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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
謹慎編
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謹慎編-3

遅くなって申し訳ありません。

学園祭も終わり、その影響でたまりまくっていた課題も終わりました。それでやっと更新できました。

待ってくださっていた皆様、ありがとうございます。

13年7月10日


日本民主主義国

菊崎市(旧名称 海軍都市)

海軍総司令部 5番埠頭


赤嶺岬の陰から、山のような灰色の物体がゆっくりと出てきた。


「本物は初めて見たな・・・



戦艦ってのは。」



斎間大将から渡された書類の中にはもちろん“西方派遣艦隊”に配属された艦の一覧もあった。

その書類に“戦艦”の文字を見た時は目を疑ったが、本当に作ってしまったらしい。


かつて、前の世界の広島県呉市にある博物館で戦艦大和の模型を見たことがあったが、模型ですら漁船並の大きさがあった。というか造船所で“建造”されたものだったらしい。


戦艦大和ほど大きくはないだろうが、それでも目の前に戦艦がいることには大いに驚いた。それも、2隻も。



この戦艦2隻はその大きな船体をタグボートに任せ、ゆっくりと5番埠頭に接岸した。


比較的上部構造物は整った形をしている。というのも日本海軍の金剛型戦艦などは何度も何度も上部構造物を作り足して言ったので、ごつごつとした感じになってしまったのだ。

一方でこの戦艦は“新造”。つまり、最初から整った形で作ることができる。そのためか、どこか大和型戦艦に似た感じがする。


「ようこそ!戦艦“瀬戸”へ!」

タラップを上ると、見慣れた人物の姿があった。

「ヘルマー中佐!?」

「今は昇格して、大佐です。」

「え!?おま、アドリミアで刺されたんじゃ・・・」

「あれから半年近く経ってますよ。幸い大したケガではありませんでしたし、この戦艦には大きな医務室もついてますし大丈夫ですよ。」

「それってまだ全快ってことじゃないって言う意味だよな。」

ヘルマー大佐はさりげなく目をそらした。

「いや~、その~、同期に人事担当がいまして・・・。そいつが“お前残念だな~。ケガで入院しなけりゃ間違いなく新造戦艦艦長決定だったのに”なんて言うものですから・・・」

それが理由で無茶してきたのかい!

「・・・あっそう。」

正直呆れて感想がこれだけである。

「私自身バカだってわかっていますけどね。一度こんな大きな艦に乗ってみたかったんです。建造中だっていう噂はありましたから。」

「噂あったのか?俺はさっぱり知らなかったぞ。」

「同期の桜です。」

「俺、同期もクソもないからなぁ・・・」


よくよく考えてみれば、独学軍事学で中将なんてやっていていいのだろうか?すごく今さらだけど。


そこへ、小型のディーゼル機関車が貨車を押して5番埠頭へ入ってきた。

「えっ!?埠頭に線路を引いたのですか?」

ヘルマー大佐が驚く。

「このほうが物資積み込みが楽でいいだろ?海軍総司令部内の建物配置とかは俺もかかわったからな。海軍基地内に線路引き込んで貨物駅も設けた。貨物列車で運ばれてきた物資はそのまま倉庫へ入れられるか、こうやって埠頭まで貨車ごとやってきて軍艦に積み込むってわけさ。」

「なるほど。考えてありますね~」

ヘルマー大佐は感心しているが、何のことは無い。前の世界では港に線路が引き込まれているのはよくある光景であった。軍基地内なので、鉄道職員に見える運転士たちも実は海兵である。ちなみに、あえて言うと俺の趣味は関係ない。断じてない。必要だからこうなったのだ。


「それにしても、まだまだ空き地ですね~」

戦艦“瀬戸”の艦橋に上ったときにヘルマー大佐が発した言葉である。

菊崎市のことだ。

菊崎市はやっと基礎的な工事、例えば道路や上下水道の工事が終わったところだ。だが、まだ住民は多くなく、現在住んでいる住民の多くが海軍とかかわりを持っている。例えば海軍総司令部造船所の軍属作業員、海兵の家族、それをターゲットにした商店くらいだ。

よって日本民主主義国は再び国民を募集し始め、西の国境に在ったスラム街はあっという間にもぬけの殻になった。マレナ少佐によると、かつて西のスラム街に住んでいた人々は菊崎市工事のころに正式に“日本民主主義国国民”となり、工事終了後は菊崎市の公務員となっているものが多いという。

根本的に“社会保障制度”と言うものが存在していないこの世界では、日本民主主義国の社会保障制度(健康保険や教育制度)は破格の扱いに見えるらしい。前の世界の日本と比べれば見劣りするもいいとこの代物だが。


「菊崎市もこれからだよ。すでに国土開発省と斎間大将は新しい海沿いの都市を計画中みたいだしね。」

「えっ!?完成したばかりだっていうのに・・・」

「町を作るのにはかなり時間がかかるんだよ。本来ならこの菊崎市も10年くらいかけてゆっくりやりたかったくらいだ。」

「そうなんですか・・・。いや、そもそも計画的に町を作るという発想があまりなかったもので・・・。」

「へっ?それはどゆこと?」

「この国は異常なまでに世界をさきがけています。普通“町”や“都市”と言うのは、自然発生した村が偶然大きくなってできるものです。計画的に作るにしても、貴族や国王でもない限りそんな計画は実行できませんし、そもそもこんなに考えて建物を配置したりしません。」

なるほど。そもそも“都市計画学”や“交通工学”が存在しないのであろう。

「なりほど。納得。

ヘルマー大佐、今度我が国の最先端の学問を学んでみないか?今、海軍を含め国を挙げて“高度教育”を支援している。現役海軍士官が行っても問題ないし、なんなら俺が推薦状なりなんなり書いてやる。」


“高度教育”なんて大げさな名前がついているが、実際は高校や大学のことである。義務教育の中学までは通う子供が多いのだが(義務だし)、その後の進学率が低いのは文部省を通り越して政府の悩みの種となっていた。

そのため政府は年齢制限なしで“高度教育補助金”を設定したのだ。そのため、いつ終わるかは不明だが、誰でも試験に合格したら高校や大学に普通よりも安く通えるわけである。ちなみにこの国では“夜間学校”も多くある。というのも移住したばかりの者が(失礼な言い方をすれば)この国で十分にやっていけるだけの基礎的知識が無いからだ。そのため、夜間学校から仕事をしながら高校や大学に通う人は多い。むしろ、大学生の大半は30歳以上である。


「いえ、うれしいですがお断りします。

見ての通り、学問より船に乗っているほうが私にはお似合いですから。


ですが、一つ贅沢を言わせていただければその権利、他の人物に譲りたく思います。」


ぉお?



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