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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
出向編 番外
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出向編 番外3

前書きに何か書こうとして・・・忘れた。

最初は説教の後に皿洗いでもすれば許してくれるだろうと思っていると、不法入国もあって最大3ヶ月拘束するというので、仕方なく正直に、ただし肝心な部分は隠して質問に応じた。


そして、警官Bに多額の手数料を取られて、換金していろいろ支払った残りの日本円を持って警察の建物を後にしたのである。



それが、現在。




お金が手に入ったので、食糧と地図など必要なものを買って、2人のもとへ戻った。


「大丈夫だった!?ミア、けがはない!?」

「大丈夫よ。エトー。だけど、剣を没収されたわ・・・」

「なんで?」

「この国は本当に平和よ。だから、武器の持ち込みも禁止されているみたい。だけど、国を出る時に返してくれるそうよ。手続きに1日かかるみたいだけど・・・」


バートが言った。

「なら、今すぐ手続して来いや。一旦正式な国境を越えれば返してくれるんだろ?国境を越えてからまたここに来ればいい。どうせ、奴隷の方はすぐには行動できないんだ。」

「わかったわ。すぐに行って来る」

「あ、ちょっと!」

行こうとした私を、エトーが呼び止めた。

「何?」

「ギルド会館で、カルマの情報を調べてくれた?」

「この国にギルド会館は無いってさ。警備兵が言っていたんだから間違いはないと思うわよ。」

「そんな国があるとは・・・」

二人とも驚いた顔をしている。それもそうだ。様々な国へ行ったが、冒険者ギルド会館が国の中に一つもない、と言う国は今までなかった。噂程度にそんな国もある、とは聞いたことがあるけど、ギルド会館が無いなら冒険者が行くこともない。つまり、私たちにとって初めての経験だった。


そして、数日作戦を練って、私たちは隣町にあるキレヌ王国大使館へ潜入した。

やり方はいたって単純。身軽な私とエトーが潜入して、奴隷を解放。正面から逃げてそこで待ち構えているバートの馬車(レンタル馬車)で逃げる、というもの。大使館には魔法の結界などは無く、いたって簡単に潜入できた。大使館にいた人たちはエトーの魔法で眠ってもらっている。


「楽勝ね~」

私がそう言うと、

「楽勝過ぎない?」

大使館の中を捜索しながらエトーが不安そうに言った。

「大丈夫!いざとなったら私がエトーを守るから!」

「ありがとうミア。だけど言いたいのはそう言うことじゃないんだ。

貴族がいるのに魔導士や魔法使いがいないのが気になってね・・・」

「キレヌ王国も小さいくせにあちこちの国と付き合っているからじゃないの?」

「まぁ、その可能性も大いにあるんだけどね。」


そう言っている間に、地下へ続く階段を見つけてエトーと私は降りて行った。

ここからが、想定外だった。


「奴隷、多くない?」

「しかも、どれが貴族の娘さんだがわからない・・・」

そう、みんなエトーの魔法で眠っちゃっているのだ。

「ど、どうしよう・・・」

「どうしようって、全部運ぶしかないじゃない!エトー!急ぐよ!」

「やっぱりそれしかない?」

そう言いながらも、私とエトーは奴隷を二人ずつ運び始めた。


馬車に押し込めるようにして乗せ、馬車を出そうとした時だった。

「侵入者だー!全員起きろー!追えー!」

大使館に声が響いた。

「魔法の効果が切れたんだ!」

エトーが叫ぶ。

「予想外に時間がかかったからなぁ・・・」

「バート、そんなこと言ってないで馬車を出して!」

私がそう叫ぶと、バートは馬車を発進させた。


「ちょっと!もっとスピードでないの!?」

「重量オーバーなんだよ!こんなにガキ(奴隷)のせたらこうなるわ!」

「追手が来た!」

追手は自走馬車5台で来た。

「重量オーバーなら、俺が降りる!」

バートが手綱をエトーに押し付けて飛び降りた。


「バート!」

エトーが叫んで馬車を止めようとした。

それを私は止めた。

「エトー、今はバートの判断が正しいわ。」

だけど、バートにとめれたのは自走馬車3台だった。


「まだ2台追って来る!」

その時、馬車の奴隷達も目覚めて騒ぎ出した。

「ちょっと!静かにして!」

その時、自走馬車が体当たりしてきた。


「キャー!」

「うわっ!?」

私たちは激しく地面にたたきつけられた。


計画では、ほとぼりが冷めるまで最初にいた町とこの町との間にある山で待機する予定だった。だけど、もうそんな計画は破たん済み。


「エトー!大丈夫!?」

「うん、なんとか・・・」

奴隷達は馬車のドアが開かなかったこともあり、無事なようだ。一人ずつ横転した馬車から脱出している。

「エトー、やれる?」

「結構厳しいかな?杖の水晶、割れちゃったし。」

エトーの持っている杖は、魔法増幅効果をもった杖で、結構な高級品だった。だけど、杖の上についている水晶が割れてしまった今は、ただの杖だ。


「やっぱり!奴隷達が逃げているぞ!」

自走馬車から降りた鉄鎧の剣士が言った。


「あなたたち!逃げなさい!」

私は奴隷に叫んだ。

「どこへ!?」

奴隷の中でも一番年長と思われる少女が言った。


「この山を越えた向こうに町があるから!そこまで走るのよ!」

「ありがとうございます!」

その町まではかなり距離があるが、それしか思いつかなかった。

「ハハ・・・。これで報酬は無くなったね。依頼者の貴族様のところに娘さんを連れて帰らないともらえないのに。」

エトーがそう言った。

「仕方ないでしょ?どちらにしたってここまで失敗した時点でもらえないわよ。連れて帰れそうに無いもの。」

「それもそうだね。」

エトーは少し笑って言った。


「それと、先に謝っておくよ。ごめん、こんなリーダーについてきたせいでこうなって・・・」

「別にいいわ。それに結構今、いい気分なのよ。正義のヒーローにでもなった気分!

じゃあ、行くよ!」

「わかった!」






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