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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
謹慎編
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謹慎編-13

戦艦“瀬戸”

司令官室

「お呼び立てして申し訳ありません。マクミラン校長。」

俺はチャーム魔術師学校の校長、マクミラン校長を呼び出していた。白髪で初老の男性は杖を突きながら椅子に座った。

「いえ、このたびは手前どものがご迷惑をおかけしております。」

「単刀直入に聞きます。いったい何でこんなことになったのでしょう?」

「それは・・・日本民主主義国あなたがたへの嫉妬、ではないでしょうかな?」

「と、いいますと?」

「ミラー・ハウエル教頭は、魔道機械工学の権威です。その研究成果は素晴らしく、その成果で教頭になったと言っていい。ところが、あなた方はそれを魔法以外で、しかも彼の研究の100年くらい先のことを平気でやってのけた。

彼は野心家です。私も見ての通り歳だ。あと10年もしないうちに引退です。その後釜争いも激しいと聞いております。それで蹴落とされるのが嫌だったのでしょう。」

「それって、自暴自棄ですか!?」

「いや、彼が望んでいるのは恐らく、


チャーム魔術師学校われわれ日本民主主義国あなたがたの衝突でしょう。」


意味が分かった。


もしここでチャーム魔術師学校と日本民主主義国の国交が断絶し、戦争になったとする。そうすれば機械技術の優位性はミラー教頭のもののままだ。例え罰を受けたとしても、敵(=日本民主主義国)の兵器の研究にはミラー教頭が不可欠になる。つまり、校長は無理でも魔道機械工学の権威は失墜しない。

そもそも、本人はばれない様にやって日本民主主義国われわれの責任にするつもりだったようだが。


「それにしてもあなた方は優秀だ。ミラー教頭をどうやって犯人と断定したのです?」

「それは、軍事機密ってやつです。」

ここで、“実は特殊部隊を忍び込ませてありまして・・・”なんて言えたらかっこいいのだが、犯人と断定できたのは本当に偶然だ。

コートニー少尉候補生によると、手荷物検査の時に海兵が不審なものを発見した。だが、持ち主がミラー教頭であったうえに、“これは魔法道具で・・・(中略)・・・チャーム魔術師学校の技術を見てもらいたくて持って来た”とのことであったので“危険物”と断定できずに通してしまった。

それが偶然コートニー少尉候補生の同期で、その話を聞いたリネット少尉候補生とコートニー少尉候補生は手の空いている海兵を使ってミラー教頭を張り込ませたのだ。

すると海兵が不審な行動をするミラー教頭を確認。声をかけた瞬間、ミラー教頭は海兵に魔法でそこら辺にあった物を飛ばしてぶつけ、逃げ出したのだ。爆発は、その数秒後に起きた。

負傷した海兵は無線でこの事を報告、そしてリネット少尉候補生とコートニー少尉候補生がすばやく動いたわけだ。


つまりは、偶然優秀な海兵と補佐官がいて、初動が上手く言っただけの話だ。

あれ、ということは・・・警備の最高責任者である俺に爆発が起こった時点で責任が生じているような・・・


まぁ、それは後回しで良いだろう。


さて、事件の背景はわかった。

問題はこれからどうするか、だ。

残念ながら警察ではないので籠城事件の解決なんてやったことがない。ましてや説得なんてさっぱりだ。


「それで、中将。あなたはどうされるのですかな?彼を。」

マクミラン校長が俺に訊ねる。

「さて、どうしようか悩ましいところです。」

「では、我々で処分します。」

「処分!?」

「はい。もちろん。これだけのことをやったのです。彼には死んでもらいます。」

怖っ!ってかかなり物騒!

「いやいやいやいや!やりすぎではないですか!?」

「人間、殺すことよりも生かしておくことの方が困難なんですよ。」

そういってマクミラン校長は席を立とうとした。

「お待ちください!

“桜丸”は我が日本民主主義国船籍の船です!よってこれは日本民主主義国で対処します!」

「ほぅ。あなたらにできるのかな?」

「人間、何事も経験すべきですよ。」



と、デカいこと言って来たはいいが・・・。


「マジでどうするか・・・」

艦橋で頭を抱えることになった。

「コートニー少尉候補生!リネット少尉候補生からなんか連絡あったか?」

「いえ、状況は依然として膠着状態とのこと。互いににらみ合いだそうです。」

あ~、大人しくチャーム魔術師学校に協力を求めればよかった~。校長に任せておけばよかった~。(泣)

だが、職業柄それはやりたくない。最悪協力を求めてもいいのだが、日本民主主義国われわれの対処能力はその程度、と言うことになってしまう。


あ~、こんなことなら警察官でも連れてくるんだった。


「コートニー少尉候補生。俺は籠城現場へ行ってくる。」

「ハッ!」

俺は艦橋を後にした。


「あ!谷岡中将!」

途中で声をかけられた。誰かと思えばデリックさんだ。

「本当にありがとうございました!キリは無事助かるそうです。」

「それはよかった。キリさんにお大事にと伝えておいてください。」

「ええ!本当になんて感謝すればいいか・・・」


あ。そうだ。


「感謝してくれるんなら、ちょっと協力してくれません?」

「へっ?」



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