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005:再現の限界

さて、主人公に仲間が出来て、固有の力の使い方が解ってきたようです。

「いくつか質問があるんだが、良いか?」


 もう、何でも聞いてくれよ。気持ち的には全裸だ。

空気も、物凄い緊張感からの弛緩で、振り幅が大きすぎて「どうにでもして!」という気分である。



「順序として、”開発環境の充実”が最優先だと思うが、どうか?」

「”理想の開発環境”はどんなイメージか?」

「”タブレット”だけじゃ無く”PCかWSに相当する物”が有る方が良くないか?」


おおう。アニキ、頼りになるよ。

やぱり、俺以外の視点は重要だと痛感した。

俺は”タブレット”の中でのアプリ開発を考えていたが、どうせなら”魔法駆動のPC”とか”魔法駆動のWS”を準備した方が良いのは間違い無い。


「私の”回復”が再現出来るのなら、私が”回復”の上位魔法を使えるようになれば、その上位魔法も再現出来ますよね?」


確かにその通り。

正直、俺が心配だったのは、”俺に魔法を盗まれる”と勘違いされる事と、”俺は何でも出来る万能”だと勘違いされる事だったのだが、これは杞憂に終わった。

俺は「開発出来る」が「まるっきりコピー出来る」訳じゃ無い。

「手順」と「期間」が必要で、尚且つ「試験」を行わなければ、とてもじゃないが常用出来ない。

「ここを理解してくれるパーティ」ってのは、理想値で間違い無い。


「底上げは可能?例えば従来のライブラリに何か追加するとか、逆に何かの無駄を省くとか、個人向けにカスタマイズするとか。」


その発想は無かった。

「俺が作った魔法アプリ」を「他の誰かが実行する」とか、「誰かの魔法にハッキングを掛ける」とか、俺一人じゃ無理。協力者必須。


「詠唱は仕方が無いとして、一度の詠唱で複数回の魔法行使を可能に出来ない?」


シェルか?バッチか?

アプローチは複数思いつくが、実行する手段が、現状では足りない。


とりあえずの回答は、

「アニ・・・じゃない、トシ。その案は全て飲む方向で。但し、期間は要相談。」

「サクヤの発想は有り難い。サクヤの”回復”に限らず、みんな自分が使える魔法を増やして、俺に見せてくれ。」

「ユイの案は、トシの提案が実現出来た、その後になると思うけど、視野には入れる。」

「マサミちゃんの案は、ユイの案の、更にその先。現状じゃ道具が足りない。でも、視野には入れる。」


「物凄く大変で、しかも”道具から開発”とか、本来はチームでやるような話だけど、このパーティと俺の生き残りの為に、俺は全てやってみせる。」


「・・・だけど、”すぐに”とか”今”とか、そういうのは一切無視するから、そのつもりで。」

「一応断っておくけど、多分俺が再現を意図して作った魔法は、本物には劣る。何故なら試験と最適化において、属性ライブラリには敵わないから。」


しかしこれは・・・都合が良すぎるな。

何かで「お返し」を考えるべきかも知れない。

例えば、アニキ以外には「美容系」とか。

なーに。どうせ作るんだ。今まで無かった系統の結果が有っても、世界以外が困らないなら、俺は自重しないぞ。



----------


 個人差がある事は解っていたし、俺に”薄気味悪い”と感じさせた”ギフト”の”空白”部分。

アレの、使い方というか、利用方法が判明した。


流れとしては、「”タブレット”から”PC起動”ってどうよ?」という発想だった。

俺には属性ライブラリは使えないし、無属性ライブラリは”タブレット”の中だ。

そして、最大の問題点として、「一々アイコン作るのが面倒」と考え、部分デバッグ段階のアプリをアイコン無しで起動出来ないか色々試行錯誤した結果、”ギフト”の空欄に”名前だけ定義して放り込む”という、所謂PCのショートカット的な方法が使える事が解った。


