表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムに栄光あれ  作者: 抱き枕カバー
第1章 迷宮の鬼
1/1

1話 誕生

これから宜しくお願いします

 


 

 人間ができることは多くはない。



 手先が器用で物を作ることができること



 知識を蓄え、知恵を生み出すこと



 人間が他の動物に比べ絶対的に違うのは、自他の感情に敏感であることではないだろうか


 なぜ進化の中で生き物はより豊かな感情をもつ人間になったのか?大きな疑問ではないだろうか



 ヒトが母親の腹から生まれて最初に感じるのは


【興奮】


 生後3ヶ月を過ぎる頃には


【快】【不快】


 もの心つく頃になると


【喜び】【怒り】【哀しみ】【楽しみ】


 人間のおおよその行動はこれらの感情に基づくと言われている。




 人間は感情をもつことで、今のような醜くて美しい人間関係を作り出すことができている。


 では、人の心を持つ人以外の生命が存在するとき、世界は、歴史はどう動くのか?



 これは、スライム(伝説をつくった男)の物語である。





 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ん…」



 洞窟の中で男は目を覚ます。



「ここはどこだ」



 男は目覚めて数秒後、周りの様子を見て戸惑う。


 あたりには土で作られたか天井や壁や床がある。縦にも横にも幅は広く感じる。続く道が一つしかないことからここは行き止まりらしい。



「ここは洞窟か何かか?ということは誘拐か拉致られてしまったのか…。俺には周りに自慢するような財産も地位もないのに、なぜこんなことをされたのかは疑問だが…」



「とりあえず会社は後で事情を話すなどして許してもらうとしよう。妹には無駄な心配をかけることになってしまうな。この事件が終わったら好きなものでもプレゼントするか。しかし周りに人がいないのは変だな」



 男は被害者なのに呑気なものである。


 男は社会人だった。親友、恋人といった類の関係の人はいなかったが、趣味の合う友人はいて、近くの町の図書館まで行って読書をするのが好きだった。仕事が忙しくても1週間に1度は本屋へ行って少なくとも1冊は本を買っていた。おかげで男の部屋には本棚が3つもある。


 ちなみにこの男、唯一の家族である妹を何よりも大切にしている。男の妹は10人中4人が可愛いと言う程度のありきたりな女性だが、小さい頃に親を亡くしてしまった時に心を支えてくれた兄を絶対視していた。そのため、顔はそこそこだが周りからは「過保護」や「シスコンの度が高い」や「愛妻持ち」などと見られているため、少ない女友達からも「男」とは見られずにいることに気づかない男であった。


「なぜ犯人はこんなところに俺を運んできたんだよ。もう少しやりようはあるだろ。…………実は犯罪者とかいなくて俺が観光目的でここにきたとか?」


 自分にこんな洞窟を探検するような趣味はなかったはず…。男はそう思い、ここに来るまでに何をしていたのかを思い出そうとするが、


「ん? 俺が何をしていたのか思い出そうとしても、まるで記憶にもやがかかっているようだな。」


 ふと、彼はあることに気づいて驚愕し、怒りに身をまかせる。


「おいっ!自分の名前や妹の名前も思い出せないってどういうことだよ!ったくふざけたことをしてくれる。」


 男は何度も思い出そうとしていても、頭に浮かぶことはなかった。親を亡くしたこと。友達とお気に入りの本について語り合うこと。妹と一緒に遊んだこと。思い出はしっかり覚えているが自分の大切だと思える固有名詞の記憶が思い浮かばなかった。


 男は焦りながらも思考を止めない。


「やばいな、相手のことで何の情報もわからない。記憶をなくしたということは新薬の実験台か?」


 気晴らしに壁でも殴ろうかと思ったが、本日2度目の驚愕に襲われる。


「腕の感覚がない…?いや、それどころか地面に立っているはずなのに脚の感覚がない。」


 男はこの状況を把握しようと冷静になる。


「よく見ると見える範囲がかなり低くなっている。首を曲げた感じはしないのに視界を動かせる。口もないから呼吸をしてないのに、自分が生きているとわかる。今の自分の状態すらもわからない。とにかく今の自分の姿を早く把握することが優先だ」


 男は一度落ち着くとすぐに行動をし始めた。道は一本道が続いていたので迷うことなくまっすぐ進んだ。


 最初は人間の時の感覚と違いほとんど進むことができなかったため、始めは前に重心をかけるようにして這うように移動していた。ところがカタツムリと変わらない程度の速さだったので様々な歩き方を試し、結果としてすり足のように地を舐めるようにした進むと一番早く動けることがわかった。



