スナック横丁
男に教えてもらった遊び
男に教えてもらったお店
騙されたのだと男はいった
聞けばよく行くあの店の事
あの子の事だと教えてくれた
男はお店の常連客で
男はお気にの女が目当て
酒の飲めない男の掴み
ノンアルコーラのコーラ割り
酔ってもないのに手を伸ばし
飲んでもないのに下ネタを吐く
豪快快活達者な話芸と
下品で下劣で下衆な振る舞い
女は男の手を躱しつつ
男の言葉を受け流しつつ
転がすように接客をして
手玉にとって商売をした
端から見れば面白くもあり
はたまた滑稽にも映る日々
夢の時間はしばらく続く
女は男に気のある素振り
コーラに酔ったか女に酔ったか
はたまた店の酒気に酔ったか
男は一番高いお酒を
女に飲ませて自分に酔う
飲めもしない酒瓶開けて
女に飲ませて鼻高々で
その時はまだ思いもしない
後に抱く怒りの衝動
遂に手にする女の番号
悲劇の喜劇の終りの始まり
辿った先のSNSで
そこでようやく男は知った
あの女には彼氏がいるぞ
考えてみりゃ在りそうな事
女を売ってる商売ならば
しかし男は見抜けなかった
女は彼氏の存在自体
客に隠して働いていた
気のある素振りで酒を注ぎ
また来て飲んでと客を誘う
昼間は看護の学校へ行き
夜はお店の看板娘
せっせと働きその稼ぎで
学費を払って学んでいた
休みは彼氏とたまのデート
僅かな時間の思い出作り
一緒にいった飲み屋の席で
料理が目に映え写真を撮った
その時映った彼氏の腕を
気にせず上げた呟き一つ
目ざとく気付いた男が一人
騙されたのだと嘆いて叫ぶ
二度と行くかと電話が切れて
男が離れたスナック横丁
女はそれも仕方ないよと
グラスにとくとく焼酎を注ぐ
男が去っても俺は一人で
足蹴く通う女の店に
可愛い彼女の働く街は
男ら狂わすスナック横丁
女に教えてもらった嘘と
女に教えてもらった自分