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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
出向編
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出向編-4

はてさて、すでに24時間営業を副官リネット中尉とともに5日連続でやった俺は、123時間ぶりの睡眠をとりに応接セットのソファーを目指して歩いていた。


足が重い。すでに椅子に座り続け過ぎておしりで血流が止まり、足の感覚はほとんどない。


「やっと・・・寝・・・」

「谷岡中将!大変です!」

応接セットに倒れこむ寸前、まさかのタイミングで一足先に寮へ戻ったはずのリネット中尉が走りこんできた。

俺はその姿を見て驚く。

「リネット中尉・・・。結構可愛い系の寝間着着るんだな・・・」

「それどころではありません!急いで行きますよ!」

「どこへ?」

「菊崎市警本部です!」

「・・・・その前に、着替えような。リネット中尉。」


リネット中尉の運転する赤色回転灯付2式不整地走行車(つまりは高機動車)に乗って菊崎市警本部へ駆けつけると、アフル警部が玄関で待っていた。

「こちらです!」

そう言ってアフル警部は早足で駆け出して行く。

「ちょっと待ってくれ。俺はまだ詳しい話を聞いていないんだ!」

「ならば見たほうが早いです!」


連れて行かれたのは、応接室だった。

アフル警部はノックもなしに応接室に入る。

俺も、何にも心の準備できないまま、アフル警部に続いた。


「今度は誰が来たの?誰が私の話を分かってくれるの?」

そこにいた女性が言った。だが、俺は目を見開いていた。


体についたおびただしい傷の数々。着ているものもすでに服なのかボロ布なのかわからない。

「何をしている!着替えくらい持ってきてやれ!あと何か飲み物!」

「は、はい!」

俺が怒鳴るとアフル警部が飛んで出て行った。

応接室にはリネット中尉と俺、そして女性だけが残った。

「どうも失礼しました。」

そう言いながら俺は女性の向かいのソファーに座った。

「あなたは自衛隊の人?」

女性が訊ねた。

“自衛隊”。懐かしい響きだ。

「いえ、違います。この国の海軍軍人です。谷岡と言います。」

これを着た途端、女性は大きくため息をついた。

「やっとわかる人が出てきてくれた。

ねぇお願い!助けて!

私たちを助けて!!」

「ちょっと落ち着いて!」

「あなたも元日本人でしょ!私たちは奴隷同然の扱いを受けているの!お願い!助けて!

もう仲間が近くまで逃げて来てるの!お願い!」

女性は俺の軍服を力いっぱい引っ張りながら言った。

「仲間は何人?」

「16人!」

「ついてきて!」

俺はそう言うと応接室を飛び出した。

リネット中尉が早足でついてくる。

「リネット中尉、車!」

「はい!」

リネット中尉は先に走って行った。

そこへ、替えの服とコーヒーを持って来たアフル警部が驚いた顔をする。

「ちょっと!中将!?どこへ!?」

「いいかアフル警部!今ここから出せるありったけのパトカーを連れてついてこい!」

「えっ!?あ、はい!」


正面玄関には2式不整地走行車がドアを開けて待機していた。

「乗って!」

俺は女性を乗せて飛び乗った。リネット中尉はサイレンを鳴らしながら2式不整地走行車を急発進させた。


菊崎市郊外の空地の広がるエリアで彼女たちは発見された。

未成年の少女、16人。

全員に虐待の跡が認められ、うち10人が救急車で病院へ緊急搬送された。


「ひどい・・・」

リネット中尉がつぶやいた。

「ああ、これはひどい。非人道的なことだ。

彼女たちは全員奴隷だそうだよ。脱走して来たらしい。」

「いったい誰の・・・」

「リネット中尉。この先を聞くと非常に大事おおごとになる。もしも海軍をやめたくなかったら言ってくれ。大事おおごとになる前に異動させてやる。」

そう、俺はすでに誰の奴隷だったか聞いていた。そして、これに深く首を突っ込むとさらに大変なことになることも安易に予想できていた。

だからそう言ったのだが、リネット中尉は即答した。

「いえ、この件、とことんやらせてください。」

「下手したら、海軍から追い出されるぞ。」

「構いません。」

「よし、ならついてこい。」


翌日、菊崎市警本部長(菊崎市警のトップ)に言って、“集団少女暴行事件捜査本部”を立ち上げさせた。“出向”という名目で、捜査員の半分は海軍兵となった。

本来、俺に市警本部長を脅せるような権力は無い。軍人が警察に出向になった場合、将校だと“警部補”、それ以下だと“巡査部長”か“巡査”相当の階級扱いとすることになっているからだ。これは、日本民主主義国においては“警部以上の階級の者は事件捜査の決定権を持つ”とされているためだ。“出向”扱いの者に事件捜査の決定権を与えられないのは当たり前だろう。

だが、この制度で将官クラスが警察に出向になったことは無い。だから、俺の立場はいまいちあやふやなものとなっていた。


だけど、今回はまったく脅していない。菊崎市警本部長、レギーナ・アノルーは俺が“集団少女暴行事件捜査本部”を立ち上げるように言うと、こう言った。

「私と菊崎市警をなめないでください。この件は、菊崎市警が全力をもって捜査に当たります!」

女性でまだ若いのにしっかりしているな。と少し思った。

「それでですね。昨日保護した女性から聞いた話なんですが・・・。ちょっとまずいことに。」

「と、いわれますと?」


「この件、間違いなく外交問題に発展します。保身を考えるなら突っ込まないほうがいいですよ?」

俺がそう言うと、レギーナ本部長はこう返した。

「そこまで知っていて私に捜査本部を立ち上げるように言ったということは、元から私を巻き込む気満々だったんでしょう?」


あ、やっぱりばれてたか。

菊崎市警に捜査してもらわないと、海軍だけじゃ動きにくかったからね。


そこへ、予想通りの人物がやってきた。


「外務省南方方面課のルーベルトです。」






なんか、問題事に外務省が絡むことが多いような気がしてきました。

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