ステータスポイント2
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「さっきから何してんだ?」
レオナルドが僕の手元を覗き込んできた。僕は普通に答える。
「ステータスポイントをどうしようかと、考えていたんです」
レオナルドは、僕をじろじろ眺めてから気まずく言った。
「……普通に話したらどうだよ」
「普通?」
「敬語はやめろって。多分、お前と俺。同い年な気がする」
何を根拠にそう思ったのだろう。
僕はレオナルドの方が年上に感じる。大学生……アルバイトで稼いでいる二十代くらいかな。
レオナルドが不快を覚えないならいいのだろうか。「本当に?」と僕は確認して、話を続けた。
「レオナルドはステータスが平均なんだ。中途半端って評価されそうだけど、僕は色んなプレイスタイルができるジョブだと思うよ」
「……平均? へえ」
「やっぱり興味ないんだね」
「いや、そんなんじゃ」
「ううん。分かってたよ。君、どうせ誰かから誘われて仕方なくで始めたんだろう?」
僕の問いに、レオナルドは驚いていた。図星だったのだろう。戸惑いながら「まあ」と答える。
彼が興味ない事を深く掘り下げても仕方ない。
話題を切り替えよう。
「皆のステータスを比較して気づいたんだ。INTはどのジョブも同じ数値で伸びていく。これってどういう事だと思う?」
「INT? あー……そもそも、INTって何??」
「『Intelligence』の略。知能とか知性を意味するよ」
「……ようは賢さって奴? だったらアレ。技とか覚えるもんじゃね」
これは意外だった。彼は聡さを秘めていたらしい。少なくとも思考を疎かにする人間ではない。
僕も言葉に弾みが出る。
「僕もそう思ったところさ。でも、この手のゲームだとINTは魔法攻撃の数値に充てられているのが普通だ」
「ん? INTって上げられねーの??」
「上げられるよ。魔法使いの人もINTに極振りしてる。ホラ」
僕はステータス表示を出して、魔法使いのステータスを指さす。INTの数値は100を超えている。
実際に、彼女は様々な魔法を試していた。
魔法の威力は分からない。僕たちの視点で具体的なダメージ数は表示されない。数値を把握できるのは、魔法使いの彼女だけ。
ただ……彼女は最初の振り分けの時に、INTへ極振りした為、数多の魔法をINTで会得したと気づいていない可能性が高い。
本題はそこじゃない。僕は話を続ける。
「僕が試してみたいのはINTを上げることで得られるものだ。INTは自然と上がっていくから、一定のレベルで大体のジョブは同じように技を得られる」
「あー……INTあげねーと取れない技があんのか?」
「分からないから試そうと思うんだ。僕も君と同じで興味本位で始めたからね。失敗したって構わない」
クエストをクリアし、集会所に戻って来た僕ら。
リーダーを務めていた剣士の彼が、次のクエスト内容に反応した。
「お、次が一面のボス戦だってさ」
すると、他のパーティのプレイヤーが声かけてきた。
「一面のボス、無茶苦茶強いんだよ! クリアしてる奴、今んとこいねぇんだぜ」
周囲の様子を見渡してみると、確かに作戦会議のようなものをするパーティが多い。
レベルを上げる為、もう一度クリアした場所へ向かう者が後を絶えない。
僕たちもそこそこレベルを上げたが、それでも足りない気にさせる。
慣れたプレイヤーである格闘家の少女は「めんどくせー系だな」と嫌気をさしていた。
格闘家の少女のような実力者もいる界隈で、単純な強さで苦戦は強いられないだろう。
攻略にテクニックが要求される敵か…
剣士の彼は僕らに、ステータスの割り振りなどの準備や戦闘の振り返りをしようと提案した。
正しい判断だ。
前線で戦っていた彼らが主力になる。連携も必須になるなら、当然のこと。
集会所の広間にあるテーブル席に腰かけ、各々が話し合う中。
僕は計画通りにステータスポイントを割り振る。
ルイス <薬剤師>
Lv8
HP:450/450
MP:-
【ATK】5
【DEF】5
【INT】29
【STR】19
【VIT】45
【DEX】24
【AGI】19
これが現在のステータス。
ポイントは無振り。ATKとDEFには武器と防具の補正がある。
一先ず……本来の上限レベルで獲得可能なINT113を目安にして、71入れて100にしてみよう。
ステータス数値を100に合わせ、決定を押した瞬間。
[調合リストに加速剤が追加されました]
[集中ドリンクが追加されました]
[耐久薬が追加されました]
[挑発香水が追加されました]
[麻痺粉末が追加されました]
などなど、他にもあるが大量のメッセージが一気に表示される。
「お~すげー増えたじゃん」
僕の手元を眺めていたレオナルドが静かに感心していた。
彼に頷いて、リストをスクロールしつつ言う。
「使えそうなものだけ作っておこうかな」
「あれ。ポイント全部ぶっこまねえの」
レオナルドの指摘は、失望ではなく残念そうなリアクションだった。
チラと彼の表情を伺って思う。僕はレオナルドは成人近いと感じているが、子供っぽい感性を抱く。
実年齢がアバターの外見と異なるケースは、大いにあるが。
ノリのテンションは面白半分ではなく真剣で。純粋かつ控えめなものだ。
「全部。そうだね。僕の勘は当たってたから、やってみようか」
僕はレオナルドに合わせて乗った。
レオナルドも、興味津々でどうなるか見守っているものだから、僕は内心面白くて堪らなかった。
レベルアップで獲得したのも含むと、INTは150になる。
ここまで上げたが、得られた新たな薬は『魔力水』と言うMP回復薬のみ。
代わりに、新たな要素を発見した。
[調合方法:分量調節を取得しました]