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敵艦隊襲来。その4

敵の注意が第五艦隊に向けられていたために、我が第四艦隊は難なく離脱に成功し、敵右翼側面に回り込むことに成功したのであった。


「ここは第五艦隊の犠牲を無駄にすることなく、側面より突入して敵の陣形を崩す一手だな。」


「閣下、もう一手加えてみませんか?横に伸びきった敵の後背に補給部隊が確認できます。一隊をそちらに差し向ければ、敵はただでもこの二日間の戦闘で行動の限界点に達しようとしておりますので、より効果的に瓦解せしむることが出来るかもです。」



それは妙案と早速高橋大将に進言し了承を得た。


「秋山少佐。これより君は我が分艦隊に編入されている第三直掩艦隊の旗艦に移乗して、同艦隊司令を補佐しこの作戦を成功に導いてくれ。話は通しておく。」


「はっ!拝命いたします!」


背筋を伸ばし秋山は敬礼した。



第四艦隊は、高橋大将の元、艦隊陣形を紡錘陣形に組み替え突入態勢に入り、最後の補給を受けていた。

その中で、第三直掩艦隊100隻は、密かに隊を離脱し後方に控える敵補給艦隊に向かっていた。



30分程で全ての準備を終え、突入開始した。


案の定、側面方向は非常にもろく、こちらのレールガンとレーザーに次々と朱に染まっていった。

突入後は、レーザー砲塔を右へ左へ振りながら撃ちまくっていった。


「いいか!周りは敵しかいない!撃てば当たる!エネルギーの残量気にせずに撃ちまくるんだ!」


敵艦隊の中央部付近まで侵入に成功した第四艦隊は、今度は攻撃をミサイルに切り替え四方にばら撒き始めた。


「ミサイルの照準は、出来る限り無駄撃ちしないように攻撃が被らないように、コンピューターに任せる。」


これが効果的で、敵の艦隊はなす術も無く崩れていった。


その時、後方での作戦中の第三直掩艦隊より作戦成功の入電があった。


敵左翼側面を攻撃していた遠征隊も、敵を瓦解させることに成功していた。



生き残った敵艦は思い思いの方角に全速力で離脱していった。

どうやら、いつの間にか大勝利を収めていたようだ。



各艦隊、隊列を整え破損艦を工作艦に繋ぎ、大破艦艇より生存者の救出にあたっていた。



こうして二日半に渡る激戦は幕を下ろしたのであった。



「大垣中将の念願は半分叶ったな。」


「皮肉なものですね。死後に念願が叶うとは…おまけで元帥号まで手に入れられました。」


「あの方は、それでも満足だったのだろうか…ご冥福をお祈りしよう。」





全ての艦隊が合流して、最大戦速にて「にほん」の後を追った。


移動の最中に各艦隊は、被害状況をまとめていた。


第一艦隊 1000隻中 大破34 中破56 撃沈12

第二艦隊 500隻中 大破18 中破44 撃沈10

第三艦隊 500隻中 大破12 中破32 撃沈7

第四艦隊 500隻中 大破0 中破12 撃沈0

第五艦隊 500隻中 撃沈500

第一直掩艦隊 100隻中 大破0 中破5 撃沈0

第二直掩艦隊 100隻中 大破0 中破3 撃沈0

第三直掩艦隊 100隻中 大破0 中破7 撃沈0

補給艦隊及び工作艦部隊 被害0


敵艦隊 28000隻中 大破5324 中破4178 撃沈12945

補給艦他 2000隻中 撃沈2000


大勝利であった。



俺と秋山は、帰還の途上ずっと協議をしていた。


「今回の敵の艦隊の規模は相当大きかったと思うのだが、あくまでそれは我々にとってであり、もしかしたら敵のいくつかあるうちの一つの艦隊を潰したに過ぎないかもしれない。」


「私も同意見であります。更に2度にわたっての我々との会戦の経験もありますので、仮に次があるとしたら同じ戦法はもはや通用しないでしょうね。」


「そこなんだよ、秋山。俺としては、まずこちらの艦隊の艦数を個々の質を落としてでも揃えるべきだと思う。そして、以前鹵獲した艦船データをフルに活用して、新型艦の開発が急務だと考える。」


「そうですね。まずはレーザーの威力を上げつつ射程を延ばすことから始めた方がいいですな。それと、やはり動力部で見つかった装置は、いわゆるワープ航行に関係する何かでしょうな。」


「俺もそれを考えていた。でも、そこに関しては我々の出る幕は無いがね。それと居住性の問題から重力コントロールシステムを例の装置を元に独自で開発して装着してもらいたいな。」


「全くですな。いくら磁場を使って普通に生活が出来る環境があると言いましても、こうふわふわしていたら落ち着きません。」


「そういえば、敵は何故あそこまでの科学力を持ちながら、我々に後れを取るのであろうな?」


「それに関しましては、私なりに考えてみました。多分、彼らは科学力が上がり過ぎてしまったのでしょう。」


「う…ん?どういうことだい?」


「多分、我々の現在の科学力は、相手にとってはずいぶんと過去に通り過ぎてきたものなのでしょう。科学の進歩は、常に強い武器を開発し、それに耐えうるもしくは無効化する防具とでも言いましょうか…を開発する。それの繰り返しを幾世紀も繰り返している。まさに文字通り矛盾との戦いなのでしょう。」


「ふむ、そうかもしれんな。」


「その中で、過去の武器や技術は不要となり、長い間使用されないことで失われた技術となり得るものと小官は推測いたします。」


「なるほどな。過去の武器なればこそ逆に有効であったと言うことかもしれないな。」


「あの前進以外の推進力の脆弱性も、あの大軍なればこそ説明が出来ようものです。つまり途方もない数の艦船の艦列を整えつつ不意の誤操作により味方どおしの事故防止の意味も含まれるものと推測します。もしかしたら艦隊運動自体自動制御なのかもしれません。」


「確かに、あれだけの艦船を並べれば、前方の火力のみでも十分に驚異的である。限りある艦のスペースと発電力を無駄に側面や後方に振り分けるのを惜しんだのかもしれないね。」


「はい。更に技術の進歩は、艦自体の性能をあげ、揃えれる艦数が増えれば、寧ろ取りうる選択肢を狭めてしまうのかもですね。その結果、それを率いて指揮する立場の人間の能力は反比例して下がっていっているのではないでしょうか?」


「ふむ、そこに我らの勝機があったのかもしれないな。」




数日後、艦隊は遂に「にほん」に追いついた。

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