 それから分かれ道もなく、しばらくすると、大きな部屋に入った。都合がいいことに、小さな池みたいなものもなある。男は池まで移動し、意を決して池を見る。


「………………!」


 男は絶句しているようだ


「これは・・・スライムというやつか?」


 男は、自分の姿がいわゆるRPGというものの定番のスライムだとしても特に驚きはなかった。先ほどから驚きが多くて頭が理解する容量をオーバーしてしまったのかもしれない。


「瞬きをしているような意識はないのに視界があるというのは慣れないな。ついでにこれで手足がない状態も理解した。目がないのに見てるということも分かった。しかし・・・どうして俺はスライムになっている?」


 そこには青く濁ったゼリー状の物体がいた。某ゲームにでてくるスライムみたいな形だが、よく見ると中心部分には黒い小さな石があった。


「そういえば、俺が過ごした高校にオタクがいてそいつが『異世界召喚されて、勇者になって、チート使って、俺つえーして、ハーレム作るんだ!』とか頭悪そうなことを言っていたな。全く状況は違うが地球にはいないはずの生命がいるってことは、もしかして今の俺の状況って・・・。」


 男はマジかと頭では理解しても心の中では未だに信じられなかった。


「異世界転移ってやつなのか・・・」


 すると頭の中に響くようにピコッと軽快なアラームがなった。妹の携帯のアラームでなる音によく似ている。


【〔ステータス〕と念じてください】


「うぉ、なんだ今の声?女性っぽかったな。しかもなぜか頭に響いている感じがしたんだが。それにステータスといえば…」


 男は学生時代にいたオタクの口癖がステータス!や、メニュー!などであり、それを言うたびに周りから白い目で見られていたことを思い出す。

 男は何度も周囲を見渡した。


「まさか誰もいないよな?」


 男はもう一度周りを確認した後、意を決して〔ステータス〕と念じた


 すると、半透明のパネルみたいなものが現れた。男は手に取ろうとしたが、スライムっぽいなにかだったので腕がないことを思い出し、手に取ることを諦めてパネルを覗き込んだ。そこにはこう書いてあった。



 〔ステータス〕

 名前 無し

 レベル 1

 種族 スライム

 ランク F-


 HP 10

 MP 5

 攻撃力 5

 守備力 5

 素早さ 7

 魔法攻撃力 2

 魔法守備力 2


 〔スキル〕


 〔種族スキル〕

 斬撃耐性レベル1

 酸攻撃レベル1

 土耐性レベル1



 〔エクストラスキル〕

 #####

 %%%%%


 〔称号〕

 異世界の***


「な、なんなんだこれは。一つずつ見ていくか。まずは名前は無しか。これは自分でつけることができるのだろうか。」


【前例がありません。】


 また頭に響くような声がする。


「うぉ、そうなのか。それとお前は誰だ?」


【・・・・・。】


 無視された。…男は特に期待してたわけではないのか、そのまま考える。


「答えないか…、いや答えることができないのか?名前は今は特に困ってないから多分大丈夫だろ。

 このレベル1とはなんだ?」


【レベルとは自身の強さを表す指標であり、どの生命も生まれたばかりはレベル1となります。このレベルは戦うことで経験値〈ex〉をもらいそれが一定量たまるとレベルアップとなり、ステータス増加、スキル追加などが起こります。

 基本的にレベルが高い方が強く、また、同じ種族の場合、自身のレベルの10以上、レベルが上でもランクの差が大きい相手との戦いはまず勝てないとも言われています。】


「なるほど、この世界はレベルという概念もあるのか。まるでゲームの世界だな。…いや、ここは異世界だったな」


「この種族が【スライム】とは?」


【スライムとは青く濁ったゼリー状の物体に包まれているモンスターのことです。モンスターの中でランクは最低レベルで、歴史上の中で最も強かったスライムもC-となっています。スライムは基本的に睡眠は必要ありません。肉体運動による疲れもほとんどありません。また、スライムは中心にある核を潰されると死にます。】


「よりによって俺は最弱モンスターに転生?してしまったのか。

 どうせなドラゴンとかもっと強そうなモンスターにして欲しかった。しかもこの黒い石・・・核だっけか?これを潰されると死ぬとか恐ろしいな。」


 男は水に映る自分の黒い核を見ながらそう思わずにはいられなかった。



「しかしここで愚痴っても仕方がないか。次の欄に行こう。

 このランクとは?」


【ランクとはそのモンスターの個体の強さを表します。ランクが高いほどその個体は強いですが、レベルを上げるための経験値必要量も多くなります。ランクはそのモンスターのステータス、討伐モンスターの質や量などで決めています。一般的な判断として、