 少々納得いかない部分は有るのだが、「俺のアプリは”無属性ライブラリ”扱い」と仮定すると納得出来る範疇に収まる。

要は「俺が手を入れた」なら、”ギフト”として使えるという事になる。

まあ、俺が作った道具を、俺が便利に使える訳だから、結果に文句は無い。

だがやはり”俺だけ別仕様”だし、頑として”世界が俺に無関心”だとよく解る。


俺には出来ない事も多いが、俺にだけ制限がかかっていない事も多いのだ。


これでよく解った。便利な物は、裏ワザだろうがハッキングだろうが、絶対に自重しない。


何故なら、俺が”ギフト”の”ショートカット化”についてパーティ内で愚痴った時、


トシには、

「人には向き不向きがあり、これはその範疇。」

と諭され、


サクヤには、

「詠唱無しって凄いんだよ!」

と羨ましがられ、


ユイには、

「開発期間の短縮は喜ばしい事。」

と一刀両断され、


マサミちゃんには、

「視点を変えると”贅沢な悩み”か”自慢”に聞こえるから気をつけなさいな。」

と注意を受けた。


全てに反論が通用せず、しかも不承不承だが納得も出来る。


このモヤッとする、「納得出来るが故に、その事に納得がいかない」ような、何とも言えない気分だけは、俺が飲み込むべき理不尽さなんじゃないかと思う。


・・・しかも、確かに開発速度は劇的に上がるんだよ。

操作しないで実行可能なんだよ。

何なんだよ。



----------


 ちなみに俺が開発に明け暮れているかのように見える期間、俺以外のメンバーは、座学と実習を受けていた。

先にパーティーを組ませ、役割分担を決定し、その役割の方向性を伸ばす、という順序でカリキュラムが組まれているそうな。


とりあえず、

・近接攻撃:ユイ

・近接防御:トシ

・斥候:マサミちゃん

・回復:サクヤ

・遊撃:タクト

という形で申請してあるらしい。


・・・遊撃。

いや、俺の場合”何処にも分類出来ないだけ”だよな?

まさか”開発”とか”解析”とは書けないだろう、その事は解るし、下手に「遠隔攻撃」とか書かれて、その座学に放り込まれたら俺が困る。


しかし、解る事と、納得できることとの差を実感した。


こっちの方向でも、”俺だけ別仕様”らしい。

これはどうにもならん。


本来のカリキュラムでは、2ヶ月目からは「パーティによる連携訓練」になっている事が判明している。

俺はそれまでに、「連携に加われる何か」を準備しなければならない。


拙くて良い。

これは甘えでは無く、「何処のパーティでもまだ拙い」事と、「そもそもの期間の短さ」に帰結する。

とりあえず俺は、例の”壁”と”回復”と”加重”のうち、どれかが使えれば良しとする事にした。


何故なら、俺の開発用リソースは、開発用機材の開発に多く割かれているからだ。



----------


 今度はパーティのメンバーにも参加してもう形で”タブレット”を弄り回した結果、”アナライザ”アプリの使い方が解った。

”タブレット”のレンズっぽい物は、やはりレンズ扱いで、”魔法行使の開始から終了まで”を動画撮影のように撮影範囲に収めると、逆アセンブルをかけたみたいに”無属性扱いのオペランドの山”が出てきた。

閲覧するだけで死ねる。この時、ラインエディタの限界を実感したと同時に、俺にも”使えるチート”が有る!と思った事はナイショにしておく。


この解析で、この世界の魔法は、

1.思考として、使う魔法を指定し、魔力の準備を行う。

2.詠唱で励起する

3.名称の呼称で発現する

という順序が存在し、それが”属性ライブラリ”に組み込まれている事が解った。


この事から、”召喚”時に”頭の中に勝手に色々書き込まれた”のではなく、”使っていなかった精神の外部接続用I/Fに外付けで魔法関連の何かを接続された”と仮定出来る。

この仮定は精神衛生上、受けが良かった。

誰だって、”勝手に脳に何か書き込まれた”とは考えたくないだろう?

