喉がチクチクする
(喉がチクチクする……)
水の飲めない授業中、喉が渇いてるのかチクチクとする。
大概は水とかを飲んだりしたら治るけど、授業中だとその簡単な処置すらもとれない。
こういう時は、飲み物ぐらい自由に飲ませろって思うけど、それを許したらまぁ空気読めない連中が好き勝手するんだろうなってのは分かる。
休み時間まであと32分。
普通なら大した事のない時間だけど、こうなってる以上は果てしなく遠く感じる時間。
32分もこれを我慢できるかって話。
机に仕込んでるのはミ○キーママの味だから唾液を出すぐらいにしか役に立たないというか、下手したら余計に悪化する時もあったり。
ミ○キーを噛んで細かくしたのを呑み込んでみる手もあるけど、この状態で個体を呑むとかイヤだ。
のど飴があればいいんだけど、生憎と鞄にあっても仕込み箱にはない。
とは言っても、多少唾を呑み込んでも和らぎすらしない。
じゃあ、私が何をするべきか。
①授業とかを聞くのを諦めて妄想トリップする。
意識を喉から逸らす意味合い的には有効だけど、この存在感溢れて零れてるチクチクを無視出来る程、私の精神は太くないし、妄想スキルも高くない。
②頬か舌を嚙切って、流れた血で喉を癒す。
論外。
吸血鬼じゃないんだから血で喉を癒せるわけあるかとか、自分の血でも口内接種は危ないとか、そもそもチクチク以上の大参事になるとかあるけど、そもそもチクチクで口内を嚙切れるほどに痛みを我慢できるかってのがあるよね。
③思いっきり深呼吸して空気のパワーに期待する。
余計にチクチクするからアウト。少なくとも、人の密集率が高くて埃が沢山浮いてそうな場所でやる解決策じゃあない。
アルプスの草原とか山とかみたいな澄んだ空気が一杯ありそうな場所なら出来そうな気もするけど。
④どっかを抓ったりして、その痛みでチクチクを誤魔化す。
②の策よりかはマトモだし、出来そうな、出来なさそうな微妙なトコだけど、まぁ普通はやらないよねって感じの。
忍者とかじゃないんだから自傷とかは出来るだけ避けたい。
⑤只管に口を動かして唾液の分泌を促進して只管に飲み込む。
真っ当っていったらそうかもだけど、どれだけやったらチクチクが治まるのか見当もつかないし、現実的ではないね。
(残り時間、30分)
長い、ひたすらに長い。
それに我慢の限界もそろそろ近い。
チクチクをどうするか、私の決断が迫られてる……
どうする、どうす私?
私は――――
「先生、トイレに行ってきていいですか?」
長期の地獄より一時の恥。
先生の許可を得て教室の外に出ると、トイレではなく冷水器が置かれた水飲み場へと足を運ぶ。
ペダル部分を踏めば噴水部から水が出てくる。
幾らでも出てくるその水に口を付けて、チクチクとしている喉を癒していく。
冷水器の名前の割には温い微妙な水だけど、今はとっても助かる。
「ふぅ……」
水を飲んで喉のチクチクも感じなくなった。
これでまた授業もまともに聞けるようになるだろう。
(次からはのど飴も仕込んでおこう)