謹慎編-4
この作品から、”鉄道”タグ、外そうかな・・・。
タグつけるほど鉄道要素、無いですよね。
日本民主主義国
首都 桜市
桜市軍基地内
国防海軍桜鎮守府
マレナ・カニサレス中佐は鎮守府長官室で取材を受けていた。
“若い”“美人”“海軍高官”で取材するネタには事欠かない。実際、海軍総司令部広報部もそれで人員募集ポスターまで作ってしまうほどだ。
「ありがとうございました!良い番組にできそうです!」
日の丸ラジオのカミラ・ペッテション記者は犬耳をぴくぴくさせながらお礼を言った。
ちょうどその時、電話が鳴った。
「桜鎮守府長官室です。」
マレナ中佐ではなく、桜鎮守府長官付副官が電話を取った。そして少しして電話をマレナ中佐に差し出した。
「もしもし?」
“ああ、マレナ中佐。お久しぶり。そして昇格おめでとう。”
「し、室長さん!何の用でしょう?」
“だからもう室長では・・・まぁいいや。いや、ちょっと話があってね。”
「そう言うわけで驚いてましたよ~。マレナ中佐。」
カミラ記者は戦艦“瀬戸”の司令長官室で楽しそうに事の顛末を話した。
そう、ヘルマー大佐は“高度教育”の話をマレナ中佐に譲りたいといい、俺もそれはいいと思って連絡したのだ。
「うん、それを教えてくれたのはうれしいが、なんでここにいるのかな?カミラ記者。」
「なんでって・・・。あ!聞いてませんか?私、チャーム魔術師学校に駐在派遣記者として行くことになりまして、ついでにそこまでの移動中も取材させていただきます!」
「なら軍艦に乗らずに大使たちが乗る船に乗ってろー!」
そう、今回西方派遣艦隊には15000tクラスの民間船舶、“桜丸”という客船が加わっている。外務省の“見せつけ”の一つだ。とにかく豪華に見せて、我が国がすごいことを思い知らせる気なのであろう。
だが、今回は相手が相手だ。日本民主主義国は科学技術では恐らくこの世界で最先端だろう。だが、チャーム魔術師学校は“魔術師協会”の総本山であり、そう考えると魔法技術の最先端だろう。
正直、アドリミアのように日本民主主義国が“見せつけ”で勝てるとは限らない。というか大いに日本民主主義国の負けの可能性もある。
カミラ記者が帰り際に言った。
「それにしても、マレナ中佐の人気はすごいですね~。マレナ中佐のおかげで海軍がダントツで入隊希望者が多いって知ってますか?」
「ん!?マジで?」
「ええ、特に女子受けが良くて、結構な人数が海軍へ入隊したと思いますが・・・」
出港は8月になってからだ。それまでは戦艦“瀬戸”とその2番艦“音戸”は海軍総司令部を母港にして航行訓練に励むことになっている。
そのため、スケジュールには相変わらず余裕があり、むしろ艦隊総司令の役職が謹慎扱いでその分仕事が無いため非常に助かっていた。
そこで、新たに菊崎市沖合の島に移転した海軍兵学校へ行ってみることにした。
菊崎市からは橋で“海軍島”へ行ける。俺は海軍総司令部からトラックを借りて(高級車が借りれなかった・・・)海軍島へ向かった。
海軍島には元々どこの国にも属していない現地住民がいた。それを国土開発省の役人が我が国への編入許可を取って、この島を日本民主主義国へ編入している。何でもこの辺の島には漂流者や座礁船の乗組員の末裔が住んでいることがあるらしい。
彼らは主に漁を生業としており、小型の船で近くの町まで海産物を売りに行ったりして生計を立てていたそうだ。そのため、日本民主主義国ができる前の村とも交流があった。そのおかげで編入が滞りなく言ったと言ってもよい。
