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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
アドリミア王国内乱編
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アドリミア王国内乱編-8

そう言えば前話登場の木嶋総理、初期からの登場なのに出番少ないですよね。

「本国より返電!斎間大将からです。」

通信兵が俺にメモ用紙を渡す。

“タイショヨウコウAニモトヅキ、コウドウセヨ”

対処要綱Aに基づき、行動せよ。


もともと、アドリミア王国外交使節団派遣については危険が伴うとして、いくつかの対処要綱が設定されていた。

対処要綱Aが、軍に対する“攻撃”があった場合。

相手が間違いなくアドリミア王国と判明した場合は反撃を許可されていた。“大隅”への襲撃は残念ながら“間違いなくアドリミア王国の攻撃”とわかったわけではなかったので、海龍艦への攻撃は出来なかった。それこそアドリミア王国(第1皇子)の攻撃“かもしれない”と判明したのはフィアンカに寄港した時である。

対処要綱Bが、外交官が暗殺された場合。

出来るならば外交官の遺体、遺品を回収し、即時帰国となっていた。一旦引いて準備をして、アドリミア王国への戦争と言う運びにする気だったようだ。

越智さん、かわいそうに・・・。


ちなみにこれ以外にも普段から“自衛権の行使”は許可されているし、他にもいくつかの“条件”に当てはまれば軍は武力行使ができる。


だがどちらの場合も“ただし、帰国途中に敵勢力を確認した場合は思いっきり攻撃してよし”と言われていた。どちらも国交がうまく結べなかったことを想定しているので、“ついでに軍事力を思いっきり見せつけてこい”ということのようだ。それで相手が驚いて交渉の場を設けてくれればこちらとしてはうれしいことである。

ただし、“なるべく一般市民を巻き込まないように”と厳命もされていた。もちろん人道的な理由からだ。だから、“対地砲撃は絶対に禁止”と外務省から言われている。


それはともかく・・・


「ヘルマー中佐、水上偵察機は確かに海龍艦に攻撃されたんだな?」

「はい。間違いなく。先ほど帰還したので確認してきました。矢が何本か突き刺さってましたね。」

「矢ぁ!?」

「ええ、風系統の魔法と矢を組み合わせたのでしょう。または矢の威力を増した魔法道具、魔法武器かもしれません。」

「もう魔法といえば何でもありだな。」

「そうでもありませんよ。こんなことをできる魔法使いがうじゃうじゃいるわけありませんし、こんなことをできる魔法道具が安く手に入るわけがないですので。」

「そういうものなのか・・・」

なんか腑におちない!


それよりも、もう一転重要な部分の確認を。

「それで、間違いなくアドリミア王国海軍の海龍艦だったんだな?」

「はい。おそらく。今偵察で撮影した写真を現像しています。搭乗員はアドリミア王国の国旗が掲げてあった、と言っていますし・・・。」

「わかった。現像を急がせろ。搭乗員の言葉を疑うわけじゃないが、確かな証拠が欲しい。それと、攻撃を受けた水偵の写真も撮っておいてくれ。」

「了解。」


これで“間違いなくアドリミア王国軍に攻撃された”となる。


「さて、思いっきりやりますか。」

通信兵に艦橋の受話器を第2艦隊のペートルス中佐を呼びだすように言った。

“はい、第2艦隊旗艦軽巡伊予。”

軽巡“伊予”は酒田型軽巡洋艦の3番艦だ。先日帰港した時に就役していたので、第2艦隊旗艦として編入した。

「ペートルス中佐を出してくれ。」

少しして、ペートルス中佐が出た。

“はい。ペートルスです。室長。”

「だから室長やめ・・・もういいや。ペートルス中佐。一旦護衛の任を離れ、前方に確認されたアドリミア王国海軍艦隊、木造戦艦8に対する攻撃命令を下す。一応対処要綱Aで動くが、できれば自衛権行使だとなおの事よろしい。」

“わかりました。最初の一発は甘んじて受けてきます。”

「すまんな、苦労を掛ける。だが、どうしても相手の敵意を確認したいんだ。」

“わかってます。室長が何度も斎間大将に喰ってかかっているのもみんな知ってますし。”

ん?みんな?

「おいちょっと待て。みんなって何だ?」

“海軍兵で室長が政治的な部分で斎間大将と喧々諤々(けんけんがくがく)やっていたのはほとんどの海兵が知ってますよ。だって室長、声がでかいですし。”

・・・あ~・・・。今度から気を付けよう・・・。


「まぁ、頼んだぞ。」

“わっかりやした!任してください!室長!”

すでに指摘するのも諦め、俺は受話器を置いた。


「さてと、海龍艦はまだ距離があるから別にいいだろう。どちらにしろ、手勢も足りないしな。」

俺はそう言うと、露天艦橋に出た。

第2艦隊所属艦だけが、速力を上げて前に出ていく。

ある駆逐艦を見た時、ふとしたことに気づいた。

「見張り員、あの駆逐艦は?」

「ハッ、第2艦隊第3駆逐隊の“ながれ”です!」

俺は、帽子を取った。

そして、高く掲げて振る。

そう、帽振れだ。

追い越していく駆逐艦が重巡“仙崎”に対して帽振れをしていたのだ。


“非番の者は外に出ろ。第2艦隊に対して帽振れ!”

ヘルマー中佐の声で艦内放送が流れた。


よくよく考えてみると、帽振れしたのは初めてかもしれないな。



俺は帽振れで、


第2艦隊を一足先に戦場へ送り出した。



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