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短編集 冬花火

最果ての島

作者: 春風 月葉

 家族との幸せな旅の最後は、乗っていた飛行機の墜落という形で幕を閉じた。

 必死に浮いていた木片に手をかけ、流されること数日。

 私の意識は途絶えた。

 目が覚めると、そこは小さな島だった。

 人の暮らした面影を残す木組みの小屋見たことのない果実をその身に着飾る背の低い木々、大量の漂着物で埋め尽くされた砂浜。

 自分もあの漂着物の一つだったということなのだろう。

 帰る先も手段もない私は仕方なくこの島で暮らした。小屋で雨風は凌げるし食料や衣服も頻繁に流れてくるうえ、果実もなるので飢える心配もない。

 島の暮らしは楽だった。

 この島には本当にたくさんのものが流れ着く。

 人形、衣服、食品、木材、ボトル、骨、ペンと本当に色々なものがだ。

 私はやることもないので、この島で日記をつけて毎日を過ごした。

 日々の楽しみなどそれくらいしかなかったのだ。

 だがそんな退屈な日々にも終止符というものが打たれた。

 変わった漂着物がこの島に行き着いたのだ。

 ガラス製のボトル瓶だったのだが、中には折り込まれた紙が入っていた。

 瓶を石で割って紙を開くと、それはペンで書かれた手紙だった。

 書き出しはこうだ。

 広い海の向こう、世界のどこかにいるあなたへ。

 そしてこう閉じられていた。

 病という鎖で地に繋がれた憐れな私より。

 この時、何を思ったか私はガラクタを集めて一隻の舟を作った。

 私は世界の流れ着くこの島の先を見てこようと思う。

 その前に、一冊の記録をここに置いておこうと思う。

 題名は最果ての島、この一冊を手に取ったあなたへ、私は果ての果てを探しに行こうと思う。

 何一つ流れ着くことのない島の反対側で、だだっ広い海を見据えて私は舟を漕ぎ出した。

 この一冊が誰かの手の中にあるのか否か。

 私に答えを知る術はない。

 次はどこへ流れ着くのだろうか?

 全てを失った私には、そんな期待だけで充分だった。


 この島へ流れ着いたどこかの誰かへ、あなたの先にいる誰でもない私より。

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