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改革。その1

帰還後、俺は中将に秋山は中佐にとそれぞれ叙せられたのであった。


皆それぞれ武功を認められたのだが、勲章や金品など他のものにて労をねぎらわれるにとどまり、階級が上がったのは俺たち二名のみであった。


先の会戦での高橋大将就任と大垣中将戦死により、中将職に空きが出来てしまったのも一つの要因であるのだが…


どうやら、高橋大将の鶴の一声により全滅した第五艦隊の穴埋めの意味も込められているのだろう。


そして、何よりも長年苦楽を共にしてきた大垣元帥(死後二階級特進により)の戦死によって、すっかり覇気を無くしてしまった第一艦隊司令大西大将を始め第二第三両艦隊司令が、退役を希望したことも大きかったのかもしれない。


かくして、宇宙艦隊自体の再編成に迫られていた。


そして、宇宙艦隊全てを一つの部隊にまとめ、その総司令として高橋大将が任命された。

当面は、この3000隻で構成される艦隊のみとなる。


あらたな編成が決まるまで、俺は高橋大将直属の参謀長を兼任し、参謀の一人として秋山も参加することになった。



そんなある日、軍上層部と各省庁のトップ及び担当大臣とを交えた会議が、五十嵐大統領を中心に行われていた。


科学技術大臣の鮎川が、先日解析を終えた動力部の装置についてとレーザー兵器及びレーダーと通信に関する報告を発表した。


「動力部に付属していた装置、我々は仮称として「縮退炉」と呼びますが…その縮退炉の機能は、驚くことに動力部で発生したエネルギーを縮退することによって、艦前方に小型のブラックホールを形成することが出来ると言うものなのです。」


「そのブラックホールは、計算によるとリング状のものであり、我々はこれを「ワームホール」と仮称しております。そこの間をすり抜けることで、その先に形成されているであろうホワイトホールから出てくる仕組みのようです。大昔にかのアインシュタインが発表した理論そのものの実践にあたるものと思われます。このホワイトホールの出現位置をどうやら任意に設定が出来る様なのです。」


「ただ、何も無くそのワームホールに突入すると膨大な重力により瞬く間に宇宙船ごと潰されてしまいますが…最初に発見された重力コントロール装置によって「反物質」を作りだし、ワームホールを安定させ重力の干渉を無くして航行が出来うるようであります。もっともこの重力コントロール装置は、艦内を地上にいるかの如くの重力を作り出せる装置でもあります。」


「次にレーザー兵器いついてですが…」


このように鮎川大臣の演説のような報告は、延々と2時間ほど続いたのであった。


続いて、捕虜達の対応にあたっていた文部科学省の担当大臣からの報告によれば、相手の言語の解析はほぼ完了に近づいているとのことであった。


それによって、先ほどの装置等の解析も早まった訳だが、相手の勢力が複数の恒星系に渡って勢力をもつ文明国家であることが分かった。


そこで、捕虜に対して帰国か残留かの意思決定を選択させた結果、約1割の人数が残留を希望している事が分かった。残りの帰国を希望しているグループには、食糧・燃料を十分に積み相手の母星への自動航行システムを付けた船を提供して、帰国させることになった。



そんなこんなで、午前9時から始まった会議であったが、既に午後の5時になろうとしたところでお開きになることになった。


そこで、高橋大将は挙手し議長に発言許可を求めた。


「先ほどの科学技術省及び文部科学省の報告が、我々軍部にとって非常に興味深く思えました。つきましては、後日改めまして、大統領閣下にも再度ご足労いただくことになるかと存じますが…是非とも今後の軍備強化及び編成について協議の場を作っていただけないでしょうか?」



その招請に両省庁及び大統領が、一週間後に予定を空け、応じることを約束してくれた。


その間、軍部は両省庁に人材を派遣して、さまざまな説明と調整を行った。




数日後の非番の日に、俺は秋山を居住区にある自宅に招いた。


表向きは、少し遅めの昇進祝いであったが…今後の編成等についての意見交換を職務と言うオブラートを外した状態で行いたかったのであった。


俺も秋山も独り身であったため、お互い気楽なものであった。


「そうだ!秋山、年代物のいいワインが手に入ったんだが、付き合ってくれるかい?」


「ああ、いいとも。閣下の御為ならどこまででもお付き合いたしますよ。」


「ふふふ、こうしてプライベートで、気兼ねなくお前とこうして話せるのは…なんだか久しぶりのように感じるな。」


「まあね。いろんな事が起き過ぎて、上も下も大騒ぎだったからね。」


「もっとも、一般居住区の住民にはこれまでの事は伏せられているらしいがね。」



俺たちは、久しぶりに肩の力を抜いて、薫り高い琥珀色近くに熟成されたワインを堪能した。


「なあ、冬希。俺を呼んだ理由は他にもあるんだろう?」


ワイングラスを回しながら、秋山が言った。


「はは、お前には何も隠し事は出来そうにないな…」



俺たちは、夜通し新型の戦艦の装備や艦隊の編成等について語り合った。


言葉選びや肩書きなどを気にせずに発言し合う事で、いろいろと見えてくるものもあるのかもしれない。


そう思えるほど、俺たちにとっては充実した時間となった。





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