市街-2
しばらく海軍話とはお別れですかね・・・。
リアルにしようと思っていると、胃もたれするような作品になりそうで心配です。
獣耳・・・獣耳・・・
路面電車で獣耳を発見してからとにかく獣耳が気になって仕方なかった。
別に獣耳が好きだ。というわけではない。
少なくともこの世界に来る前まではそうだった。
しかし、“ない”と思ていたものがいざ目の前に現れると誰でも興味を持つでしょう?
それと同じだ。
そう思っているうちに、せっかく町の中心部と思われる場所で路面電車を降りたのに、いつの間にか店も少なくなってきていた。とにかくおなかがすいたのでカフェに入る。
いったい俺は何をしているのだろう・・・
そう思いつつコーヒーと軽食を楽しむ。
その後、当てもなく町をさまよい、たどり着いたのは町はずれだった。
いや、正確には違うかもしれない。
“スラム街”といえば正しいか。
佐藤から日本民主主義国の国境は聞いていた。
“南は海、北が山脈、東が未定で西が川”
どうやら俺は西へ来てしまったらしい。
西には大きな川が流れていた。この世界に来る前の日本では見たことの無いような大きな川だ。
そこにはかなり大きく立派なレンガ橋かかかっていた。幅は道路で言えば6車線くらいだろうか?とにかく広い。
警官が検問を設置していた。これが入国審査所であることは後で知ったが、身分証を見せれば簡単に通してくれたのであまり気にしなかった。
200mくらい橋を渡った先には、バラック小屋が大量に建っていた。てっきり住宅街かと思って橋を渡ったのだが、そうでないことは一目瞭然だった。
人々は服かボロい布かよくわからないものを着て、木などで作った粗末な小屋に住んでいた。ここには獣耳はたくさんいた。それどころか二足歩行する動物(?)までいる。
日本民主主義国の対岸に、川に沿うようにしてスラム街は広く広がっていた。
「マジかよ・・・」
正直テレビ以外でスラム街を見たのは初めてであったため、衝撃はデカかった。
スラム街の人からは注目の的だった。もちろん俺も鈍感ではないから場違いな格好をしていることくらい気づいている。よりによって軍服のまま来てしまった。
しばらくは“見てみたい”という好奇心と“危険だ。帰った方がいい”という不安が戦っていたが、ある程度見学すると好奇心は小さくなり、戻ることにした。
だが、遅かった。
後ろを振り返ると木の棒や包丁で武装した方々が勢ぞろいしていたのだ。
「何か、御用ですか?」
苦笑いしながら話しかける。正直運動は苦手だし、武術なんて10年以上前に空手を1年程度しかやったことが無い。
話し合いで解決するならそれに越したことは無いと思ったのだ。
「有り金全部おいていけ。」
男の一人が言った。
これは大変困るお話である。
もしもこれで俺が一般人であり、彼らがお金を取ったらおとなしく引き下がってくれるというのなら従ったかもしれない。
しかし、俺は今は軍人。この程度の脅しに屈していると“日本民主主義国の国防軍はこの程度か”と舐められることにもなりかねない。そうしたら彼らが我が国に攻め込んでくる可能性もある。
非情なことを言えば、それならまだましだ。棒切れや包丁でやられるような国防軍ではない。
問題は、彼らが他国の軍隊と手を組んだ場合だ。装備はそれなりのものになるし、彼らの中にも我が国に出入りしているものがいるかもしれない。簡単に言ってしまえば他国のスパイに彼らがなるのを手助けする一因になりかねない。
俺はばれない様に腰の拳銃に手をやった。正直あまり撃ったことは無い。訓練だけだ。
「待って!」
聞いたことのある声がして、その場にいた全員がその声がした方を振り返った。
「マレナ少尉!?」
俺は目を疑った。
そこにいたのは、部下のマレナ少尉だったからだ。
さらにそこへサイレン音が近づいてきた。
「警察だ!全員その場で手をあげろぉ!」
アメリカ警察並に荒っぽい登場で、パトカーが2台やってきた。
俺は、この状況から取り残されつつあった。