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認められなきゃ死んじゃうゾ

平凡な日常。平凡な人生。朝から学校へ行って、帰ってきてからバイトへ行って....。そんな毎日を繰り返していた。そんな私に訪れた突飛な日常。




21時33分。バイトから帰ってきてご飯をたべお風呂に入って私はいつものように「勉強してくる」と言ってエアコンのきいた自分の部屋にこもり漫画を読んでいた。

尾崎未琴おざきみこと16歳。漫画やアニメが好きないたって普通な女子高生。へいへいとぼんぼんと今まで生きてきて、おそらくこれからもそう生きていくのだろう。彼氏も出来ずリア充になれなかった残念な女子高生。

いつ死んでもきっと誰も悲しまない。誰も気づかないだろう。そんなくらいどうでもいい存在。だと思ってる。そしてまた今日も漫画を読んでいるうちに寝落ちしてつぎの日に父に電気を消せと言っただろう!と怒られるのだろうな。 

「なんか変化のある日常にならないもんか....」

そう小言を言った時だった。ゴンッと部屋の窓の方から音がした。

窓をあけたらすぐに生い茂ったジャングルみたいな所がある。そこから毎年この時季になるとカナブンやらカメムシやらが窓へ向かってダイレクトアタックはしてくるが、それとはまた違う何か大きなものがあたった音がした。

幽霊?ラップ現象かなにかか?!最悪の事を妄想しながら恐る恐ると音の鳴る窓の方へと向かう。ゴンッ  ゴンッ  ゴンッゴンッ  ゴンッ

開けたくない。カーテンを開けたくない。だが気になる。好奇心だけは誰にも負けない自分と自負してくるくらいだ。その好奇心に勝てずにカーテンを開けた。それと同時になぜか窓がいきなり開いた。 

「ッ!!??!!??」

驚いているのも束の間、窓の外から私の横を大きい何かがもうスピードで横切る。

「なんかはいってきたぁっ!?!?!?」

なんだ。なんなんだ。見たくない....が!見る!

振り向くと一人の少女が立っていた。私は思わず目を丸くする....が

(なにこれ?!新手の心霊体験ですか?!幽霊さん!?幽霊さんなの??!)

言葉を失った私の顔を見て少女はにっこり微笑む。

「こんばんわ。尾崎未琴さん。........尾崎さん?尾崎未琴さん?」

好奇心に負けた自分を悔やんでいる私にはそんな言葉が届くはずもなく私はただただ新手の心霊体験だと思い込み我を失なう。

「あれ?おかしいな。尾崎未琴さんじゃなかったのかな?私おうち間違えちゃったのかな???........あ、あの!!」

少女は美容院代をケチってかれこれ2年も行かず長く汚く伸びた私の髪をひっぱった。

「....へっ?」

私は我に帰る。見下げると少女が涙目で私に訴えかける。

「お、尾崎未琴しゃん....でふよね....。」

涙目....ではなく泣いていた。状況が理解できない。なんだ。新手の心霊体験じゃないのかっ?!迷子か?!迷子???ん?尾崎未琴?....あっ....

「ご、ごめんね?どうしたの?私が尾崎未琴だよ?あってるよ~。」

心霊体験、心霊体験と思っているうちに少女の声に耳をかたむけていなかった。

「....へ?あっ!え!よ、良かった....おうち間違ってなかった....。」 

少女の顔が一気に明るくなる。少女は赤くなった目をこすりながらきらきらした大きな瞳で言う。

「こ、こんばんわ!初めまして!えっと、私の名前は....あ....。」

名前のところで止まった。少女は困惑した表情になる。迷子だと思っていた私はもっと状況が分からなくなる。すると何か思い付いたように少女はまた口を開く。

「私の名前はゼロイチです!ゼロでもゼロちゃんでもなんでもおよびください!えっと、私がここに、尾崎未琴さんのところにきたのは事情がありまして....。えっと、尾崎未琴さん!褒められた事ってありますか!?」

....へ?なになに?なに?いきなり。なんのアンサー????戸惑いつつも褒められた事について考える....。褒められた事....褒められた事....褒められた事....。

「....ないな。」

私は真顔で思わず口にした。すると少女の顔が驚愕する。 

「な、ないんですか!!?え!一つくらいはあるでしょう!?」

「....ないわ。」

何回も考えてみるものの褒められたことが浮かばなかった。

「ど、どしよう....。私死んじゃうのかな。」

「へ?死ぬ??なになに。なんで。お姉さんよくわからないんだけど。」

再び涙目になった少女は少し考えた顔をしてからつまりづまり言う。

「え、えっと。おそらくいきなりの事ですし戸惑うのも分かりますが落ち着いて聞いてくださると嬉しいです。私ゼロイチ....えっとゼロは人間にとりつく者です。幽霊とか悪魔とかの類いではないので説明は難しいですし、説明しろと言われましても私自身もよく分かっていないので説明できないのですが、とりあえず、私ゼロは、そしてゼロたち種族?は人間にとりつきその人間が褒められたときに出る喜びや嬉しさを元に生きていけるのです。そして今回ゼロは尾崎未琴さんにとりつく事になったのです。」

少女は真剣な顔で話すが突飛すぎて突然が突飛でますます分からない。迷子か!?迷子でも幽霊でもないだと!?!?

「と、とりつく?ってことは私どうなるの....?」

「ゼロがとりついても尾崎さんは尾崎さんです!なにも変化はないです!ただ....」

「ただ....?」

「尾崎未琴さんにとりついたゼロは尾崎未琴さんが褒められた時に生きる力を尾崎未琴さんを通じて貰うことができます。ですが尾崎未琴さんは今まで褒められた事がないって言っていましたよね....?そうなると尾崎未琴さんにとりついたゼロは最後の手段として尾崎未琴さんの命を少しずつもらって生きていくことになります。」

ということはなんなんだ。ということは....

「と、いうことはゼロが生きていくためには尾崎未琴さんに死んでいただくことになる感じです。その場で一瞬のうちに死ぬというより、じわじわ寿命が短くなっていく....といった感じです。」 

少女が悲しそうな顔をしながらも笑いながら言う。さっきから表情が豊かなのは分かったが今はそれどころではない。

「ちょ、ちょっとまって!!なにそれ!褒められた事ないよ?!私!多分これからもないだろうよ!?!?なにそれ!どうしても私じゃないとダメなの?!」

「....はい。とりつく相手は私たち種族の一番上の人が命じます。それを無視することは出来ないことになっているので、とりつく相手を変えることはできません。」

少女は私の手を両手でにぎり私の顔を見上げた。 

「なので尾崎さん!尾崎未琴さん!!....私が尾崎さんの寿命を削らないように。そして尾崎さんが早く死んでしまわないように私と頑張りましょう!」 

「が、頑張るって何を....?」

「褒められるようにです!」

....少女の顔は自信に満ち溢れた顔に変わる。  



変化のある日常になれと思った自分を私は呪った。何故そんな事思ったんだろう。やっぱ普通が一番だよ。平凡が一番。欲をはってしまったバチなのかな。開けっ放しの窓から入ってきた数匹のカメムシたちが部屋の電気の周りでブンブン音をたてながら飛んでいる。

突飛で変な日常が始まる瞬間だった。

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