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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
アドリミア王国内乱編
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アドリミア王国内乱編-19

ブ・ブー


日本民主主義国国防空軍10式爆撃機21型の機内にブザーが鳴り響いた。

それと同時に後部ハッチが開き、兵たちが機内天井についている棒にフックをかけて立ち上がる。後部ハッチ手前には信号が取り付けられている。これはハッチが閉まっていれば“赤”ハッチが開けば“黄色”、そして降下良しになったら“青”になる。


そう、彼らは空軍の落下傘部隊。“第1空挺団”。空挺団が陸軍所属の国も多いが、ヘリコプターのないこの世界、陸軍は航空隊を一切持っておらず運用が困難であろうということから我が国では空軍所属になった。


ブーーーーー

再びブザーが鳴り、信号が青になる。

「よし!いけ!行け!いけぇーーー!!!」

隊長のコルネリウス・レクラム中佐は機内で大声で叫んだ。


「う、うぉりゃああああ!」

最初の兵が覚悟を決めて飛び出したのを皮切りに、後ろの兵がそれに隙間なく続いた。

最後にレクラム中佐が飛び出し、落下傘を開いた。



「それで、空軍さんの落下傘部隊とアドリミア王国空軍の飛龍強行着陸による王宮強襲によって首都陥落。終戦ですか。なんかあっけないというか、実感がないというか・・・」

相変わらず大使館ではなく重巡“仙崎”に入り浸っているエルネスト少佐が言った。

「戦争なんてそんなもんだよ。今頃陸軍は内側から開けられた城門から首都シャウテンを行進中かな?

だけど、そうやって陸軍が行進できるのも国防海軍われわれのおかげ。何事においてもそうだけど、目立つのはほんの一部なんだよ。」

そう言って露天艦橋でのんびりしていると、エルネスト少佐が言った。

「あ、そういえばリースベト第1皇女から手紙が届いている、という用事で来たことを忘れていました。」

「オイオイ。終戦で気が抜けるのもわかるけど、しっかりしてくれよ。油断した時が一番危険なんだから。」

「すいません。」


とにもかくにも、俺はエルネスト少佐が届けた手紙の封を開けた。それにしても、あの陸戦大好きインテリ、エルネスト少佐もポカすることがあったんだな~、とふとした感想を持つ。


手紙の内容を見て、俺はおもわず「うわ、めんど!」と言ってしまった。

「どうしました?谷岡中将。」

そういってエルネスト少佐が手紙を覗き込む。

「戦勝パーティーのお誘いだとさ。海軍にもぜひとも出て欲しいとのことだ。エルネスト少佐、代わりに出ておいてくれ。」

「えっ!?私がですか!?」

「駐在武官だろう?」

「そう言われましても・・・。正直この国の作法なんてさっぱり知りませんよ!」

「だよなぁ・・・。それは俺も同じ。それにこれから撤収して艦艇をドックに入れないと。いい加減整備しないといかん。こんな数一気に入れるわけもないから、早く始めないと・・・。」

エルネスト少佐が、“やっぱり私ですか?”みたいな嫌そうな顔をしている。

「なぁエルネスト少佐。

1.このアドリミア派遣軍に参加した人物

2.アドリミア語を話せ、アドリミア又は礼儀作法に詳しい人物

3.それで海軍所属。出来れば将校。


この条件に当てはまるやつはいないか?」

「そうですね・・・あ!」



数日後、フィアンカに第1海軍陸戦師団1個大隊、通称“リサ・バスケス隊”が帰還した。

「諸君!ご苦労だった!本当に感謝する!

疲れているだろうから長ったらしい話は無しだ!今夜はごちそうを用意しておいた。存分に休んでくれ!」

俺は短く訓示を済ませると、“リサ・バスケス隊”を輸送艦“大隅”に乗せはじめた。さっきの言葉通り、艦内にはごちそうを用意しておいた。彼らも喜んでくれるだろう。

「リサ大尉は今夜、重巡“仙崎”の司令官室へ出頭してくれ。」

俺は小声でリサ大尉にそう言った。



「ええー!私ですか!?」

リサ大尉が大声で叫んだ。

「たしか、リサ大尉はアドリミアの出身だったよね?」

エルネスト少佐が質問する。

「ええ、確かに小さいころはアドリミアでしたが・・・それも生まれてから6歳までの話で・・・」


エルネスト少佐は海軍都市視察護衛、というかドラゴン退治のときにこの事を知っていたらしい。何でも自分の隊全員分の履歴書に目を通したとか。半端ねぇな・・・。


「パーティーに出た経験は?」

「いえ。ですがパーティーに出るというか、一時期仕事でパーティーを行う貴族の応援スタッフはやったことがあります。」


つまり、アドリミアのパーティーを知っている。つまり、少なくともある程度の礼儀は知っているだろう。


よし!


「リサ・バスケス大尉。本日付をもって在アドリミア大使館駐在武官エルネスト少佐付補佐官に任命する。」

「ええ!」

声を上げて驚いたのはリサ大尉。だが、エルネスト少佐も驚いた表情をしている。


「た、谷岡中将・・・。私も出るのですか・・・?」

「さすがに駐在武官だからね~。補佐にリサ大尉つけたからさ。」


エルネスト少佐は固まっていた。



あっけない終わりでしたね。どうにかして谷岡中将に出て欲しかったんですけど、海軍ですからね。無理でした。

だけど戦争ってそんなもんだと思うんです。事件だってそうかもしれませんが、報道される、目立つのはほんの一部。目立たない部分の方が良くも悪くも多いような気がします。

以上、作者の勝手な価値観でした。

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