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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
出向編
91/174

出向編-8

今回は区切りが悪かったので、いつもの2倍です。


それと、活動報告でご意見を募集しております。ぜひともご協力をお願いいたします。

アトリス商会からの情報提供は驚くことに依頼した翌日には海軍総司令部に届いた。しかも、バジナさんがわざわざ持ってきてくれた。

「こ、こりゃあ・・・」

「す、すごいですね・・・」

俺もリネット中尉もその内容を見て驚いていた。


「キレヌ王国の貴族の犯罪、不正、その他もろもろのリストです。」

さも当たり前と言わんばかりにバジナさんがいう。

しかも恐ろしいのがこのリスト、証拠付きなのである。不正をした瞬間の写真がいくつも添付されている。

「写真付きとは・・・」

「いや~、この国で写真機に出会ったときは感動的でしたね。おかげで情報収集に証拠を追加することができるようになりました。」


日本民主主義国の輸出品は基本的に工業製品だ。特に持ち運べる程度の物が順調だ。

懐中電灯やカメラと言ったものはずいぶんな売れ行きだという。しかも、かなりの関税をかけているのに。

これは、未だに他国が我が国では当たり前にある工業製品を“高級品”だと勘違いしてくれているせいでもあるし、そもそもまだまだ国交を結んだ国が少ないことも理由に挙げられる。

例えばアドリミア王国は我が国と一番最初に正式な国交を結んだ国であるが、高い関税で輸入した工業製品にさらにお値段上乗せして他国に転売できるのであまり文句は言ってこないそうだ。


現在では、“カメラと懐中電灯と腕時計の国、ニホン”として世界に知られ、それに伴い写真やカメラの存在も知られてきた。

そのため、証拠写真を見せても“絵が上手いな”なんていう人は世界的に少数派になりつつある。


それはさておき、これをそのままそっくりキレヌ王国に突き付けたら大変なことになるのは間違いない。一応このリストには不正をしていない貴族の名前も描いてあるが、圧倒的に不正をした貴族の方が多い。


「国がつぶれるぞ、こりゃ。」

そういうとバジナさんは笑って言った。

「その時はその時です。我々はこれをネタに商売することもありますし、逆にわざとこれを公表して混乱期にビジネスチャンスを探すこともあります。」

「オイオイ、それって・・・」

「まぁ、貴族にとっては自業自得ですし、これを公表した我々に国民は感謝しますしね。」


いや、下手したら内乱が起きて死人が多く出ますよね・・・。

俺はバジナさんの仮面の下を垣間見たような気がした。


「それで、対価の件ですが。」

「ああ、紹介だな。どの企業だ?」

「カーレ法律事務所です。」

「あ、なるほど。」

通称、谷岡中小企業連合の中でも一番成功した企業だ。老舗の法律事務所で、俺が株式購入と言う形で資金援助をして立ち直った。現在は大手企業相手に法律相談ビジネスを手掛ける優良企業だ。

だが、今度は仕事が多くなりすぎて“紹介”がないと新規顧客を取らない、と言うことになってしまったのだ。

「わかった。連絡しておきます。」

まぁ、バジナさんの仮面の下がどうであれ、もらうものはもらったのだ。対価は支払わなければならない。


俺はバジナさんが帰った後、連絡しておいた。


「なんか、あまり好感を持てない方ですね。」

リネット中尉が不機嫌そうに言った。

「まぁ、世の中全員が善人とは限らないさ。」

俺はそう言いながら書類を吟味していった。



13年12月12日

桜市に雪が降る中、汗っかきなルーベルトさんに俺は呼び出されていた。

「本っ当に申し訳ありません!オードリアン男爵がこちらでいう“集団少女暴行事件捜査本部”の捜査員を連れてこいとおっしゃっているのですが、レギーナ本部長は「自分で来な、逮捕してやるから」の一点張りで・・・」

本当に強気だなー、菊崎市警のレギーナ本部長。

「まぁ、一応菊崎市警出向中で捜査本部の一員になってますからね。別にいいですけど。」

そう、やってきたのはキレヌ王国大使館。この前騒動があったばかりともあって桜市警機動隊と応援の菊崎市警機動隊が未だにうろうろしている。一応陸軍は帰ったが、いまも治安維持出動命令は発令中で何かあれば陸軍だけの判断で出動できる状況である。


そして、俺はルーベルトさんと一緒にキレヌ王国大使館に入った。


「それが、わしのかわいい奴隷たちを奪っておる組織の者か?」

デブった、いや、デブくなりすぎて立てるかどうか怪しいレベルに達している男が、大使のオードリアン男爵だった。


正直言おう。

うん、キモイ。

俺らが来ても未だにハンバーガーらしきものを食べているし、よだれふけよ。汚いねぇな。

「えっ、まぁ・・・」

ルーベルトさんが口ごもるので俺は自己紹介した。

「谷岡と申します。本職は海兵ですが、現在菊崎市警に出向中でして・・・」

「ええい!難しい言葉を並べるな!“はい”か“いいえ”で答えろ!

わしの可愛い奴隷どもを取り上げたのは貴様らか!?」

うん、キモイしバカだ。こいつ。さっきから口の中の物が若干飛び散ってんだよデブ!

「はい。その件にかかわっているうちの一人です。」

「そうか!いい度胸だな!役人風情が!

はやく奴隷を返せ!でないと戦争を起こすぞ!」

「それはできません。我が国にも法律がありますので。」

あ~、いっそのこと、“起こせば?”って言いたい!