「”無属性ライブラリ”も”属性ライブラリ”も、外付けHDDみたいな物だ」と俺が断言した時の、パーティメンバーの安堵顔が忘れられない。

同時に、”俺の不具合はこの部分かも知れない”と推論を進めた。



更に踏み込んで、人間側の魔力リソースが許す限りにおいて、


>1.思考として使う魔法を指定し、魔力の準備を行う。

に介入して、複数分を準備、


>2.詠唱で励起する

に介入して、ここでも複数分に相当する詠唱を準備し、


>3.名称の呼称で発現する

複数同時起動の呼称を別途準備する。


これで、”連射が可能”になりそうな気がしている。


 実用まで持って行くには、2と3の間に、マルチ対応の自動ロックオン機能を追加するなり、元々存在するライブラリを参照するなりすれば良いだろう。

多分、各属性ライブラリ毎に、”マルチ対応”部分と”自動ロックオン機能”は存在するとみている。

問題は、それを、どうやって綺麗に切り出し、俺に都合良く改変し、俺の自作ライブラリにねじ込むかの方だ。


他にも、”属性ライブラリの方向性”も見えてきているが、これは各自の座学で教わる内容との摺合せが必要だと感じている。

何故なら、”使う側の理”と”作る側の理”には差が有るからだ。

”開発者側の想定”と”利用者の利用方法”に差が有るのは、”神エ○セル”を例に挙げるだけで充分だろう。

開発側の誰が、”表計算用ソフトを方眼用紙に見立てて絵を描く事”を想定したというのか?



ところで、そろそろPCには目処が立ちそうだ。


こっちのブレイクスルーは、ゴーレムだった。


いや、物理的なキーボードの感触が欲しかったんだよ。

マルチウィンドウのGUIが欲しかったんだよ。

GUIが有るなら、出来ればマウスも欲しかったんだよ。

マルチ画面にしたかったんだよ。

カメラも有った方が良いと思ったんだよ。

マイクも有れば便利だと思ったんだよ。

全部を一気に解決するのに、一番都合が良いのがゴーレム化だっただけだよ。


俺以外のメンバー全てのライブラリからゴーレム関連を調査し、俺が要求する仕様を精査した結果、ユイの”ヴィルト式”にお世話になりました。


これは”仮想H/WのユーザーI/Fとは、突き詰めれば自分への強化魔法”という事だかららしい。

起動中の要求リソースが最小で、起動時間が最速じゃ、他に選択の余地は無い。

キーボードやマウスが能動的に緻密に動く訳じゃ無いので、”起動”と”維持”だけを抜き出した結果だ。


いや、予想はしてたよ?

「魔法で強化して物理で殴る」が可能な「起動速度」と「殴っても戦闘終了まで維持出来る強度」が一番だろうとは思ってた。


しかし、検証しないのは俺の開発者魂が許さなかった。

まあ、検証の結果、当初の予想通りだった訳だが、これを”無駄な作業”と捉えるか”安定動作の根拠の確定”と捉えるかで、そいつがエンジニアたり得るかが解る例だと思ったのだが、どうにもこうにも、”そっち方面の仲間”が居ないので、パーティ内の俺の最新評価は”MADが入った人”だと思われている気がする。

主に偏執狂方面の。納得がいかない。


納得は行かないが納期は有るので、今はキーボードとマウスの準備中だ。


パーティメンバーには”外付けHDD”と言ってあるが、俺はそれ以外にも”マルチコア化”か”数値演算コプロセッサ”に相当する、”処理”に関する増設も有ると予想している。

そうでなければ、”外付けされたHDDを上手く使えない”と思ったからだ。

単純に”人間の脳では処理能力が足りない”とでも言えば解りやすいだろうか?



これにも根拠は有る。”タブレット”の存在と、その動作だ。


”タブレット”は俺に起動されるが、俺が可視化した後に手渡したメンバーの操作に対応し、アプリが起動出来た。

これが”完全に俺の処理能力に依存した物”なら、”俺の魔法を他人が起動、実行した”事になる。

それが可能なのか?

