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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
出向編 続き
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出向編-9

ここからまた、通常の”出向編”に戻ります。


出向編番外はいかがでしたでしょうか?また番外をやるかもしれません。

できれば番外の感想をいただきたいです。

目覚めたらベッドの上だった。


「お目覚めですか?」

白衣を着た誰かが覗き込む。どうも目のピントがまだ合わない。

頭もボーッとしていて、誰の声か思い出せない。


まだ若干眠いと思っていると、薄目に開いた目が白衣を着た人物によって無理矢理大きく開かされた。さらに、懐中電灯をあてられる。

「大丈夫そうですね~」


なんか、眠いのに光を無理やりあてられて不機嫌になってきた。

「谷岡中将!!」

いきなり目の前にドアップで顔面が現れた。

「谷岡中将!聞こえてますか!中将!?」

「リネットさん!そんなに揺らさないでください!」

白衣を着た人物がリネット中尉を叱る。


リネット中尉・・・

副官・・・

海軍・・・


その瞬間、眠気が一気に吹き飛んだ。


「リネット中尉!!あの後どうなった!!」

リネット中尉は俺の突然の質問に驚いていたが、すぐに返答した。

「ハッ!冒険者風の3名の武装集団が大使館に侵入、うち1人がそこに倒れていた谷岡中将を大使館敷地外へ放り投げました。その後、待機していた救急車で病院ここへ。」

「キレヌ王国の現在の状況は!?」

「現在、外務省が猛抗議中とのことです。“我が国の軍人への攻撃は、宣戦布告とみなしていいのか?”と。」

「わかった。リネット中尉。報告ご苦労。こうしちゃおれん!すぐに動かないと!アドリミア大使館に行っていざと言うときの協力体制を取り付けに行く・・・

イタタタタタタ・・・」

体を動かそうとした時、腹に激痛が走った。


「ダメです!寝てなさい!」

白衣を着た人物、つまりは医者に起こした上半身をベッドに戻された。

「ぅるせぇ!今はそれどころじゃないんだよ!下手すりゃキレヌ王国に派遣された大使が殺される・・・かも・・・」

俺は医者の姿を見て段々と声の勢いを無くしてしまった。


「病院では個室病室とはいえお静かにお願いします。」

そこには白衣を着たアドリミアの大使がいたからだ。



「私たちもバカではありません。それに、日本民主主義国あなたがたの軍事力の恐ろしさは身にしみてわかっているつもりです。

アドリミア王国わたしたちがキレヌとかいう小国と貴国と、どちらを取るかわかっているでしょうに。」

ピーアさん、いや、今は“ピーア医師”とでも呼ぶべきか?とにかくピーアさんはそう言った。

「いや、ですがねぇ。どの程度支援を受けられるかは聞いてないことには分からないでしょう?」

「最低でも、キレヌ王国から逃げてきた日本民主主義国の大使たちをこちらで保護するくらい、なんてことありませんよ。」

あっさりというピーアさん。

「まぁ、そう言っていただけるのはありがたいんですがねぇ・・・。ほら、こう、マナーってものがあるでしょう?いきなりでは失礼だとか、さ?」

「アドリミアの現在の政権、つまりは姉さんの政権が誰のお力添えで成立したことか、私たちは忘れていません。その大恩に比べれば、安いものです。」

「そういっていただけるとありがたいですけどねぇ。」

とりあえず在キレヌ王国日本民主主義国大使館の大使たちの生存確率がわずかながら上がったぞ。


「あとは、アドリミア派遣艦隊、かな。」

アドリミアの内乱の後、内乱出兵の代金としてアドリミアは地下資源採掘権を日本民主主義国に条件付きで渡した。条件は“採掘権を譲渡するのは東部に限る”と言うものだった。

だが、それだけでは出兵の代金としては見合わない。外務省の連中は、フィアンカの港のはずれの土地を要求した。アドリミアは別段あまり価値の無い土地なので譲り渡したらしい。日本民主主義国はここに港を整備して、タンカーへアドリミアで取れた石油を積み込む施設を作るつもりらしい。この土地は正式に日本民主主義国に編入されたため、いわば領土の“飛び地”となった。それでそこの警備のためにアドリミア派遣艦隊が再び組織され、日本民主主義国の飛び地を警備しているのである。


万が一、在キレヌ王国日本民主主義国大使館の大使一行がアドリミアへ行けれそうになくなったら、近くの海沿いで軍艦で拾うというのもありだ。そう思ってアドリミア派遣艦隊に“いつでも出港できるようにしとけ”と命令を出しておいた方がいいだろう。


「リネット中尉、さっそく伝令に走ってくれ。アドリミア派遣艦隊をいつでも出港できるようにしておくんだ。」

「わかりました!」

リネット中尉は猛スピードで病室を出て行った。

「病院では走らないでください!」

ピーアさんが注意するが、はたして聞こえていたかどうか・・・


「さて、俺も行かないとな。」

痛いのをこらえて起き上がろうとするが、

「ダメです!」

ピーアさんにベッドに戻された。

「こちとら軍務があるんだ。下手すりゃ俺が寝ていたせいで兵が死ぬ。休んではいられないさ。」

「そんなこと知りません!中途半端な治療で患者さんを放り出したら責任とらされるのは医者なんですよ!」

「うるせぇ!海軍中将命令だ!」

「それは海軍病院でやってください!」


そうか。てっきり海軍病院へ搬送されたのかと思っていたが、ピーアさんがいるということは・・・ここは桜市立病院か。

「ならピーア医師、転院手続きをしてくれ。桜鎮守府海軍病院に。」

ピーアさんは大きなため息をついて言った。

「仕方ないですね・・・。患者さんの転院希望を無下にとり下げることはできませんし。確かに搬送は可能な状態ですからね。

わかりました。手続きしましょう。」

「ありがとうございます。ピーア医師」


無論、海軍病院に移った瞬間に自宅療養扱いになったのは言うまでもない。






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