「貴様らの法律なんぞ知ったことか!このキレヌ王国男爵であるわしが命令しておるのじゃぞ!」

「私はあなたの命令を聞く筋合いはありません。」

「な、なんじゃと!?貴様、もう少し物言いを考えよ!」

バカすぎて話しているのも嫌になる。


だが、オードリアン男爵も俺と話しても埒が明かないと思ったのか、矛先をルーベルトさんに変えた。

「やいルーベルト!これはどういうことか!直接話しても解決しないではないか!」

「私は“ご自分で言ってみてはいかかですか?”と提案しただけです。必要があらば連れてくると。」

「うるさい!とにかくわしの奴隷を返せーーーー!!」

オードリアン男爵は自分の食べていたハンバーガーらしきものを投げた。だが、球体に申し訳程度に生えた手足では思うように投げれなかったのか、ハンバーガーらしきものはオードリアン男爵の股の間に落ちただけであった。

恐らく、投げつけたかったんだと思う。


「そういえばオードリアン男爵、あなたの奴隷たちを少し調べさせてもらいました。

16歳のアヤカっていう子、拉致して無理やり奴隷にしましたよね?それは、キレヌ王国の法律に触れるのではないのですか?」

「ふん!そんな証拠がどこにある!」

俺は拡大コピーしておいた写真を見せた。

「これは、アヤカを拉致する瞬間です。」

「そ、そんな作り物でごまかせると思っているのか!?」

「さてね?それはキレヌ王国の国王にでも判断していただきましょう。」

「な、なんじゃとぉ!」

かなり驚いたらしい。驚いて立ち上がろうとしたのだが、予想通り立てなかったようだ。そのかわり、巨体が一瞬椅子から離れた。


「し、しかし!そんなものをどうやってこ、国王陛下に届けるというのだ!

「本官もそうですし、このルーベルトさんもそうですが、この国で外交に少なからず携わっています。そんな人物が訪ねてきたら、無視しますかね?」

オードリアン男爵はあからさまに動揺していた。というか、俺が人生で会ってきた人の中で一番わかりやすく動揺していた。面白いを通り越し、“こいつバカにしているのか?”とムカつくレベルで分かりやすい。


「アロー!アロー!」

オードリアン男爵が叫ぶと、鉄鎧を着た剣士が出てきた。

「お呼びですか?男爵。」

「その者たちを捕らえろ!我が国を危機に陥れる賊じゃ!」

やばい、駐在武官が出てきた。

そして大使館内は他国。つまり、俺に残された選択肢は・・・


「ルーベルトさん!逃げますよ!」

「ひ、ひゃい!」

俺はドアを蹴破って廊下に出た。



走る!走る!走る!

階段を降り、正面玄関を開ける。


「覚悟!」

ドアをかけた瞬間、門番が切りかかってきた。また鉄鎧を着た剣士だ。

俺は頭を下げ、ルーベルトさんは地面に投げつけた。その瞬間頭上を剣がヒュッと音を立てて通過する。

「危ねぇんだよバカ!」

俺はそう言って思いっきり門番の腹を蹴った。


ガッシャーン!という大きな音がして門番は倒れた。鉄鎧を着ているのだ。すぐには起き上がれないだろう。


「ざまぁ見やがれ!」

ひっくりかえった亀のようになっている門番を見て思わずそう言った。


「待たんかーーー!」

そう言いながらアローと呼ばれた剣士が走ってきた。鉄鎧を着ているので足が遅いのだ。だが・・・

「ふ、増えとる!」

いつの間にか鉄鎧剣士は8名近くにまで増えていた。

「やばいやばいやばい!逃げるぞ!ルーベルト!」

もう余裕なんてない!あんな人数を場馴れしていない役人連れて戦うのは無理だ!いくら軍事訓練で多少鍛えても1対1が限界だ!


というか戦う必要はない!あとは10m先にある門を出てしまえばこちらの物だ!

「前!」

ルーベルトさんが叫ぶと同時に、腹に衝撃が走った。

最初は殴られたのかと思った。だが違った。


腹にはナイフが刺さっていた。

目の前には、鉄鎧も着ていない男性。

恐らくだが、彼は駐在武官ではない。恐らく、ただの役人か何かなのだろう。

「神よ、我が罪を見逃したまえ・・・」

とつぶやいている。


どうみても、人殺しになれていない人物だった。

「クソッたれぇ!」

渾身の力を込めて男性を殴る。

男性は吹っ飛んでいった。


「谷岡中将!」

ルーベルトさんが近寄ってくる。

「構うな!行け!追手が来る!その門を出れば勝ちだ!」

「ですが!」

「行けぇ!」

俺は思いっきりルーベルトさんの背中を押した。


門の方を見ると、多くの人が詰めかけている。その中へ、ルーベルトさんが駈け込む。

「谷岡中将―!」

リネット中尉も門の向こうで叫んでいる。

後ろには海軍陸師団、陸軍、桜市警、菊崎市警が勢ぞろいしている。

だが、彼らはこの門の中に入れない。


あと、この10mが・・・・



「なんでよ!なんで誰も助けに行かないのよ!」

門の向こうで声がする。

誰もが悔しそうな顔をしているのが分かる。

だが、それと同時に鉄鎧の集団が近づいているのもわかった。



その時、ガキィン!という金属同士がぶつかる音がして、鉄鎧が倒れる音がした。

「誰も助けないなら、私が助けるわ!」

女性の声がした。


この声、どこかで・・・



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