アドリミア王国内乱編-18
更新遅くなり申し訳ありません。
しばらく遅いままになると思われます。
事は、1時間ほど前にさかのぼる。
あらかじめ逮捕しておいた被疑者をリースベト第1皇女直々に取り調べてもらい、“日本民主主義国軍将校襲撃事件”が解決した後。
在アドリミア王国日本民主主義国大使館ではついでにと言うことで、軍事作戦会議が行われた。
「ご覧のように我が軍はすでに首都シャウテンの30km手前まで来ております。来週にも首都シャウテン制圧作戦を開始する予定です。」
鯵川大将は地図を見ながら説明した。
「ちなみに、どうやって制圧するのだ?」
リースベト第1皇女が訊ねた。
「すでに敵は籠城戦に入っています。城壁都市であるシャウテンは東西南北すべての門を閉じ、我々を入れないようにしているようです。ですが、我々にとってこの城壁を破壊することはとてもたやすいことです。
具体的には、この高台に迫撃砲を用意して・・・」
「な・・・ならん!」
リースベト第1皇女の大声にその場にいた全員がリースベト第1皇女を見た。
「城門の破壊はならん!シャウテンは城壁近くまで民家が密集しておるのだ!そんなことをすれば一般市民にも死傷者が出る!」
その時になってやっと鯵川大将は失敗に気づいた。
日本民主主義国からすれば、アドリミア王国アルトゥル第1皇子陣営は“敵”であり、その首都シャウテンは“敵の本拠地”でしかない。確かに一般市民の被害は避けたいところだが、非道なことを言えば“ある程度は仕方ない”でかたずけてしまうのも一つの手段なのだ。
現に今までもどうにかして一般市民の被害は最小限に抑えようとしてきたが、“0”なんていう理想論は戦場では通るはずもなく、いくらかは出してしまった。
だが、リースベト第1皇女からすれば、首都シャウテンにいる一般市民は将来自国民になる人々であり、その人々に大被害が出てそれがリースベト第1皇女が招き入れた軍隊によるものだとなると、首都シャウテンの人々が敵にまわることになりかねない。
「わかりました。この作戦は中止します。」
鯵川大将は作戦中止の命令を下すと、リースベト第1皇女を納得させる作戦を考えるべく参謀を集めた。
だが、良案は思い浮かばず、他人の意見も取り入れるついでに息抜き、ということで俺のところへやってきたわけだ。
「正直、“軍事”というものには詳しくないのだ。私は。」
鯵川大将の言葉に俺は驚きを隠せなかった。陸軍大将の発言とは全く思えなかったからだ。
「えっ!?それはどういう・・・」
「そのまんまの意味だよ。私がこの世界きたのはおよそ20年前だ。まだ陸軍もなく、警察もなく、大きな町もなかった。私は前の世界では空手教室の先生だったのだよ。
それで当時の自警団に空手を教えていたら、いつの間にか教官になっていた。そして自警団が警察になり、その後国防陸軍が発足した。私はその時に“徒手格闘戦の教官”として陸軍へスカウトされて、“教官”というだけでいきなり大佐になったんだ。
そこから昇格しただけだ。軍の運用なんてこの世界に来てからしか学んでいない。」
「それをいうなら、俺なんか元々“大学生”で軍事は趣味程度だったんですけど・・・」
「それでもうまくやっているじゃないか。私なんかごらんのとおりさ。ただ単に同じ方法で攻めるということしかできん。」
「そう卑下しないでください。軍は戦訓をふんで強くなるものです。かつてどこぞの軍隊は戦死者よりも餓死者を多く出した戦線を作ったこともあったんですから。
それを起こさないようにしているだけでも立派ですよ。」
「そうか・・・。すまないな。みっともないところを見せた。」
「いえいえ。俺も一時期いろいろと悩んだ時期がありましたし。」
「さて、それでどう思う?せめても私より軍事知識のありそうで、実戦経験のある君なら何か方法を思いつくのではないか?」
「う~ん。
ぱっと思いつくのは、どうにかしてシャウテン内部に侵攻、そこで戦闘をすることですね。」
「いや、だからそれは・・・」
「まぁ聞いてください。
これだとゲスな考えをするなら市民に死者が出ても“戦闘に巻き込まれた”と言うことになります。つまり、我々の責任は多くても50%になるわけです。まぁ、民意の操作を行えばもっと減りますが・・・。正直ゲスな戦法なので、これは最終案にしようと思います。」
「そうしてくれると助かる。」
「それで第2なんですけど、これも少し問題があります。ある意味大したことではないのですが・・・」
俺の第2案を聞いた鯵川大将は、「それで行こう」といって帰って行った。
13年2月28日。
在アドリミア大使館からエルネスト少佐が重巡“仙崎”にやってきた。
「先ほど空軍さんの飛行場をのぞいてきました。結構忙しそうにしてましたよ。」
「じゃあ、そろそろ決行か。」
「ええ、鯵川大将は前線指揮所にいるので詳しくはわかりませんが、恐らく。」
元々在アドリミア大使館にあるアドリミア王国派遣軍本部には、今は刺されて輸送艦“大隅”で療養中の灰色軍服少将が常に詰めて、鯵川大将は常に派遣軍本部にいるわけではなかった。前線指揮所と派遣軍本部を行ったり来たりしていたそうだ。
そうこうしていると飛行場から多くの航空機が飛び立って行った。
「大型航空機ですけど、まさかシャウテンを爆撃する気ではないですよね?谷岡中将。」
「んなわけあるかよ。そこまで国防軍はバカじゃない。
だがまぁ、あれが“王手”になるはずだ。」
途中でアドリミア空軍の飛龍とも合流した日本民主主義国国防空軍は、大編隊となって首都シャウテンを目指した。




