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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
謹慎編
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謹慎編-14

前回の投稿の時、ものすごい勢いでアクセス数が伸びて驚いていた作者です。

いったい何があったのだろう・・・。

まぁ、この自己満足作品を読んでくださるのはうれしいんですけどね。

客船“桜丸”、第3船倉前廊下


適当な物を積み上げてできたバリケードの前に臨時で編成された海軍陸戦隊とリネット少尉候補生が居た。

「リネット少尉候補生、状況は!?」

「ほぼ膠着状態です。何度か突入を試みましたが、火炎放射してくるのでうかつに近づけません。」

俺の後ろからデリックさんが話に割り込んだ。

「彼は何度、火炎放射しましたか?」

「えっ、たしか・・・5度突入して、10回以上はしていると思いますが・・・」

「なら、魔力切れはもうすぐです。彼に魔力を消費させてください!魔力は体力と同じです。時間が経ったり食べ物を食べたり寝たりしたら回復します。何度も突入して消費させるべきです!」


俺はリネット少尉候補生を見た。

「できるか?もちろんこちらの損害は最小限で。」

「任せてください。5度突入して死者重傷者は0です。」


それから2時間かけて、ミラー教頭に魔力を使わせ続けた。何度か突入して銃撃。するとミラー教頭が火炎放射。そして、廊下へ戻る。これを繰り返した。

「谷岡中将、まずいです。」

「どうしたリネット少尉候補生。」

「弾薬です。戦艦“音戸”からも増援が来ましたが、その分を合わせても弾薬があと2、3回分しか持ちません。」

「マジか・・・」

本当まじです。」


そもそも、戦闘艦に乗り込んでいる海兵から編成した陸戦隊なんてあくまで“臨時”だ。基本的に船の臨検用に少々の小銃と弾薬しか積んでない。むしろよく2時間以上弾薬が持ったものだ。さらに言えばある程度は訓練されているとはいえ、第1陸戦師団のように歩兵戦になれている兵ではない。普通なら弾薬を余計に消費してもおかしくはない状況だ。


「リネット少尉候補生、仕方ない。突入だ。今度はおどしではなく、本番だ。いいか、殺すなよ。逮捕だ。」

「・・・わかりました。」

やはり、リネット少尉候補生は“逮捕”が気に喰わないらしい。いっそのこと殺してしまいたい、と顔に書いてある。

だが、できれば逮捕したい。まぁ、法律に“絶対に逮捕しろ”みたいなことは決まってないのだが、“犯罪者は逮捕し、取り調べて裁判にかける”と言うのが日本民主主義国わがくにの制度だ。ただし、“逮捕が困難な場合は、銃殺も許可する”となっているが。


ある意味“お題目”以上に頑張っているし、すでに逮捕は困難なのだが、俺は逮捕したいと思っている。日本民主主義国が“法治国家”であることを示したいがために。


犯罪者=殺す・処刑がこの世界で大半の国が適用している“法律”だ。

詳しい資料は無いが旅商人や船会社の人の話をまとめると、犯罪者の対応は“速攻死刑”が5割、“裁判にかけるけど結局7割死刑”が3割、“しっかり裁判をやっている”国は残りの2割らしい。


日本民主主義国われわれは、その“2割”だ。ということを言いたいのだ。

だが、命より大切なものは無い。


俺は突入準備に向かうリネット少尉候補生に声をかけた。

「リネット少尉候補生、万が一の場合は射殺を許可する。判断はすべて一任する。」

リネット少尉候補生はうなづいて、突入準備にかかった。




結果から言えば、突入は成功だった。

ただし、リネット少尉候補生がやけどをした。

「いそげ!重度のやけどだ!」

俺は衛生兵を急がせた。


やけど。

日常的に聞くケガの一つではあるが、これをなめてかかってはいけない。皮膚は人間の外側を形成する重要なものだ。ここダメになると感染症にかかりやすくなるし、合併症も多くある。

とにかく応急処置としては火傷した部分に水をぶっかけることだ。そして現在は火傷部分に濡らしたベッドシーツを乗せて担架で運んでいる。


リネット少尉候補生は戦艦“瀬戸”の医務室に運び込まれた。それからしばらくして、ミラー教頭、いや、ミラー被疑者がかなり荒いあつかいで連れてこられた。

「司令、ミラー被疑者を連れてきました。」

「捕虜用の牢屋に入れておけ!あとでヘルマー大佐に頼んで交代要員を派遣するから、しばらく監視しておいてくれ。」

「ハッ!」


あとになって“副首相のSP”という桜市警の警官が来た。

「何か、お手伝いすることは?」

「無い。副首相の護衛を続けてくれ。」

「はい、わかりました。」

本当は「バカか貴様!今さら手伝うこともあるかボケ!」と言ってやりたかったのだが、大人げないと思い、このセリフは渋々海に捨てた。

「谷岡中将・・・表情が怖いですよ・・・」

ヘルマー大佐が恐る恐る俺に言った。

「ぅるせぇ!あの警官が気に喰わなかっただけだ。一番おいしいところだけ持って行くつもりだったのか?あいつは。」

「さぁ・・・。」


「あのぉ~。」

「何だ!?」

思わず怒鳴ってしまったが、よく見てみるとデリックさんだった。

「あ、すいません・・・。ちょっと不愉快なことがありまして・・・」

「いえいえ。それで、マクミラン校長とダーレン助教授からの贈り物です。」

後ろでは案内役の海兵とマルが大きな箱を抱えていた。

「ああ、これが・・・」

俺は中身を取ってみる。

一見すると普通の手錠なのだが、これが“対魔法使い用の手錠”とのこと。

「そうです。“ラッフェル”の手錠です。」

「ラッフェル?」

「世の中には魔法が効かない、魔法をはじく、魔力を吸収する。そう言った性質の物質は量こそ少ないものの種類はたくさんあります。その中でも一番魔力の吸収が激しい物質がラッフェルです。これに触れていれば、どんな強力な魔法使いでも、たとえ魔導士だろうと魔法は使えません。」

「助かります。」


これが来るまでどうしていたかと言うと、医療用の麻酔を投与してずっと眠らせていた。これで起きてご飯が食べれるだろう。逮捕してから2日間、点滴しかしてないし。

「それと、キリが無事退院しました。ありがとうございました。」

デリックさんとマルが深々と頭を下げた。

「いえいえ。


ところでふと気になったのですが、回復魔法って言うんですかね?そういうケガや病気を治す魔法ってないんですか?」

「あるにはありますが、失敗すると術者患者ともに死にますから、結構危険でして・・・」


なるほど。よく勉強になった。


魔法も万能じゃなさそうだ。




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