少なくとも、”暗示”か”従属契約”経由でなければ不可能。

それが、この世界の常識に含まれるらしい。


ならば”別途魔法処理用の演算機能が存在する”と仮定すれば良い。

俺の場合、”タブレット”の処理は、外付けのソレが行っている訳だ。

”タブレット”にはタブレットのCPUに相当する物が存在する。


ここまで仮定を進めれば、”俺の外付け魔法演算領域に、物理ユーザーI/Fを繋ぐ”とイメージするのは難しくない。


始めは”タブレット”経由で接続し、動作を確認、安定させた後は、逆に”俺の外付け魔法演算領域から起動させる”仕様にすれば良い。


俺は”ギフト”として、アプリのショートカットを貼り付ける事が出来る。

これを利用して、”俺自身が、俺の外付け魔法演算領域を、PCと仮想化して利用する事”が出来る筈だ。



もうね。

俺一人だけじゃ、ここまで絶対にたどり着かない。

たとえ”俺の魔法演算領域”であっても、パーティメンバーには、何かしらのアクセス方法を準備するつもりだ。


・大規模魔法実行時のコプロセッサ扱い

・便利な通信方法扱い

・未検証だが可能なら”魔力のサブバッテリー化”

いずれか、いや、全部でも構わない。


多分、総魔力量に相当するであろう、”タブレット”で確認した実装メモリのサイズは、スクロールする勢いの桁数が有った事は確認している。


きっと俺は、”チップセットに問題は有るが、実装メモリとHDDは物凄くデカイPC”みたいな物だ。


型落ちPCなら、次の利用法は”サーバ化”と相場が決まっている。

ゲーム機でも、数を揃えて並列化すればスパコンになる。


俺は改めて、”この世界に対して自重しない事”に加えて、”パーティメンバーの為にも自重しない事”を誓いながら、ある種の確信を持ってキーボードとマウスの接続を完了させた。


・・・ちなみにこのキーボードとマウスは、今後”仮想PC”と呼ぶ事に決めている”俺の魔法演算領域”と、”タブレット”の接続を、任意に切り替えられる仕様になっている。


最大接続先は3つ用意した。


これは”仮想PC”の実行に余裕が有る事が確認出来た場合、更に裏側で”仮想サーバ”を動作させる事を織り込んだ仕様だ。

キーボードの操作で、他の全てのUIが同時に切り替わる便利仕様だが、この辺はパーティ内でも理解してもらえない領域なので、”仮想PC”へのアクセスが可能になっただけの今の段階では、誰にも言わずにこっそりほくそ笑むだけにしておくつもりだ。


よし。

これでまた、”俺を不便なまま放置した世界”に対して”自重しない”方向の一歩を刻んだ。

ファンタジー世界の文化レベルに、現代のPC関連機器を仮想化して持ち込むというのは、間違い無く”世界に対する暴挙”だろう。

しかし、そんな事は知った事か。


仮に”神が敵”なら”神でも自重せず殺す”事に躊躇は無い。

結果として”神敵”に指名されるなら、喜んで”神敵”になってやる。


この世界に”神が実在する”のなら、最低でも一度は、”命に関わる絶望”を味わって貰う。

それでも、どうせ”俺だけ違う仕様”なのは変わらないのだろうから、”改心して詫びを入れてきた場合に限り、生き残るチャンスを与えてやる”つもりだ。

何故なら、それは、俺が始めの一週間で、孤独感と戦いながら味わった、所謂”俺が通った道”だからだ。

俺に話を聞いて貰いたいなら、”俺と同等の絶望を通って貰う事”がスタートラインだ。


俺のパーティを人質に取るような真似をするなら、即殺す。

殺した事が原因で”この世界が機能不全になる”なんてのは、既に覚悟に織り込んだ。



・・・さて、”タブレットウェイクアップ”をベースに、俺が俺の為に作り上げた”仮想PC”の起動コマンドを”ギフト”に配置する為に命名しよう。

・・・ああ、面倒だ。”ウェイクアップ”で構わんかな?

少なくとも、”短い事”という条件と、”誤起動の心配が無い”のなら、”ゴーレムの一般的な起動コマンド”の流用でも良かろう。

実際に起動するのは、”UIを含めたゴーレム”で間違ってないし、少なくとも俺は今後”単純なコマンドで起動出来るゴーレム”を使用するつもりも無い。


よし。

決めた。


「ウェイクアップ」


これが、俺の”仮想PC”が起動した瞬間で有る。

そして同時に、行動として”この世界に喧嘩を売る第一歩”なのは間違い無い。


俺は”起動はしたが空っぽ”の”仮想PC”に対して、”使いやすいスクリーンエディタ”と”強化した開発環境”を準備すべく、次のステップに移った。


やっぱり、一人だけで仕様から決めてはいけませんw

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