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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
出向編 番外
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出向編-番外1

今回はお話が脱線します。番外編です。

視点は出向編の最初の方で菊崎市警に逮捕されたミアさんです。


書いてて思たのですが・・・”異世界もの”の小説っぽい。


「まったくもう!ほとんどぼったくりでしょ!」


私はミア・プラウス。中央大陸から来た冒険者。

中央大陸というのは“この世界の中央にある大陸”と言う意味で名付けられたらしいんだけど、結局それを証明できた人はいない。だけど、名前は中央大陸のままだ。その名前が定着してしまったのだと思う。


そして、今いるのは通称“未開発大陸”。

どんな高度な文明も発達しなかった大陸。のはずだったんだけど・・・。





およそ1年前。

中央大陸、西方。ハジー。

「あ~、疲れた~」

仲間のバートが冒険者ギルドのギルド会館に入った途端、座り込んだ。バートは30代の大男だがルックスがいいのでモテる。そして、大きな鉄鎧を着て大剣を振り回す姿はとても様になっている。

だが、口を開けば「腹減った」か「疲れた」しか言わない男である。

「ほらほら、さっさと任務完了手続き済ましてしまおうよ。そしたら今日はここに泊まろう。」

リーダーのエトーが言う。彼も美青年だ。だが、バートとは違い小柄で力はない。その代り魔法使いで、いつも的確な指示と後方支援をしてくれる。

「・・・同意。」

無口であまり言葉を発しないこの見た目少女は、カルム。何年か前に拾った子だ。エトーが言うには魔法の才能があるそうで、確かにエトーとともに後方支援をしてくれる。が、自分のことを多く話さない、ある意味謎の人物だ。ちなみに“見た目少女”と言ったのは、実はカルムは24歳で立派な女性だったということがバートが無理やり飲ませた酒によって発覚したからだ。

そして、私、ミア・プラウスはバートと同じく剣士。だたし、あいつみたいに大きな剣は振り回せないけど。

「とにかく、さっさと手続して宿を探しましょうよ。できれば水浴びがしたいわ。」


ギルド会館で手続きを済ませた私たちは、その町ではなかなかのランクの宿に宿泊した。

「う~ん!さっぱりした~。カルム、あんたも行って来たら?水浴び。なんか“オフロ”っていうらしいけど、お湯が出て最高だったわ!」

「お、オフロ・・・?」

おや、珍しいわね。カルムが反応してる。

まぁ、確かにオフロっていうのは初めてだしね。カルムも探究心は強いし。


翌日、朝早くにカルムの姿を見つけたら何か宿屋の主人と話していた。珍しいわね。カルムが人と話なんて。基本、10分以上会話の続く人じゃないのに・・・。

宿の食堂には別室で宿泊していた男性メンバー(といっても2人だけどね)がすでに到着していた。

「遅いぞミア!いつまで待たせるのだ!」

「うるさいわねバート。せめて挨拶くらいしたらどうなの?」

それだけ言ってバートから視線をそらし、エトーを見る。

「おはようミア。」

「おはよう、エトー。」

やっぱりエトーカッコイイ!わ、私今日も赤面せずに言えたかな・・・。

いつも朝一番のエトーのあいさつの笑顔は何か破壊力を秘めている。それが最高でたまらない。

むしろ、これがないと・・・って何考えているの!私!


「カルム、何をしていた?珍しいな、お前が一番最後とは。」

バートがやっと宿屋の主人と話を終えて食事の席についたカルマにそう言った。あのバートが指摘するくらい珍しいことだ。エトーも私もカルマが何か話すのではないかと思って注目した。

「・・・・いただきます。」

話さないんかい!

どうせ訊ねても「別に・・・」の確率が7割なので、諦めて朝食を取り始めた。


ところが、変わったことはこの後も起こった。

「この依頼、受けたい。」

ギルド会館で次の依頼を探していた時のことだ。

なんと、初めてカルマが自分の意思を示した!

これにはエトーもバートも驚いて、カルマを見つめた。もちろん、私も。

指差された先には、1枚の依頼書。


「違法奴隷業者の摘発?」

エトーが読み上げる。

依頼者は中央大陸にある国の貴族。娘が違法な奴隷業者にさらわれたらしい。その娘の救出と、違法奴隷業者への鉄槌。それが依頼内容だった。

「えっ?あんた反奴隷主義者だったの?」

私が訊ねると、いつもの「別に・・・」が返ってきた。


「う~ん。犯罪者とはいえ人を殺す内容か・・・」

エトーは少し乗り気ではないらしい。確かに、私たちは基本、魔物(正式名称:魔性動物)討伐や護衛任務を生業としてきた。確かに盗賊と戦ったことはあったが、あまりいい気分のするものではない。


「エトー、たまにはいいんじゃねぇか?報酬も高いし、諸経費も先払いと来た。確かに場所が南の大陸だから遠くはあるが、それを込みと言えるだけの報酬はあるぞ。」

珍しくバートが真面目な話をした。確かに女あさりと酒が大好きなだらしない人ではあるけど、一応この中では一番年上だ。たまに、年上らしいアドバイスをくれる。

珍しいことが続くな~、と思っていると、エトーがこちらに話しを振ってきた。

「ミア。君はどう思う?」

「えっ!?私!?」

「君だって仲間だろう?意見を聞いておくべきだ。」

「そ、そうねぇ・・・。ねぇバート。場所はどこだって言った?」

「南の大陸だ。キレヌ王国・・・聞いた事ねぇな。恐らく、アドリミアの近くだと思うが・・・。」

「別にいいんじゃない?私は反対意見は無いわ。判断はエトーに任せる。」


エトーはカルマに聞いた。

「カルマ。別にこの依頼を受けるのはいいんだけど、なんでこれを選んだか、聞いてもいいかな?」

「・・・」

カルマは珍しく、「別に」すら言わなかった。

「わかった。無理には聞かないよ。だけど、いつかは話して欲しい。いいね?」

カルマはうなづいた。


そう言うわけで南の大陸へ半年近くかけてたどり着いたのだけど・・・

キレヌ王国

違法奴隷業者

「こらしめたはいいが、肝心の貴族様の娘子さんがいねぇな。」

バートが大剣を背中のさやに収めながら言った。

「どうやらもう売られちゃったみたいだね。」

エトーが店の奥で見つけた商品リストを見ながら言った。

「売られた先は?」

私が訊ねると、エトーは嫌そうな顔をして言った。

「この国の貴族だ・・・」

いや~な雰囲気がこの場を包み込む。

もちろん理由は、相手が貴族になってしまったことだ。


「どうする?」

エトーが全員に訊ねた。

「だけど、こらしめただけじゃ報酬はくれないだろうしな。行くしかねぇんじゃねぇの!?」

めんどくさそうにバートが言った。

「そうね・・・。ってあれ?カルマは?」

私はカルマがいないことに気づいて訊ねると、エトーも

「えっ?いない?さっきまでここにいたのに・・・バート、見てないかい?」

「さぁな。ぶった切るので忙しかったからよぉ・・・」


そう、戦いのどさくさに紛れて、カルマは消えていた。



番外編は1~4まであります。その後は本編に戻る予定です。


感想お待ちしてます。

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