仲間だ。遠慮はしなくて構わない」


 そこを抜けると、マザーグースの一つに当てはまる『トゥイードルダムとトゥイードルディー』の兄弟らしき二人が登場するのだが。

 白兎が立ち止まり、木々から飛び出してきたのは――


 奇抜な赤ドレスを着た赤の長髪を持つ女性。彼女はこれまた派手な赤で塗装されたバイクを立ち乗り。

 もう一人、全身が純白そのもの、白ドレスを着た白のショートボブヘアの女性。彼女は荷車に腰かけているが、荷車は地面から突如生えた腕で運ばれていた。


 赤と白。

 『鏡の国のアリス』に登場する二人の()()をモチーフにしたと思しき存在は、各々の乗り物に騎乗し、僕らの前を駆けて行った。

 彼女らは攻撃せず、向かい側にある小川を機体をジャンプさせ、越える。


 これに反応したのは暴走族のラザールだった。


「んだぁ、アイツら! 俺に喧嘩売ってんだな、あの走り!!」


 だが、ラザールが追跡しようとした矢先。僕たち全員の身動きは止まった。


『イベントをお楽しみの皆様にお知らせします』


『脱落者が多数発生した為、パーティを再結成させていただきます』


 ()()

 最初の再結成から、まだ十分も経過していない……まさか。いや、そのまさかはありえる。

 新たにメンバーが加わる。今度は誰だと警戒すると。

 竜司とは別の意味で、白さを際立てる女性――カサブランカが現れた。


「カサブランカ!?」


 これにはレオナルドが声をあげて、ホノカとムサシは露骨に眉間をしわ寄せた。

 ラザールは、個人プレイヤーに興味ないのだろう。彼女に対するリアクションは薄い。むしろ、レオナルドが歓喜あげたのに、驚いた様子だった。

 竜司も、カサブランカというプレイヤーを知らないのだろう。普通に話しかける。


「俺は白崎竜司と言います。貴方、お一人ですか?」


 カサブランカは興味深く周囲を見渡し、僕やレオナルド達を把握した後。

 大した感情もない微笑を浮かべ、素っ気なく答える。


「ええ。一緒にいた方々は()()()()()()()


 ………………。


「あ、間違えました。全員死んでしまいました。あれは事故です。不運な事故でした。私が夢中になっていたら、兎もどこかに行ってしまって……困っていた所なんです」


 コイツ……

 ああ、わかったぞ。僕らの知らない、別パーティで何が起きているのか。

 間違いなく、()()()()()()()()()()奴らが何人もいるんだ。

 僕らが沈黙する中。レオナルドは「そっか」とカサブランカの言い分を信じる。


「事故なら仕方ないな。それより、お前が無事で良かったよ」


「………」


「ほら。兎もちゃんといる。俺が兎を見守ってるから、存分に戦っていいぞ」


 純粋無垢なレオナルドの態度と、彼の腕に抱かれて澄ました顔をする白兎。

 双方を眺めて、カサブランカは異様な沈黙をしていた。

 彼女は、レオナルドを弱者と判断し関心を失ったようだが、これで判断が間違っていたと理解したのだろうか。


皆様、感想・誤字報告・評価・ブクマありがとうございます。

ブクマ数が225件突破しました!

また評価して下さった方も、ありがとうございます。

イベントも中盤過ぎた頃合いです。終盤にかけて気を引き締めていきます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 即席にも関わらず、イベント開始時のパーティーはバランスよかったですね。 前衛2人、後衛1人、回復・支援1人、ウサギ担当兼遊撃1人。 ここに2人新たに加わってどうなるのか楽しみです。 [一…
[一言] ん・・・ 初めて興味出てきた・・・
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