 X・・・別名歴史級。どうしようもない災害であり理不尽な災厄。こいつが誕生するということは近い将来の人類滅亡の危機を意味する。世界全体で討伐に取り組まなければいけない。歴史上で現在3体しか確認できていない。

 また、Xランクモンスターが討伐されたあと、人類は大きな転機を迎えている。


 S・・・別名連合国家級。こいつ1体で2〜4の国を相手に戦え、国を滅ぼすことが可能である。現在まで、Sランクに滅ぼされた国は数えきれない。Sランクモンスターに多い種族はドラゴンである。

 また、知能は人間以上と言われており、賢く、たとえ相手が多勢であっても落ち着いて自分の土俵で戦うことができることは、Sランクモンスターの強みの一つである。


 A・・・別名国家級。Sランクほどの強さはないものの、国を1つ滅ぼせるほどの力がある。また、同族の下位ランクのモンスターを従えているものが多く、一緒にいるだけでステータスアップなどの恩恵を出すスキル持ちも多い。

 また、Aランクモンスターの存在がわかったら、すぐに対処しなければ、ねずみ算式でモンスターが増えていくため、1体1体はFもしくはEランク程度でも苦戦は必須である。


 B・・・別名都市級。ベテランの冒険者が、十分な準備をし、しっかりと作戦を練って戦って初めて負ける程度の強さ。人間ほどではないが、知能を持つモンスターが多い。

 人間視点では、冒険者の2つ目の壁とも言われ、ただの努力しかない者と才能のある者の区別がはっきりする。


 C・・・別名町級。同時に二つの行動をするようなモンスターも少しずつ増えてきて、

 冒険者が倒してるモンスターで多いのはCランクモンスターである。油断しなければ十分勝てる。


 D・・・別名戦闘級。Dランクモンスターを倒すことで初めて冒険者として一人前と呼ばれる。Dランクモンスターを倒せて人間の平均的な収入を得ることができる。

 冒険者の一つ目の壁とも言われ、挫折する人も少なくない。


 E・・・別名兵士級。一般兵士レベルの強さ。力も強く、動きも素早く、小さな規模でありながらも魔法を使うようになり、一般人ではすぐに殺せる存在。

 一体一体は弱いものの、集団で行動するものが多い。


 F・・・別名一般級。一対一であれば一般人でも余裕を持って戦うことができ、Fランクモンスターの中には子供でも勝てる程度のモンスターもいる。


 また、F-、F、F+の順で強くなり、これはFランクモンスター全体を3つに分けるとき、下位、中位、高位で分かれている】


「ドラゴンとかならなくてよかったわ。国2〜4と相手にできるって頭おかしいとしかおもえん。」


「それにしても結構厳しそうな世界なんだな。……って、スライムって最弱の最弱の部類に入るのかよ・・・。まぁそりゃ弱点が相手に見えてるから仕方のない部分でもあるな。」



「次にこのHPやMPの説明はできるか?」


【HPとは生命力のことであり、相手から攻撃や魔法などが当たると減り、また、転ぶ、自傷行為、寝ないなどの行為も命の危険があるため減ります。そしてHPが0になると死にます。HPの回復手段は休養をとること、HPポーションなどの回復アイテムを使うこと、スキルなどがあります。】


【MPとは魔法を使うときに消費するものです。例えばMPが9の場合消費MPが3の魔法を3回まで使うことができます。ただし、MPが0になると昏睡状態になります。回復手段は休養をとること、MPポーションなどの回復アイテムを使うこと、スキルなどがあります。】


「攻撃力と守備力と敏捷力と魔法攻撃力と魔法守備力とはなんだ?」


【攻撃力は自分の力の大きさを表しています。ただし力が大きいだけでは相手にそんなにダメージを与えることはできません】


【守備力は自分の頑丈さです。守備力が高くなると硬くなる訳ではなく、物理干渉を受けにくくすると考えください。これも攻撃力と同様に、うまく使うことが重要です】


【敏捷力はその値がトップスピードとなります。

 HPの量、スキルなどによって速さが変化します。走り続けると疲れがたまるため、速さは徐々に遅くなります。】


【魔法攻撃力とは攻撃力の魔法版です。規模の大きい魔法になるほど時間やMPなどを使うので威力が高くても意味がありません】


【魔法守備力とは守備力の魔法版です。相手の魔法に対する干渉を受けにくくします。】



「なるほど、値が大きくてもうまく使えなければ意味がないと言うことか。これは生き残る上で大切なことだな。」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