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未知との邂逅。その2

敵は強力なジャミングを放ち本隊との通信は絶望的であったが、分艦隊の専用チャンネルはまだ生きているようである。


敵の第二波が容赦なくこちらの艦隊に降り注ぐ。


「どうやら、敵の攻撃の射程は我々の倍のようだな。だが対レーザーシールドは有効なようだ。このまま敵左舷に回り込む形で移動せよ。」


「よろしいのですか?本体から離れてしまいますが。」


「寧ろ離れて敵の狙いを定めないようにしてやるのさ。…意味があるか分からないが。」


「艦長、敵の動きを見ておりますと、なにやら旋回性能に難があるように見受けられるのですが…」



確かに、上下はともかく、左右に展開した部隊への攻撃は非常にゆるくなっていた。


もしかすると、集団攻撃に突出した構想の元、前方への火力に集中するあまりに、旋回能力を犠牲にしている可能性もある。


「まだ確証は持てないが、考えている暇はない。我が隊はこれよりステルスシールドを張り、そのまま右方向に脱出したと見せかけて、敵後方に回り込むぞ。」


我が隊全艦に航路図を転送して、しばらく一切の通信を遮断した。





その頃、中央に位置していた本隊は、大混乱を起こしつつも徐々に艦列を立て直し始めていた。


「うろたえるな!対ビームシールドを最大値にして後退を続けよ!敵が勢いに任せて近寄ってきたところで反撃に出るぞ!」


さすがは老練の宿将ってとこであろうか、みるみる艦隊に秩序が戻ってきた。

初めての実戦とはいえ、数々の模擬戦をこなしてきた経験がある。


絶望的な程までの戦力差に全体の損失は、5割を超えていた。

普通ならば、壊滅と表現されてもおかしくない状態である。


「閣下、左右に離散した各分隊が消息を絶ちました!我が本体の戦力も100隻と少しのみですぞ!」


参謀長が絶叫していた。


「いや、奴らは…奴らは多分大丈夫だ。左翼分艦隊も無事に離脱出来たようだ。ただ、右翼分艦隊の動きが引っかかる…」


そう言うと、高橋中将はしばらく考え込んだ。


「そうか、なるほど。」


中将は、何か閃いたようにニヤリと笑って言った。


「閣下、どうかなされましたか?」


不安を隠しきれずに参謀長が訊いてきた。


「君たちは参謀であろう?私に助言するのが仕事ではないのか?まあいい、全隊に後退速度を緩めるように通達せよ!ビーム砲全門解放し、ミサイル発射管も全門開かせろ!」


半ば呆れたように参謀達に一瞥くれたのち言い放った。


「司令!?」


参謀達は、悲鳴のような声をあげた。


中将は、参謀達を手で制しながら、


「こちらの射程圏内まであとどれくらいだ!?」


中将は、オペレーターに向かって叫んだ。


「もう間もなくです!」


「よし、全艦に通達せよ!敵を十分に射程に引き入れ次第、ミサイル全弾敵に向かって放り込め!しかる後にシールド解除と同時に全砲門よりビーム砲を連続斉射せよ!エネルギーの残量は気にするな!」


「そして、もしも敵の後方に異変が起こって動きが鈍ったならば、その時は全艦突入する!」


中将は、まくしたてる様に言った。


「後方ですと!?」


参謀達はざわめいた。



中将は、モニターで敵の大半が射程に入ったのを確認して、


「ミサイル全弾、敵の集団に向けて撃て!出来るだけ広範囲にばら撒けよ!!」


中将は叫んだ。



中央艦隊の各艦の開かれた発射管から、次々とミサイルが放たれていった。


数千の光が白煙を引きながら、敵の艦隊に躍り込んで行った。



ミサイルの群れは、敵の艦艇の前部に淡く弧を描き光るシールドを難なくすり抜け、真っ黒い宇宙を朱に染めていった。


続いて、こちらのビームの群れが敵に襲い掛かる。


敵の艦隊が混乱して乱れてきた。


すると、敵艦隊の後方がまばゆく光り始めた。


次々と花火のように弾けて消えていく敵艦艇、混乱の極みであった。




和泉の分艦隊は、敵艦の後方で間断なく攻撃を続ける。


「おやおや、敵の防御はやけに脆いな…」


俺は少々拍子抜けして、秋山大尉の方を向き言った。


「確かに、欠陥だらけの艦隊ですな。でも、それよりも…艦長お気づきになられましたか?」


「ああ、高橋中将のことだろ?あれが玉砕を覚悟しての行動でないなら…あの方は本物だな。」


「はい。ただし…相当の博打打ちでもありますな。」


ふふふと笑いながら秋山は言った。


「なにはともあれ、完勝である!皆の奮戦に感謝するよ。」


全艦放送にて俺は言った。



「通信士、旗艦日向に繋いでくれるかい?」




俺は、中将に数隻の敵艦艇の拿捕を上申し、受け入れられ数種類の艦艇と数千人の敵方の捕虜を得た。



艦隊をまとめ損傷艦の回収と生存者の回収を行い、我が艦隊は帰路についたのであった。




「やれやれ、ようやく太陽系以外の他星系にまで到達したかと思ったら、とんだ歓迎を受けたものだな。」


コーヒーをすすりながら俺が言った。


「相手方にしてみれば、我々は得体のしれないエイリアンですからな。」


コーヒーの香りを愉しむようにカップに顔を近づけ、秋山は言った。



「なるほど…その通りかもね。」





我々の戦闘など意に介さないかのように、散りばめられた星々はいつもと変わらず輝いていた。








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