クリスマス企画☆真夜中のパーティー
亜紀と出会ってから、もう6回目のクリスマス。だけど今まで、一度も一緒に過ごせたことがなかった。俺が仕事だったり、亜紀が仕事だったり、2人とも仕事だったり。
『クリスマス?べつに特別なもんじゃないでしょ。いつもとおんなじ。夜にケーキやらチキンやら食べるなんて、デブになりたい人がすることだよ』
数日前に亜紀が放った、衝撃の一言。
女の子はみーんな、クリスマスを楽しみにしているものだと思ってたけど…まさか亜紀が、そんなことを言うなんて。
男が言うならまだわかるけど、まさか亜紀が……。え、しつこいって?ごめんね。
だから俺は、決心したんだ―――今年のクリスマスは、絶対亜紀に“楽しい!”って言わせてやる、ってね。
……それなのに。
*
すっかり、遅くなっちゃったなあ。
ほんとなら早く帰ってご馳走作ったり、クリスマス風に部屋を飾り付けたりして、仕事から帰った亜紀を驚かせてあげるはずだった。だけど、撮影がなんやかんやと長引いてしまって、俺が家にたどり着けたのは23時を回ってからだった。とりあえず、前から予約してたケーキは無事に回収できたんだけど。
今年こそは亜紀と一緒に過ごしたかったのに、また彼女を1人にしてしまった…。
「ただいまー」
きっと、何も変わらずいつも通りにすごしてるんだろうなあ…って思いながら部屋に入っていくと、
「……おかえり」
なにやら、亜紀が不機嫌な様子でダイニングに座っていた。
もしかして俺、なにかやらかしたかな。あ!亜紀の本棚から、こっそり1冊借りたのがばれたのかな?それか、共用の高価な香水をうっかりこぼしてしまったのに気付いたとか?なんにせよ、心当たりがありすぎる……!
こういうときは、何も言わずに謝るのが1番。俺は勢いよく、「ごめんなさい!!」と叫びながら頭を下げた。
「…ほんとだよ。今日は早く帰るっていうから、私だってちゃんと準備したのに」
「……え?」
準備?
なんのことか聞こうとすると、亜紀はふいっと顔をそむけてしまった。
…よくよく見ると、なんだか今日の彼女は特にお洒落だ。いつもは家で着ないような、白いニットワンピに柄タイツ。それに、いつもは下ろしたままの髪も、可愛くハーフアップにしている。
―――もしかして。
「…クリスマスの準備、してくれてたの?」
「………」
俺の質問には答えないけど、ほんのりと顔を赤くする亜紀。
そんな彼女がなんとも言えないほど可愛くて、自分の手が冷えたままなのも忘れて抱きしめた。
「ありがと。クリスマス、俺と一緒に楽しもうとしてくれたんだよね。早く帰れなくて、ごめんね」
「…翔、手が冷たいよ」
「あっ、ごめん!」
慌てて離れようとすると、亜紀が俺の手を包み込んだ。小さくても温かい彼女の手に、じんわりと温められていく。亜紀は相変わらずサバサバしてるけど、ふとした瞬間にみせる優しさが、俺はとても好きだったりする。
「ねえ、亜紀。今からでもしようよ」
「えっ?」
「クリスマス!!」
「絶対、太っちゃうなあ」なんて言いながら、亜紀お手製チョコレートケーキと、俺が買ってきたブッシュドノエルを1切れずつお皿に乗せて、彼女は嬉しそうに微笑んでいた。そんな彼女を見ているだけで、なんだか俺まで幸せな気分になるのだった。
2人きりのクリスマスは、まだ始まったばかり☆
~Fin~




