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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
アドリミア王国内乱編
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アドリミア王国内乱編-9

遅くなってすいません。

忙しくなったのと胃腸炎でくたばっていました。

「第2艦隊より入電。我これより正当防衛を行う。です。」

通信兵が報告に来た。

「通信兵、返電だ。攻撃してくる相手には容赦するな。だ。」

「了解!」

通信兵は艦橋から出て行った。


「始まりましたな。」

ヘルマー中佐が隣で言った。

「ああ。ペートルス中佐は最初の一発を甘んじて受けてくれたらしい。」


本当に面倒で危険なことをさせたと思った。だが、こうしなければならないのだ。


「さて、これで無事にフィアンカへ入港できればいいんだがな。」

俺はつぶやいた。


数時間後、通信兵が走ってきた。

「第2艦隊より入電です!」

息を切らして通信兵が俺に紙切れを渡す。

俺はそれを見て、驚いた。


「どうしました?」

ヘルマー中佐が俺の表情を見て訊ねた。

「第2艦隊から入電だ。木造戦艦8は排除した。」

「それは良かったですね。これで無事にフィアンカへ行けます。」

「ただ、駆逐艦2隻が轟沈した。」

ヘルマー中佐は目を見開いた。


戦えば互いに傷つく。そんなことはわかっている。

もしも一方が無傷で一方が壊滅的被害を受けたならば、それは戦闘では無く“虐殺”と言ったほうが正しいだろう。


だが、正直俺はどこか木造戦艦をなめていた部分があったらしい。死傷者の発生までは予想していたが、軍艦の沈没までは予想外だった。

おそらく予想以上の死人が出ただろう。ただ、俺には死人が出るたびにくよくよすることは許されていなかった。


「通信兵、第2艦隊に救出活動は念入りに行うように言っておけ。」

「ハッ!」

「艦隊の速力を上げるぞ。すぐに第2艦隊と合流する。全艦に伝達しろ!」

「了解!」

ヘルマー中佐は艦橋で指揮をし、信号兵は手旗信号をしに向かった。


12年12月9日。

第2艦隊と合流した。

第2艦隊旗艦、軽巡“伊予”からペートルス中佐が内火艇でこちらに来るのを見ていた。

「ひどいやられようですねぇ・・・」

ヘルマー中佐が軽巡“伊代”を見ながら言った。

「ああ、予想以上だ。一体何があったんだか・・・」


軽巡“伊代”は第1砲塔が無くなっており、さらに3本ある煙突のうち1本に大穴があいていた。

付近には他にも傷ついた軍艦が多くいた。中には近くの無人島に座礁しているものもある。

「第2艦隊司令、ペートルス中佐が参りました!」

「ん、今行く。」

俺を呼びに来た海兵にそう答えて、俺は会議室へ向かった。



「室長、申し訳ないです。」

焼け焦げた跡のある海軍制服を着たペートルス中佐は、まず頭を下げた。いつもとはまったく様子が違う。恐らく初めて戦場を経験して、いろいろあったのだろう。

「ペートルス中佐。とにかく報告してくれ。それで君に過ちが無いのなら謝罪の必要はない。」

「分かりました。


敵は、木造戦艦8隻でした。私は単縦列(つまりは一列)で艦隊を突入させ、砲雷撃戦を挑みました。

4隻はすぐに片付きました。向こうも砲撃してきましたが、大した被害にはなりませんでした。

ですがそれで油断しました。互いの艦隊が近づいていることに気づかなかったのです。

いや、気づいていました。ですが、舐めていました。大丈夫だろうと。


ところが、途中から砲撃力が強くなったんです。恐らく火薬の量を増やしたのでしょう。向こうが砲撃すると向こうの大砲が爆発するところもみました。」


木造戦艦に積んである大砲は良くも悪くも旧式だ。

その分仕組みはいたって簡単で、大砲に火薬を詰め、鉄の弾を入れて火をつける。火薬が爆発して、鉄の弾を押し出す。つまり、火薬量は調節し放題なのだ。

もちろん、規定以上入れると暴発の恐れもある。どうやら相手は勝てないことを悟り、めいいっぱいまで火薬量を増やしたのだろう。

その結果、当たり所の悪かった駆逐艦2隻は轟沈してしまった。

駆逐艦とて軍艦だ。だが、その装甲はたかが知れているのだ。


「ありがとう、ペートルス中佐。あとで詳しい報告書をくれ。すぐに艦隊を立て直せ。負傷兵は“大隅”に運べ。」

「了解です。」

俺は会議室を後にした。


「大丈夫ですか?ペートルス中佐。あんなにテンションの低いペートルス中佐は初めて見ましたよ。」

ヘルマー中佐が会議室を出ていくペートルス中佐を見ながら言った。

「ん?そんなに心配なら第2艦隊司令をペートルス中佐に代わりにやるか?」

「いえ、遠慮します。」

相変わらずヘルマー中佐は即答で断った。

「まぁ、指揮官が一度は受けなければならないショックってやつだよ。あれに耐えなければ“司令”なんてやってられない。」

俺はそう言って廊下を歩いていくペートルス中佐の背中を見送った。


12年12月12日

通信兵が艦橋に走りこんできた。いつも思うが、通信兵元気だな~。いつも走っているように思うぞ。

「司令!斎間大将からです!」

そこには待ちに待った言葉が書かれていた。


“ハヘイケッテイ”

「よし!これより本艦隊は“連合艦隊”と称す!連合艦隊司令は艦隊総司令の俺が務める!通信兵、これを打電しろ。」

「ハッ!」

通信兵は俺から渡された大量のメモ用紙をもって通信室へ走って行った。

ふと気づくと、ヘルマー中佐が俺を見ている。

「どうした?ヘルマー中佐。」

「いえ、いまさら連合艦隊にしなくとも、すでにこの艦隊の指揮はあなたが取っていたような気が・・・」

「・・・言うな。」



もう、フィアンカは目の前だった。


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