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敵艦隊襲来。その3

デコイの群れは、生き物のように広がりながら敵の進路を塞ぐように展開を始めた。


敵先鋒艦隊から雨と表現するよりは滝と表現した方がいいくらいのレーザー攻撃が始まった。


次々とデコイを貫いていくレーザーであったが、元々単なる金属片等なので、溶けて蒸発はするが、たまに動力部に当たり爆発発光するのみであった。ただ、遠目から見ると寧ろそれの方が自然な戦闘に見えるから不思議である。


敵の攻撃が始まってから約3時間が経ったころ、三つに別れていた敵艦隊それぞれの側面に閃光が走ると共に混乱が生じ始めた。


かねてからの計画通り、こちらも三つに別れて行動していた第四艦隊の総攻撃が開始されたのである。


各隊事前に隊を更に三つに分けて、次々と交代しながら敵の側面に火力を集中させていたのである。これは、後方の補給部隊と連携して常にミサイル等を途切れさせないための作成であった。


「敵の側面はがら空きだぞ!焦らずよく狙って打つんだ!」


俺は努めて勇ましく振る舞った。


「どうやら敵には、側面と後方への備えがほぼないようですね。ただ、それもこの会戦まででしょうが…」


秋山は、モニターを凝視しながら腕組みをして言った。


「なあ、秋山。ここでレールガンってのはどうだろう?」


「なるほど…カタログスペックでは、射程5万キロの近接戦闘用の武器ではありますが、抵抗値がほぼ皆無のこの空間でなら、あるいは…ですな。」


「敵の反対側の側面と前方、後方が旋回し終え反撃に転じるまでまだ少し時間があるので試してみよう。」



各艦の前面にそれぞれ二門のあるレールガン発射口が開き、爆音と共に次々と弾を打ち出していった。


直線的に打ち出された弾は、どんどん加速し瞬く間に敵艦隊にめり込んでいった。


「おお、意外と使えそうだな。ただ、ミサイルと違って誘導が効かない上、艦自体が砲身の役目なので融通は効かないがね。」


「はい、今回のような側面攻撃もしくは追撃戦の時以外は、玉砕攻撃位しか…距離のある正面からでは避けられてしまうでしょうな。」


「だな。おっと!そろそろ時間だな。補給部隊から順次後退させよう。後は集合地点に合流して第二段階だ。」



第四艦隊の各隊は、急速後退して後方で集結したのであった。


「ここまで来ると、本隊の高橋大将との通信が出来そうだな。」


「はい、回線繋げます。」



回線が繋がり、俺はモニター越しに高橋大将と面会し、今後の方針を打ち合わせた。


このまま後退しつつ応戦し、後方5光秒の距離に設定した座標まで敵を誘導する作戦である。そこは反転して戻って来ているであろう遠征艦隊との合流地点でもある。


うまいこといけば、遠征艦隊が敵の側面を捉えることが出来るはずであるのだが…


我々が合流後退しだしてすぐに正面のデコイ偽装がばれて、敵艦隊も一つに合流して横に広がりつつこちらを包囲せんとしていた。


「大丈夫だ!このタイミングなら包囲されることは無い!落ち着いて艦列を乱すことなく後退せよ!」


俺自身半信半疑であったが、弱気を見せる訳にもいかない。


後は、遠征隊の諸将の手腕に期待するのみである。

とは言え、やはり打ち減らしたとはいえ30倍近い兵力差である。遠征隊が到着してもどうにかなる確信は持てなかったが、今のところ数の不利を補えるほどの「情報」というアドバンテージがあるので信じるしかない。


「例えここで我らが全滅したとしても…」


作戦開始の前の通信にて、「にほん」に対してステルスシールド全開にして敵勢力圏を全速で離脱するように進言していた。



「閣下、計算よりも僅かに敵の追撃速度が速いようですな…これでは予定空域直前で捕まってしまう恐れがあります。」


秋山は、淡々と言った。


「ふむ。では、高橋大将に連絡して、床面方向へも推力を与え水平軸をずらすように進言してみよう。」


後退しつつ床面方向に少しずつ移動してみると、やはり敵の機動力は、それに対応しきれていない様子であった。ジワリと相対距離が開いていく。


すると敵の左翼方向より、無数の発光が確認された。


「間に合ってくれたか…」


俺はホッと一息ついてイスに倒れ掛かかるように座った。


「閣下、ここからが正念場ですぞ!」


「そうだったな。我々はこのまま後退を続け敵の視認距離より離脱の後、ステルスシールド全開で敵の右翼に回るぞ!」


「閣下、我らの後方から多数の艦影が接近中であります!」


オペレーターがそういうと後部カメラの画像をモニターに映し出した。


「む?閣下、あれは第五艦隊の集団ではありませんか?」


「確かに。艦艇のナンバーからはそう読み取れるな。でも、何故後方から?」


「まさか…正面からミサイルの飽和攻撃を浴びせようと考えているのでは?」


「あのレーザーの弾幕では不可能だ!すぐに後方の第五艦隊に作戦通り動くように高橋大将に警告していただこう!」



高橋大将は連絡を受け、再三にわたって警告したが、第五艦隊司令の大垣中将は取り合わなかった。


「我々の勇戦をそこで観戦していて下され。」の一点張りであった。


大垣中将は、士官学校の出身ではなく五等水兵からのたたき上げで今の地位を獲得してきた老将であった。

その為、士官学校出身者に対して、並々ならぬほどの対抗心を燃やしていた。

本当なら既に退役していて然るべき年齢ではあるが、大将にまで上り詰めねば死んでも死にきれん!と公言してやまない人物である。


「功を焦り過ぎている…」


やりきれない気持ちで俺は見守ることしかできなかった。



敵の大艦隊の正面に躍り出て、敵のレーザーをシールドでいなしながら前進する第五艦隊であったが、射程圏に入ったところで全艦からミサイル群が発射された。


しかし、発射されたミサイルのことごとくは、敵に到達する前にレーザーに貫かれ破壊されていった。


更にレーザーで応戦しようとシールドを解いた途端に、滝のように降り注ぐ敵のレーザー群に貫かれて次々と破壊され30分もしないうちに全滅したのであった。


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