ちなみに島の名前は誰もつけていなかったらしい。“いずれ正式な名前を考えないと・・・”と国土開発省と現地住民で話しているうちに海軍兵学校が出来、気づけば“海軍島”という通称名が正式な名前として地図にも乗ってしまった。
現地住民は、別にそれでいいらしい。
海軍手帳を見せれば、海軍兵学校にはすんなり入れた。適当なところでトラックを駐車し、校内を見て回る。
たくさんあるカッター(大人数で漕ぐ船。軍艦には沈没時の脱出用として乗せてある)。その横にいくつかある内火艇。そしてその先の埠頭には3隻の軍艦。
軍艦に近づいてみると、懐かしい軍艦だった。
「こりゃあ、駆逐艦“赤崎”じゃないか。」
日本民主主義国国防海軍で一番最初の“鋼鉄製軍艦”である。我が国防海軍内に3隻のみ存在する“陽炎型駆逐艦(魔改造型)”。それが、ついにここで練習艦扱いになっていた。
他2隻は新しい軍艦のようだが、海防艦らしい。陽炎型と比べて、一回り小さく感じる。
「そうです。“赤崎”ですよ。懐かしいです。」
後ろから声がした。振り返ると、そこには立派なひげを生やしたヒネク中佐がいた。
「ヒネク中佐!久しぶりだな。」
「お久しぶりですね。室長。現在はここの校長に就任しまして、階級も少将になりました。」
「ずいぶん出世したな~。それと俺はもう室長じゃないぞ。」
「ええ、お陰様で。」
“室長”のくだり、スルーかい!
という心の中の突っ込みは埠頭から海へ不法投棄し、ヒネク少将に続いて海軍兵学校の校舎へ入った。
ちょうど、校内では授業中だった。
教室内は、全く静かでなかった。授業態度が悪いのではない。授業が少し進むたびに、すぐに生徒が質問するのだ。
「この中で優秀なものは、一度現場を経験した後再びここに戻って士官教育を受けて少尉になります。まぁ、受けなくても尉官以上になれますがね。」
「ほぉ~。」
中将だけど、海軍兵学校どころか軍関係の学校すら出てないからな~。俺。
校長室につくと、女性将校が待っていた。
「お帰りなさい、校長。お客様ですか?」
「ああ、コーヒーを頼む。」
「はい、わかりました。」
・・・え?ちょっと待って。これって・・・
「ヒネク少将、さっきのは?」
「副官のロベルタ・セルベト大尉ですが・・・」
なぜだ!我が海軍の人員不足も少しずつ解消し、副官を付ける余裕ができたというのに中将である俺に副官がつかないのはなぜなんだ!
帰ったら人事部に怒鳴りこみに行ってやる!ぜってーに行ってやる!
という心の叫びは出されたコーヒーと一緒に飲み込んだ。
「それで、いったいどういうわけでこちらに・・・」
ヒネク少将が訊ねた。
「いや、ほぼ暇つぶしに来ただけなんだがな。まぁ、若い兵がどんなか見ておきたかったんだよ。
そういえばヒネク少将。質問なんだが。」
「なんでしょう?」
「最近海軍に女性が多く入っているって本当か?」
「ええ、まぁ。多いですね。いや、“多かった”というべきですね。」
「“多かった”?」
「ええ、一時期マレナ中佐のおかげで新規入隊者の男女比が2:8になりまして。ですが海軍に女性が多いことを知った男性がその次には多くなり、結局男女比は4:6くらいまで戻りました。
ですが、入隊希望者はその時を境にそれまでの2倍近くに増えてます。」
「すげぇな・・・」
「我々は“マレナ効果”なんて呼んでますがね。」
マレナ効果、恐るべし。
え~、ここ最近やっと完成した菊崎市(旧名称 海軍都市)
完成とは言ってもこれからたびたび登場します。そのたびに少しずつ発展する予定です。
そこまでこの作品が続けばの話ですが・・・。




