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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
出向編
88/174

出向編-5

夜中更新ですいません。

あとで更新しようとか思うと絶対忘れるので。

役人

特に外務省は自分の所属する組織の直属の上位組織であるのに、あまりいい印象は持っていない。

正直、ルーベルトさんが来た途端、おもわず嫌な顔をしてしまったほどである。


「あの~、こちらで奴隷の少女が保護されてますよね?合計で17名。」

だが、予想外に下手したてに出る人だった。

「ええ、確かに。現在捜査本部を立ち上げて我が菊崎市警が全力で捜査中ですが?」

レギーナ本部長の方がむしろ高圧的だ。

「そうですか・・・これが参ったことになりましてね・・・」

ルーベルトさんはハンカチで汗をぬぐった。そんなに暑くないのに。どころか12月である。


「あの奴隷の持ち主は、キレヌ王国のオードリアン男爵。先日桜市内に設置されたキレヌ王国大使館大使。ですよね?」

俺がそう言うとルーベルトさんはため息をしながらうなづいた。

「正直、外務省われわれとしても非常に厄介でして・・・」

「と、いうと?」


「まず、キレヌ王国をご存知ですか?」

レギーナ本部長は首を傾げ、俺とリネット中尉はうなづいた。

「確か、アドリミア王国の南方の方にある小さな国だったと記憶していますが。」

リネット中尉が答えた。

「ええ、そうです。

こういう言い方をしてはなんですが、その程度の国です。正直、どうでもいい国です。外交も“一応”程度に持っておけばいい。

そこを、相手が盛大に勘違いなされているようでして・・・」

「ほぅ・・・」

「昨日の新聞を見ましたか?」

俺とリネット中尉は見ていない。なぜなら仕事が多忙過ぎたからだ。

「もしかして、あの“大ヒンシュク行進事件”ですか?」

レギーナ本部長が思い出したように言った。

「そうです。」

ルーベルトさんもうなづいた。

「大ヒンシュク行進事件?」

「ええ、あのオードリアン男爵が桜市の大使館に入るとき、奴隷を見せびらかすようにパレードをしたんです。もちろん、奴隷を連れてくるなと外務省は再三再三さいっっさん!!警告したのですが、連れてきやがったのです!

それに、パレードも全く予定していなかったことです。突然の予定変更、奴隷を見せびらかすパレード、これに激怒する桜市警。これを抑え込むのにどれだけ苦労したことか!」

ルーベルトさんは突如あらぶった。その後、再びハンカチで汗をぬぐい、「失礼しました・・・つい・・・」と謝罪を入れて話をつづけた。

「国民から桜市警にオードリアン男爵を逮捕しろという電話が殺到、そしたら桜市警本部長は外務省に責任を丸投げしました。まぁ、責任が外務省(我々)にあるのは間違ってないのですが・・・」

ルーベルトさんはため息をついた。

「それで?結局ここに何の用ですか?」

レギーナ本部長が訊ねた。

「一応は、キレヌ王国大使館の使いです。奴隷を帰せ、と。」

「菊崎市警本部長としてお答えします。我が国は奴隷を禁止しています。よって返還義務など一切存在しません!悔しければここまで来い!暴行罪と逮捕監禁罪で逮捕してやる!

と、お伝えください。」


これを即答するレギーナ本部長はすごいと思う・・・。


「もちろん、それを外務省と連名でお伝えさせていただきます。」


こうして、ルーベルトさんは汗を拭きながら帰って行った。

「ありゃあ近々汗のかき過ぎで脱水症になるぞ。」

「先に胃に穴が開くのでは?」

2式不整地走行車に乗りながら俺とリネット中尉はそんなことを話していた。

だが、そんな冗談で笑っていられるのもこの日までだった。


翌日、日付が変わったばかりのころ、電話がかかってきた。

“たにさん!大変だ!”

「どうした佐藤。F-15でも発見したか?」

“むしろその方がよかった!むしろ発見したい。じゃなくて真面目な話だよ!”

「ほぅ。」

“陸軍が治安維持出動した!”

・・・

頭が理解するのに3秒かかった。

「はぁあ!?」

“海軍には来てない!?”

その時、内線電話が鳴った。リネット中尉が取る。

「谷岡中将!斎間大将から緊急です!」

「わかった。佐藤、ちょっと待ってろ。」

外線電話を切らずにそのままにして、内線電話に出る。


“谷岡中将、治安維持出動命令が出た。編成は任せるから一部主力艦艇を桜鎮守府へまわせ!”

「状況は?」

“先ほど部下を走らせた。すぐに書類が届く。”

「分かりました。」


外線電話を取った。

「佐藤、こっちにも出た。」

“やっぱり。”

「いったい何事だ?」

“詳細来てないの?”

「すぐ来る予定だが、まだだ。」

“キレヌ王国大使館の大使が戦争を仕掛けるとか言ったんだ。しかもその原因が奴隷を返せだって。”

「マジかよ・・・。」

バカも極まれり・・・。ここまで来るとあきれてものが言えない。

“あ、ごめん!兵器廠にもなんか来た!じゃあね!”

「おう、情報あんがと!」


そこへ、斎間大将の使いがやってきた。斎間大将も24時間営業だ。副官に補佐官が3人もついている。恐らく、補佐官の誰かだろう。


書類にさっと目を通す。

「リネット中尉!ラジオを付けろ!」

「はい!」

“・・・日の丸ラジオ、現在予定を変更して臨時に放送しております。現在、先日設置されたばかりのキレヌ王国大使館前では多くの市民が「奴隷反対」を掲げて殺到しております。桜市警が周辺を封鎖しようとしていますが、24時間眠らない都市、通称24時間都市となった桜市中心部にあるこの場所を封鎖するのは困難なようです!”

「こりゃまずいな・・・大使館を襲撃させたら相手方に戦争を起こさせるいい理由を作らせてしまうぞ。」

「だからこその治安維持出動ですか。」

リネット中尉が訊ねた。

「いや、多分万が一戦争になったらも考えているんだろう。じゃないと海軍を動かす理由がわからん。」

「“威嚇”じゃないですか?本気を見せるというか・・・」

「そうかもな。とにかくは艦隊の編成だ。」

俺は猛スピードで命令書を作り、リネット中尉に持たせて海軍陸戦師団詰所へ走らせた。


「やっぱり副官がいると楽だ。」

そう言いながらも俺は電話を取った。


日が昇るころ、いつの間にか現れた海軍主力艦艇に桜市の人々は驚き、国内中にこのニュースは広まった。


だが、以前とは違う点があった。


この国はもう、多くの国と外交を結びつつあった点だ。




ニュースは簡単に、


国境を越えて行った。





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