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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
出向編 続き
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出向編-11

これから作者が忙しくなる可能性大です。

しばらく更新が遅れるかもしれません。

たぶん、年末までにはまたヒマになるので、今年中には次を投稿できると思います。

「おやまぁ、こりゃあ・・・。」

何か言葉をつなげようとしたが、つなげる言葉が思いつかない。


なんたっていきなり今から攻め込む予定の国の貴族様が目の前にご登場だ。ここがアドリミア王国でなければ速攻射殺である。


「お初にお目にかかります。谷岡中将閣下。私は先ほどもご紹介いただきました通り、キレヌ王国子爵、フォルグ・キレーです。」

まだ20代にしか見えない、よく見たらイケメンっぽい男性が頭を下げた。


だが、俺としては面白くもない。すでにキレヌ王国と“外交的”にも話すことは無いし、ましてや“個人的”にも話すことは無い。いや、あるか。銃口突きつけながら「われぇ!どないな考えしちょるんや!ぁあ!?」って。刺されたんだからこれくらい言ってもいいだろう。


「リネット中尉!帰るぞ!」

「ハッ!」

俺はさっさと帰ろうとした。


「ま、待ってくれ!せめて話でも聞いてくれんか!」

リースベト皇帝があわてて俺を引き留めようとする。

「いいですか!いくらリースベト皇帝の要請とはいえ、これ以上この場に入れると思いますか?」

「し、しかし!」

「リースベト皇帝!俺は軍人です!本国に内緒で他国の仲介で敵国の貴族と面談していたなんて知れたら、本国はなんて思うでしょうね!」

「それは承知の上でお願いしている!」

「いや、わかってない!これでも自慢じゃないが日本民主主義国国防海軍No.2ともいえる立場にいるんだ!こういう話は大使館に持っていてくれ!」


「なら、ここにキレヌ王国の貴族が居なければいいのですな?」

年老いた声ではあるが、どこか“重み”を感じる声がした。

「は、ハヴェル公爵!」

フォルグ子爵が土下座同然の感じで頭を下げる。


そう、アドリミア王国の外交の重鎮、ハヴェル・クシチュカ公爵の登場だった。



よくよく考えてみれば、あれほど1年前に名前を聞いていたのに本人に会うのは初めてだった。パッチで偽物のハヴェル公爵の顔は見たが。

「皇帝陛下。そう無茶を言うのではありません。彼・・・谷岡中将のいうことはもっともだ。彼は他国の軍人なのだから、呼び出しに応じてくださっただけでも喜ぶべきだ。」

「は、はい・・・」

ハヴェル公爵の前ではリースベト皇帝はまるで子供である。そりゃそうだ。生きてきた年数も違えば、総合的に国にかかわる皇帝と違ってハヴェル公爵は外交のみに携わってきた。いわばプロだ。そしてリースベト皇帝もバカじゃない。納得すれば受け入れる。


「さて、谷岡中将と申されましたな。どうでしょう?もう夜も遅いですし、お食事でも。最近あなたがたのおかげもあって、ここフィアンカは様々なものが集まるようになりましてな。特産の魚料理の質も日に日に上がっているのですよ。」

御託を並べてはいるが、つまりはお食事中に“おはなし”がしたいのであろう。だが、一介の軍人が他国の外務大臣級の人の誘いを断るにはそれなりの理由がいる。そう、結論から言えば“断りにくい”。

まぁ、一応は“申し訳ない。軍務がありますので”と言って逃げることもできるが。


「それはそれは。ご相伴にあずかりましょう。」

「中将!」

「リネット中尉。無線で俺の帰りが遅くなることを“飛び地”に連絡しておいてくれ。」

「・・・わかりました。」

リネット中尉は無線機のある軍用トラックまで戻って行った。



さすがは東部の辺境伯爵の家。出された魚料理はとてもおいしかった。

「貴国と交易を始めて、その玄関口となったこの町では本当においしい料理が次々登場します。特に、“醤油”と言うものを伝えられたときには驚きました。」

ハヴェル公爵はそう言いながらおいしそうに“サケのバター醤油焼き”をほおばる。

「いえいえ。こちらも他国との交渉では何かとアドリミア王国に仲介していただき、大変助かっております。どうしても我々は“未開発大陸”なんて呼ばれているそうで、どうにも苦労しているみたいですよ。外務省は。」


「ところで・・・。この度はキレヌ王国に戦争を吹っ掛けたとか。物騒な話ですなぁ。」

「それは誤解ですよ。キレヌ王国大使が日本民主主義国軍人である本官を攻撃したのです。さらには内政干渉ともいえる発言。さきに“戦争”の二文字を出したのも向こうですからね?

我々は“文明国”やら“人道的”やらを掲げていますが、けじめをつける時はつけなければなめられますからね。」

「なるほど。そう言うことでしたか。

いえね。私の友人に“キレヌ王国の貴族”が居ましてね。うわさに聞き及んだものですから。」

「ほぅ。さすが、アドリミアの外交の重鎮といわれるハヴェル公爵だ。外国の友人も多いのでしょうなぁ。」

「ええ、まぁ。私も外交一筋、と言うほどではありませんが、長年この世界を歩いてきました。

そこで、これは“友人として”あなたに話すのですが・・・。

近々、キレヌ王国の不正をした貴族が一掃されるそうで。それが、明日にでも行われるとのことです。」

「ほぅ。それは大事おおごとですな。“一掃”とは、そうとうな大規模なんでしょうな。」

「ええ、まぁ。何でも貴族の半分は対象になるだろうと。」

「これは、大規模ですな。」

「ええ。

そういえば谷岡中将。たしか貴国の代表、キジマ総理大臣でしたか。キジマ総理は“謝罪があれば譲歩”してくださる方のようですね?」

俺たちが二式飛行艇で日本民主主義国を後にする寸前にやった大演説のことだ。ちょうど従軍記者がいたためあの演説は後に新聞にデカデカと載ったそうだ。

「そのようですな。」

「これは、私の予想なのですが、キレヌ王国は3日後にでも謝罪するような気がするのです。」

「3日後、ですか?」

俺は聞き返す。


「ええ、3日後、です。」

ハヴェル公爵は力強く言った。






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