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平穏。

牡丹とフユキも順調に育ってきている。


二人が俺のことをどう呼ぶか、どういう存在に映るか。

日々それを考えていたのだが…


お父さん


結局のところこれに落ち着いた。


今は二人を幼稚園に入れて、俺は主夫をしている。

軍にいたころの貯金と軍の年金を合わせると何不自由ない暮らしができる程の収入がある。


今日も病院に楓花のお見舞いに来ている。

不思議なもので、牡丹とフユキを連れて行くき、二人が楓花の手を握ると彼女の脳波に変化がみられるのだ。



やはり、血の繋がりって奴であろうか…


まあ、俺の血も交じっているがね。




そう言えば、この「にほん」も老朽化が進んで来たことをきっかけに新たな船を建造するそうである。

大きさは、「にほん」の数倍の規模になると秋山が教えてくれた。


動力部を強化して縮退炉を取り付けるらしい。巨大な質量でもワープ出来るように開発が進んでいるらしい。


探索の結果、進行方向10光年の位置に豊かな鉱物資源を有する惑星を発見したのだが、そこにおびただしい数の工作艦と護衛の艦隊を派遣して、新造艦の建設が既に宇宙空間にて始まっているらしい。


定期的に、補給艦がそこに物資や人員を運んでいるらしいのだが、ワープ航法というのは、なんとも便利なものである。



その惑星の地表にコロニーを築き、そこで働く人々の生活の場になっているのだが、工期が長いと言う事もあって、その家族や病院関係、学校なども建設されるうちに、複数のコロニーからなる立派な都市のようになっていた。


その他農業用地や灌漑設備なども整備中であり、自給自足ができる程の規模になったら順次一般居住区の住民から移民させていく予定である。


大きなレーダーサイトを四方に据え、宇宙軍陸戦隊から独立した陸軍が創立され防衛にあたっていた。


船の完全なる完成には、まだ7~8年はかかる見通しだという。


このまま「にほん」にも縮退炉を取り付けて、すぐにその地に向かえばいいようにも思うが、どうせ廃棄する船だしとそちらに労力と資源を使う余裕はないらしい。



我々もその船が出来次第、もしくはコロニーの受け入れ態勢が整い次第、楓花と牡丹とフユキを連れて「にほん」を離れる予定である。






そこから二年の歳月が経ったころ、いつものように3人で病院に向かったのであった。


牡丹とフユキも小学生になっていた。


ただ、この数か月前から楓花の脳波に活発な反応が見られることが増えて来ていた。



そこで、反町博士を始めとした研究所の面々が脳波を読み取り言語化する装置を開発したのであった。


今日がその試験日になっていた。


「今日はお母さんとお話しできるかもしれないぞ。」


そんな事を言った俺だったが、テストの段階である程度の会話ができるとの知らせが入っていたのだ。


子供たちは不思議そうに眼をパチクリさせていた。



いつもの病室に入ると、コンパクトな脳波計のようなものを装着して眠っている楓花がいた。


もっと仰々しい大きな機械たちに囲まれているのかと思ったが…


「楓花、聞こえるかい?」


恐る恐る訊いてみた。


「その声は、中将さんね!」


正直びっくりした。声もイントネーションも以前の楓花そのものだったからだ。



声帯と顎の形状、発声に関連する筋肉群と舌の筋肉を分析した結果らしいのだが…


科学…ぱねぇっす。


「久しぶりだね、楓花。」


「中将さん、私はずっとあなたを…あなた達を感じていたのよ。気配でわかるのだけど…そこに二人、おチビちゃんがいるでしょう?なんだろう…なんだか愛おしく思えるの。他人じゃないって言うか…でも、以前私に「お母さん」って呼びかけていたよね?」


「ああ、詳しい話は後でゆっくりしてあげるけど…この二人はれっきとした君の子供たちだよ。牡丹とフユキって言うんだ。」


「まあ、言い名前ね。あなたが付けたのね?でも、フユキちゃんって…まあ、いいわ。牡丹ちゃん、フユキちゃん、私の手を握ってくれる?」


誰に促されることも無く、二人は駆け寄り手を握っていた。




後で反町博士に聞いたのだが、現在進行形で特殊なカメラを使って、視神経に直接電波で映像情報を送る装置を作っているようである。更に脳波の信号で各筋肉に埋め込まれた端子に電流が流れることによって、体を動かすことが出来るようにするらしい。もちろん自力での発声も可能になる予定である。


映像を送るカメラの装置もゆくゆくは、小型化させて眼球内に設置する予定であるらしい。

もっとも視力が戻ったなら必要ないらしいのだが…




今日は有意義な日になった。

子供たちも心なしか興奮している様子だ。



子供たちの誕生までの経緯を話した時の楓花の言葉がよみがえる。


「私にも家族が出来たのね…うれしい。その相手があなたで本当に良かった。」




落ち着いたら、正式にプロポーズをしてみよう。



彼女が受け入れてくれたら、俺たちは正式に家族になれる。



俺たちはいつも以上に軽い足取りで家路を歩んでいた。


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