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敵艦隊襲来。その1

宇宙艦隊指令本部では、連日軍議が行われていた。


場所は、宇宙艦隊指令長官室横のブリーフィングルームである。


第一から第五艦隊、第一から第三直掩艦隊、補給艦隊を含む後方支援艦隊の提督及び参謀長、そして准将以上の分艦隊隊長等が出席していた。


楕円形の大きなテーブルの両側の広いスペースには、各艦隊5名ずつ少佐以上の参謀が傍聴を許可されていた。


秋山も先の会戦での武勲により少佐に昇進しており、この会議を傍聴していた。


会議自体は、このままこの空域を速やかに離れるべきと主張するグループと、後背の憂いを無くす為に積極的に敵の本拠に攻勢を仕掛けるべきと主張するグループに別れて、連日激論を繰り返していたが、お互い拮抗していたため平行線が続いていた。



「本日の科学技術庁からの報告によると、敵のレーダー性能は非常に優秀で範囲が我らの約3倍でジャミングの性能も優秀である。しかし、これは超長波に対してであり、超短波に対しては何の対策も成されていないようである。」


服部総参謀長は、ここまで報告して周りを見渡し更に続けた。


「よって、先の会戦での報告にあった…艦隊内での短波通信のみ正常に作動していた。との内容に合致するものである。更に敵の通信性能は我らと同等であるが、超長距離での音声のズレを補正する装置が内臓されており、タイムラグのない会話が実現されているものと推測される。動力部に何かしらの特殊な装置が付いているが、そちらについては現在分析中である。」


おお…と一同漏らしつつ、口々に話し合ってざわつき出した。


「ここまで分かっているのなら、もう迷うことはありますまい!」


主戦派筆頭の第一艦隊指令の大西大将が言った。


「その通りだ!相手の攻撃をシールドで受けつつ、ミサイルで応戦すれば敵に何らなすすべの無いことは、高橋提督の実戦にて証明されておるではありませんか!」


第五艦隊指令の大垣中将も続いた。


室内はざわついていたが、敵の手の内が分かった以上、対策は万全である。との意見にまとまりつつある雰囲気になってきていた。


その中で終始静観して見守っていた高橋大将が手を挙げ発言の許可を求めた。


「では、高橋大将。意見を述べたまえ。」


総参謀長に促された。


「先の遭遇戦におきましては、偶然と幸運とが重なった結果と今になって思うのです。仮に相手方が我々を最初から敵と認識しておれば、あの強力なジャミングが出来る技術力です。きっと事前に我々のレーダーの無効化も出来たでしょう。それと未だ相手の国力及び総戦力が不明なままであります。私は、慎重論を推奨致します。」


低くよく通る声で高橋が言うと、また室内がざわつき出した。


結局、今日のところは相手方の技術と情報の更なる分析を待つというところで締め括られたのであった。




俺と秋山は、第四艦隊司令本部の第二分艦隊オフィスでコーヒーを飲みながら、本日の会議について語らっていた。


「なあ、秋山。主戦論のお歴々は、何故そんなに戦いたがっているのだと思う?」


「ふむ…もしかしたら、すごく単純な理由かもしれんね。地球を出て150年、一度も実戦経験のない我が宇宙艦隊でしたからね。」


「なるほどね…一度くらい戦ってみたい…そんなところか。確かに主戦論唱えているのは、退役を間近に控えた老提督ばかりだったね。」


二人そろって大きなため息をついた。


「和泉少将、高橋提督の仰ったことをどう思われますか?」


「秋山、今は別に閣下と部下でなくていいんだぞ。」


意地悪な顔をしてカップをテーブルに置いた。


「でも、私も高橋提督のご意見に賛同するな。もし早い段階でこちらのレーダーが無効化されていたらと思うとゾッとするよ。」


「確かに…今回は不幸な遭遇戦でありましたが、むしろこちらには不幸中の幸いの結果になりましたものね。」


「それよりも私は、あの動力部で見つかった装置の方に興味があるね。」


「ほう、何だと考えるかね?」


「杞憂であってくれればいいのだが…重力コントロールの装置があると言う事だから。エンジンを急加速させる装置か、SFでありがちな…アレだよ。」


「ふむ、いわゆるワープって奴かい?確かに我々に出来ないから相手にも出来ないはず…は通用しないからね。」


「今回で主戦論が多数を締めそうであるので、当面はそっちの流れにおいての策でも講じておいた方がよさそうだね。」


「ですね。今回武功を挙げたのと、戦力の減少から我が第四艦隊は留守番でしょうがね。」


「艦艇の補充は、かなり進んでいるのだろう?人員の補充も出来るので訓練は必要だがね。」




穏やかな時間が過ぎていったが、後に嵐の前の静けさと揶揄されるひと時でもあった。

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