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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
出向編
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出向編-2

一気に寒くなりましたね~。

現在作者は東日本地域に住んでいるため、外は雪景色です。

みなさん風邪をひかないように気を付けて。

数か月ぶりの菊崎市はまるで印象が違っていた。

空き地は少なくなり、街の中心部にある商店街“きくのみち”は活気で満ち溢れている。

「だけど満ち溢れすぎちゃって、トラブルも絶えないんですよ~」

菊崎市警のアフル警部が苦笑いしながら言った。


今、俺とその副官、リネット中尉は菊崎市警の制服を着て犬耳警官アフル警部案内のもと菊崎市内を歩いて警邏していた。あ、犬のおまわりさんとか思ってないからね。うん。

と言うよりはアフル警部に案内してもらっていたといったほうが正しいか。何しろ急速な発展で、街の姿は日々進化しているのである。今でも建設中も建物は多く、菊崎市庁舎も早速増築工事が決定したという。


「何だこらぁ!」

「うるさいわね!」

そう言っているそばから早速ケンカが起きた。

急いで駆け付ける。


「どうされました?」

アフル警部が声をかける。

「あ、駐在さん!聞いてくださいよ!この女、食い逃げですよ!」

「だーかーらー!お金は持ってるでしょ!」

食い逃げ容疑、と言うよりかは逃げてないので無銭飲食容疑の女は財布と思しき袋の口を開けてアフル警部に見せつけた。

「ちょっと失礼。」

そう言って俺は財布の中身を覗き込んだ。


お札がない。

「ちょっと取り出してみていいですか?」

「盗らないでよ!」

「警官がそんなことするわけないでしょう・・・」

正確には軍人でもあるけどね。


財布の中身の硬貨を取り出してみると、銅でできた外国の硬貨だった。つまりは外国のお金。

「こりゃ、どこのお金だ?」

「えっ!?大陸硬貨を知らないの!?どんだけ田舎なのよこの国は!」

リネット中尉にも見せてみるが、答えは俺と同じだった。

「日本円はお持ちですか?」

ここで言う“日本円”は“日本民主主義国円”のことである。が、長ったらしいのでみんな“日本円”と呼んでいる。

「何それ?」

女は首をかしげた。

アフル警部は呆れたように言った。

「何それって、国境を通るときにでっかく書いてあったでしょう?“この国では日本円しか使えません。必要な分だけ換金していきましょう。”って。国境には役所の換金所もあったはずだよ?」

「えっ?私、山を突っ切ってきたから・・・」

あっ(察し)


「リネット中尉、パトカー呼んで。」

「はい。」

無銭飲食と不法入国容疑で女は逮捕された。


菊崎市警

大場警察署

第5取調室

「氏名、年齢、出身国は?」

「女性に年齢聞くって失礼じゃない?」

ピキッ

「いいか?今、自分の立場分かってる?」

「さぁね。VIP待遇?」

ピキピキッ

「アフル警部、留置期限ってあと何日だっけ?」

「逮捕してから最大1か月です。理由があれば延長できますけど。」

「銃刀法違反、不法入国、無銭飲食で3ヶ月くらい行けると思うか?」

「経験から言えば行けます。」

「んじゃあ、こいつは3ヶ月かけてゆっくり取り調べるか。」

いい加減頭に来た俺がそう言うと、女は表情を一変させた。

「ちょっと待ってよ!3ヶ月もこんなことを続けるの!?」

「話す気ないんだろ?なら仕方ないな。何だ、話す気になったか?」

「わかったわよ!話すから!」

「最初からそう言えばいいんだよ・・・」

一体何なんだこの女・・・


「名前はミア・プラウス。19歳よ。出身は中央大陸のセル。これでいいかしら!?」

「はい、次。何しにこの国へ?」

「えっ!?まだあるの!?」

「ああ。まだまだたくさんあるよ。俺自身うんざりするぐらい。だからちゃっちゃとやろうって言ったんだよ。」

「早くしてよ!」

「なら答えろ。この国へは何しに?」

「私は見ての通り冒険者よ!ここには冒険者ギルドも無いの!?」

俺はアフル警部を見た。

アフル警部は軽く首を横に振るだけだった。

それを見たミア被疑者はため息をついてパイプいすの背もたれにもたれかかった。


「だからこんな未開発大陸に来たくなかったのよ。」


ん?

「と、言うことは誰かに言われてきた、と言うことか?」

「私は冒険者よ。あなたたち田舎者は知らないでしょうけど、冒険者っていうのは依頼を受けて仕事をするの。つまり、私は依頼を受けてこの国に来たってわけ。」

「仕事の内容は?」

「それは言えないわ。顧客情報ですもの。」

まぁ、そう言われると思っていたけどな。


そこへ、リネット中尉が顔を出した。

「谷岡中将、ちょっと。」

手招きされて取調室を出る。

「国境警備警察の方が来ています。」

そう言われてその“国境警備警察の方”を見た時、ちょっとした違和感を覚えた。初対面じゃないような気がしたのだ。

「おひさしぶりですね。覚えてますか?」

「・・・やっぱりどっかであったことあります?」

「ええ、もう何年か前になりますが。」

「・・・あ!」

そうだ!まだ海軍準備室だったころの話だ。

俺がうっかり国境を出てしまったときに会った。

「元桜市警国境警備隊、現警察庁国境警備警察の、シュテファン・オレンハウアー警視です。」

「やっぱり!お元気でしたか!?」

「ええ、まぁ。あれから警察組織も色々と改変されまして私もあちこち振り回されましたが、結局国境警備警察ここに落ち着きました。」

「それは良かった。それで、何の用で?」

「それはもちろん、仕事ですよ。不法入国者の入国手続きです。」

「えっ?身柄寄越せ、とかじゃなくて?」

「いちいち取り調べていたら大変ですし、手続きすれば問題なしっていうのが今の法律ですから。」

「へぇ~、そっか。菊崎市が出来て、入国が緩くなったのか。」

「ええ。おかげであのスラム街は現在もぬけの殻です。近々取り壊すとか。」

「で、入国手続きって具体的には?」

「えっと~、書類への記入と、武器類の預かり。そして入国税の支払いですね。」


あ・・・。


「その入国税の支払いって、大陸硬貨とかいうの、使える?」

「何ですかそれ?」


こりゃあ、取り調べは長くなりそうだ。




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